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教室 ~いじめ~  作者: 青木ユイ
暮羽編
83/109

万実(激怒)

先週……さぼってすみません

一応毎週火曜日に投稿予定です

純香ちゃんの方は不定期更新ですので、暮羽のを見たときにでも覗いてあげてください

暮羽の方は終わりそうですが、純香ちゃんの方の終わり方が分からなくて困ってます……頑張ります

「――――どういうこと?」


 あたしと凛音と唯愛の三人は、万実の冷たい目で睨まれ見下ろされていた。

 あれは数分前、叶さんが怖くてたまらなくなったあたしが凛音と唯愛に相談しようとしていた。だけど、そこに万実がいなかったことに気がつかなかったんだ。

 ひそひそとささやくあたしの声の中から「絶対に秘密だよ」というワードを聞き、女子特有の被害妄想によって自分がハブられたと思い込んだ万実は、今怒りの沸点を超えてしまったといったところだ。ああ、女子ってなんでこんなに面倒くさい性格をした子ばっかりなんだろう。まあ、あたしも人のことは言えないんだけどさ。


「だから誤解だって。万実がトイレに行ってたことなんて知らなかったし、別にあんたに隠そうとなんかしてなかったよ。ただ、その……あっ、あたしたちの味方じゃない人に安易に情報を漏らしてほしくなかったから、秘密だよって言っただけ。勝手に被害妄想しないでよ」


 あたしは万実を見上げてそう言った。最後の方、ちょっと言い過ぎたかな。あたしは自分の言ったことを後悔しながらも、少しだけ彼女にたいして怒りを覚えた。勝手に自分がかわいそうな子だと思い込んで悲劇のヒロインぶっているのにはイライラする。実際はそんなのじゃないのかもしれないけれど、少なくともあたしから見れば悲劇のヒロインに見えてくる。それも、ぶってる・・・・方で。


「なによ、それ。私が悪いって言うの!? 悲劇のヒロインぶってるのはそっちの方でしょ! 勝手なこと言わないで!!」


 万実は声を荒げた。何事かとクラスメイトがあたしたちの方に視線を向けてくるけど、そういうのは気にしない。見られてるのは嫌だけど、これでもし万実がひどいことを言ったら、彼女は孤立する運命にあるんだもん。


 ――――その時、あたしははっとした。


 今、あたし、何考えてた……? 万実が孤立する? そんなこと考えるなんて、あたし、最低。いじめられてたくせに。いじめられる側のつらさ、あたしは知ってるはずなのに。

 あたしは今、万実がいじめられたらいいって思った……?

 一瞬にして、全身の鳥肌が一斉に立った。寒気がして、震えてくる。あたし、なんでこんなに性格悪いんだろう。友だちだよね? 万実は、あたしの友だちだよね?

 どうして、いじめられたかは分かってるのに。なのに、あたしじゃなくてみんなが悪いなんて思ってる。もともとあたしがしたことが悪かったから、あたしはいじめられた。だけど、あたしは今たしかに自分は悪くないって思った……。いじめた方が悪いって。

 いじめは、いじめられる方に理由があると思う。だから、あたしがいじめられたのはあたしの態度が悪かったから。それなら、万実はいじめられてもいいって。ううん、それは矛盾。あたしは悪くないって思ったんだ。あたしじゃなくて、万実が悪いって。

 つまり、あたしは悪くなくて、あたしをいじめたやつが悪い。だから、あたしは万実をいじめる。そういう考えを、一瞬でも持ってしまったんだ。


「万実、なんで怒るの? 万実はなにに怒ってるのよ。私たちはわざとじゃないって言ってるじゃない」


 唯愛は万実を睨み返してそう口にした。そう、あたしたちはわざとじゃなかった。でも、もしあたしが万実の立場だったら? もちろん、嫌だって思うだろう。自分の存在が忘れられてたんだから。


「分からないんだったらもういいよ!」


 万実は怒鳴った。顔を真っ赤にしてあたしたちを睨みつけると、教室を出て行こうとする。あたしは咄嗟に言った。


「……万実、ごめんね」


 万実は、その言葉に反応して立ち止まった。話を聞いてくれるってことだ。


「万実は、あたしたちがわざとじゃなかったってことは分かってるんだよね。万実が嫌だったのは、自分の存在を忘れられていたってことなんだよね。あたしたちが、万実がいなかったことに気がつかなかったのが嫌だったんだよね」


 きっとそうだって思った。万実は、あたしたち3人が話していたことには怒ってなかったはずだ。でも、やっぱりこそこそ話していたら嫌になる。そしたら、わざとじゃなくて万実がいないことに気がつかなかっただけだってあたしたちが言ったから、怒ったんだよね。

 たしかに、あたしも万実の気持ちはよく分かる。自分がいないことに気が付かれなかったら、嫌だ。だからきっと、万実は怒ってたんだって。


「……だったらなに?」


「ごめん」


 万実の言葉に、あたしはそう答える。彼女はあきれたようにため息をついた。


「ばーか」


 彼女は、静かに笑った。仲直り。後ろの二人も、きっと笑ったと思う。

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