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教室 ~いじめ~  作者: 青木ユイ
暮羽編
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あたしは生きる

 あたしは、学校に行くことにした。お母さんは心配そうだったけど「大丈夫だから」って言ったら「なら、頑張ってね」って笑ってくれた。お母さんが久しぶりに笑ったのを見て、嬉しかった。つらい顔ばかりさせてきたから。


「いってきます!」


 いってらっしゃい、とお母さんが手を振る。あたしは軽くスキップしながら学校に向かった。まだ少し怖い。立ち向かえるかどうかは分からない。それでも、このまま逃げるのは嫌なんだ。

 それに、死ぬよりも嫌なことが分かったからね。それは希望を失うこと。希望に嫌われること。それだけは嫌だから。

 だから、次会うときは笑顔でいたい。そして「頑張ったね」って言われたい。「あたしは頑張ったんだ」って胸を張って言いたい。だからあたしは逃げたくないんだ。


「おはよう!」


 シーン。冷たい視線が向けられる。


「まだいたの?」


 誰かがそう言った。声のする方を見てみる。そこにいたのは、前結構仲が良かった唯愛ゆあだった。まだいたのと言われても……。っていうか、あたしが自殺未遂をしたの聞いてないのかな?

 そんな疑問の回答はすぐに返ってきた。


「あんた、自殺しようとしてたんでしょ? そのまま死ねばよかったのにね! なんで生きてんの?」


「ほんとほんと! 何で死ななかったの? 運悪いねえ」


 唯愛と万実まみにくすくすと笑われる。こ、ここまで言うことなくない? 結構みんなひどいよ……。やばい、早くも挫折しそう。で、でもあたしはくじけないって決めたもん、頑張る。


「あんたたちに言われる筋合いはないけどね」


 初めて、言い返した。二人はぽかんとしていて、そのあと笑い出す。この人たちの笑いのツボがわかんない。


「何言ってんのこいつ! バカじゃない?」


「ほんっと。何言い返してドヤ顔してんだよ。ブスのくせに」


 そんなこと言われても、もう私は受け付けないようにした。こんな言葉聞かない。汚い言葉を吐く人は勝手にすればいい。でも、どんなに周りにそんな人がいっぱいいたとしても、私は絶対汚い言葉は使わない。あたしはこんな人たちにはならないから。

 でも、こんなにあたしが嫌いなら、何でみんな離れていかなかったんだろう?


「でも、こんなことになるんだったらもっと早くこいつから離れていたらよかったね、万実」


「ほんとほんと。びくびくしてたうちらがバカだったよ。凛音りんねが言ってくれてよかった」


「そ、そんなことないよ。ただ、みんなが暮羽にいじめられてるのが可哀想で……っ」


 凛音がそう言って目をうるうるさせた。今にも泣きそうだ。バカみたい、なんなのあの大根役者並みの演技。泣き真似下手すぎでしょ。ってか、あたしにいじめられてるってどういうこと!? あたし、いじめてないし!


「そんなの言いがかりだよ!」


 そう叫ぶと、凛音はヒステリックな声で泣き喚いた。


「ひどいよ、暮羽! 私たちずっと、暮羽の圧力に耐えてきていたんだよ? なのに、しらばっくれるなんて……!」


 言い終わると、凛音はまた泣き崩れてしまった。ああ、もうやってらんない。演技下手すぎて笑える。そのとき、教室の外からの視線を感じた。せ、先生!? さっきの見られてた?

 もしかしたら、あたしがいじめてたみたいに見られたかも……。


「お前たち」


 副担任の三原先生だ。どうしよう、先生に疑われたらかなりやばいよ!


「いじめのことは知ってるんだぞ。そして今、その現状を見た。言い逃れはできないんだぞ――――山岡、夕晴ゆうばる、浅井」


 あ、あたしじゃない……? ということは、先生は最初の唯愛たちの暴言も聞いていた?

 良かった。本当に良かった! あたし、頑張ったんだ! これでもういじめられないのかな?

 まあ、それは分からないとしても、主犯はいなくなる。もしかしたら、停学とかになるのかもしれないよね。やった! あたしは、勝ったんだ!

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