あんだって!?
フードコートに到着したあたしたち。あたしの予想通り、そこはかなり人が多くて、ごった返していた。席が見つけられるかと不安だったけど、運良く立ち去る人がいたから、そこの席をとった。
「アイス何味にするー?」
万実がさっきとは大違いで笑顔で尋ねてくる。この調子の良さ、なんかひっかかるんだけどなあ……。でも、他の二人は全然気にしてないみたいだし、変にあたしがつっこむのもよくないよね……。
そんな感じで悩んでいると、凛音があたしにアイスのことを訊いてきた。
「暮羽は? アイス、何味がいい?」
「え、っと、みんなは何にするんだっけ?」
あたしは人に合わせたいタイプだ。とりあえずみんなの希望を訊いてみる。そしたら、万実はバニラ、凛音はストロベリー、唯愛はチョコというバラバラ感ハンパない結果になってしまった。これは……どうしよう。誰に合わせる? それとも合わせない? うーん、迷う。
とりあえず並ばなくちゃいけないから、凛音と長い列の最後尾に並ぶ。その間も、おいしそうなたくさんの種類のアイスを見つめて考える。どれにしようかな……。
結局迷った末に、チョコチップストロベリーバニラという全部を混ぜたようなやつを頼んだ。よくこんな都合の良いフレーバーがあったな……とか感心しながら、アイスを店員から受け取って席に戻る。そこでは唯愛が万実にスマホで写真を見せていた。写真見せるの好きだなあ……。てか、友だちのスマホの写真見て面白い? あたしにはあんまりわからないな、その気持ち。
「唯愛、万実! ほら、アイス。とけちゃうよ? はいはい、スマホ置いて~」
凛音はいつものぽさっとしてるイメージとは反対に、スマホを覗き込んでいる二人に指示を出す。唯愛は「オッケー」とすぐにスマホの電源を落として、おしゃれな黒いエナメルのバッグにしまったんだけど、万実は不満そうに凛音を見上げていた。凛音本人は気付いていないみたいだったけど。でも、なんで万実はあんなことするんだろう……?
少し暗い雰囲気でもくもくとアイスを食べる。あ、このチョコチップストロベリーバニラ、おいしい。結構お気に入りの味かも。これはチョコチップと冷凍いちごが入ったバニラアイス。ところどころ、チョコソースとかストロベリーソースっていうのかな? とかいうのが入っていて、おいしい。
しばらくみんな無言でアイスを頬張っていると、どこからか携帯の着信音が聞こえてきた。万実がごそごそとリュックをあさる。そして彼女は何の抵抗もなく応答すると、会話を始めた。この行動に、あたしは顔をしかめた。なんで友達と一緒にいるときに、何も言わずに電話に出ちゃうかなあ……? あたしだったら「ちょっとごめん」とかなんか一言くらい言うと思うんだけど。
それは凛音も同じだったみたいで、嫌そうな顔をしている。あれ……? もしかして、これは、グループ分裂の危機!?
だってだって、あたしと(多分)凛音は万実を疎ましく思ってて、唯愛はみんなに平等。そしたら、ぼっちになっちゃう万実に唯愛がついて、あたしと凛音がコンビを組む……? ひー、女子って本当怖いっ! そして、こういうことを考えちゃうあたしも怖い!!
しばらくすると、万実は電話をしたままふらふらとどこかへ行ってしまった。聞かれたくない内容だったのかもしれない。でも、何も言わずに行くとか、ちょっと常識がないなって思った。電話の相手に悪いって思ってるのかもしれないけど、ジェスチャーとかするでしょ? ごめんって手を合わせたりとか。うーん、そういうとこがダメなんだなぁ。
万実がいなくなると、凛音がはあ~っとため息をついた。
「あーもう、万実ウザーい。何あの態度。ねえ、暮羽?」
そこであたしに振るかっ!? 驚いて一瞬声が出なかったけど、すぐに持ち直してこくこくとうなずいた。この行動が正しかったのかは分からないけど、正直な意見を述べたんだからいいと思う。ただ、それに対して唯愛がどう反応するかによるんだけどね……。
「ね、ね、唯愛は?」
凛音は好奇心いっぱいで唯愛にまで同じ内容を訊く。そ、それはまずいって凛音! つーか、ぶりっ子キャラはどうした!? なんで凛音、こんなアホキャラみたいなんになってんの!?
「私、は……」
唯愛は、うーんと首を傾げながら考え込む。ううぅ、凛音のバカ。でも、唯愛が考え込むっていうことは、もしかして、みんな平等じゃなくなってきたってこと……? それとも、万実がいないからとりあえず合わせて言おうとしてるだけとか?
「――――ちょっとやだったかな」
「あんだって!?」
思わずあたし、叫んだ。慌てて右手で口を塞いで、きょろきょろと周りを見る。ちょっぴり視線が痛い……。無念。あたし、かなり悲しいよ。イタイ人だよ……。
でもでも、唯愛が嫌だって言ったんだよ? なんか、唯愛って、仲立ちをするタイプだと思ってたんだけどなあ……。あたしをいじめてた時、っていうか、あたしが学校に行ったときはすっごい怖かったんだけど……。なんか、何で生きてるの? 的なことを万実と一緒に言われたような気がするし。そう考えると、よくこの子たち、あたしと一緒にいられるなって思う。気まずくないのかな?
――――つーかっ!
「唯愛っ、今のほんと!?」
「う、うん……嘘は、ついてないけど……」
こ、こ、これはっ……。大事件ですううぅ~!
 




