泊まったる!
先週お休みさせていただきました。
ご迷惑おかけしました。
かわりに、二話連続更新させていただきます。
希望としばらく談笑したあと、あたしは再び自分の宿泊先を決定するために話を振った。
「純香ちゃんちは、あたし泊まれるかな?」
「は?」
めっちゃ嫌そうな顔をされた。そりゃあそうだ。
なぜって、あたしと純香ちゃんは初対面。いくら友だちの友だちだからって、初対面の人を家に泊めるなんてしたくないだろう。
それに、家のことだってある。ご両親が許してくれるとは限らないし。でも、帰れないしなあ……。
空はもう暗くなってきている。今から帰るとどれくらいかかるだろう。
お母さんはきっと心配しているだろうけど、でも、ここであっさり認めてはいそうですかって帰るわけにはいかないわけなのだよ。
「ありえないでしょ、無理」
純香ちゃんははっきりとそう言った。もしやこの子、毒舌キャラってやつ?
「あのね、暮羽」
「う、うん」
希望がガチな顔でそう言ってきたから、あたしは心構えして返事をした。怖い。何を言われるんだろう。
しかし、心配するあたしに希望はありがたいことを言った。
「純香ちゃんの家に泊めてあげる」
「ありがと……え? 純香ちゃん?」
純香ちゃんの方をふと見ると、険しい顔をした純香ちゃん(まさに獲物を狙うマンモスのようだ)が立っていた。そ、そんなに睨まなくってもいいでしょうが……。
「なんでいらないこと言うわけ!?」
「だ、だって、暮羽を今から帰すなんて、そんな惨いことできないよ!」
「だからって、なんで私の家なわけ!?」
「だって、あたしの家は純香ちゃんの家だもん……」
二人の口論。あれ? と、あたしは思った。
希望の家は純香ちゃんの家? ああ、そうか。希望が一人暮らしなんて、無理だもんね。泊まらせてもらってるのか……って、んん?
「ちょっと待って。ということは、あたしが仮に純香ちゃんの家に泊まるとしたら、希望もいるわけ?」
「うん、そうだけど」
希望はさらっとうなずいた。それを先に言ってくれればいいのに。
「なら、泊まりたい。ううん、泊まる! 泊まらせて純香ちゃん!」
「ええ!?」
純香ちゃん、すごい迷惑そう。だけどここで引き下がるわけにはいかない! ここで断られたら、お先真っ暗ってやつだよ!
だって、純香ちゃんと希望の家でしょ? つまり、三人でお泊り会! 楽しそう!
あたし、お泊り会ってやつやってみたかったんだよね。前までは周りには異常な友達しかいなかったからさ。希望以外。
で、希望もしょっちゅう引越しやら転勤やらで忙しそうだったし。だから、泊まらせてもらうことはなかったね。あたしも、お母さんがダメっていうから泊めさせてあげることもなかったし。
「……でも、アイツがなあ……」
純香ちゃんは、眉を寄せて考え込んでいた。アイツって、誰のことだろう?
「うーん、まあ、希望もいるしいいかな。私は嫌だけど、アイツが許せば仕方ないか……。そうじゃないと、希望に言い訳できないしな」
純香ちゃんは独り言なのだろうか、ぶつぶつと小声で言ってからあたしに向き直った。
「いいよ、おかーさんが許せば泊めてあげる」
「あ、ありがとう……」
ところで純香ちゃん、言葉と表情があってないよ? だからさあ……。
――――すっごい嫌そうな顔するの、やめてほしいんですけど。




