おはよう
退院したのは二日後だった。落ちた場所がたまたま茂みのところだったからか、ひどい怪我もなくすっかり元気になった。茂みのところに落ちるとか、よくあるパターンだよね。
でも、今は死ななくてよかったって思ってる。自分勝手かもしれないけれど、やっぱり希望に会いたい。今どこで何をしているのかが知りたい。希望のことだから、誰かの助けになってるのかな。
きっとそうだよね。なら、あたしが引き留めたり「こっちに来て」なんて言っちゃダメだ。今きっとあたしみたいに希望に助けられている人がいる。あたしは散々希望に助けて貰ったんだ。だから私は、希望の助けから卒業する。今まで本当にありがとう、希望――――。
本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。またいつか会えるなら、そのときは精一杯の笑顔で言おう。
「おかえり。ありがとう」
って、希望をぎゅーって抱きしめて。大好きだよって。ずっとずっと親友だから。
そんな大切な親友に、この言葉を送ります。
【未来はあなたが創り出す
だからあなたは笑っていて
つらくなったら無理しないで
あなたはあなたのままでいて
誰かに合わせなくったっていい
自分がいいと思った選択肢を選べばいい
自分が正解だと思ったものは
不正解も正解になるよ
どんなことにも絶対なんてない
だからできないことだってあるよね
でもあなたは不可能を可能にできる
あなたがいたから私はここにいるんだ
大丈夫だよ
あなたは可能性に満ちている
あなたはあなたのままでいい
そこで笑っていて
あなたがしてくれたこと返すから
あなたのことを助けるから
私があなたを守るから
あなたはそのままでいいんだ――――】
あたしはあたしのままでいい。
希望は希望のまままでいい。
希望を持って生きていこう。きっと未来は開けるよ。
誰かがそう言って笑ったんだ。さっきの言葉だって、その人が言ってくれたこと。
――――誰だったかなぁ、あたしの救世主は。
よく三人で遊んでたんだ。あの頃は楽しかったなぁ。五人のときもあったっけ。でも五人って、私と希望と、あと三人は誰――――?
だめもとで、希望の前の電話番号にかけてみた。
『もしもし』
「あっ、もしもし。あの、二篠と申しますが、希望ちゃんはいますか?」
『え? どなたですか? ノゾミって子は、うちにはいないんですけれども……』
「……あ、すみません、間違えました」
『あ、はい、分かりました』
だめだった。そうだよね、引っ越しちゃったんだもんね……。電話番号だって変わっているに決まってるはず。そう、あたしたちはもう会えないんだ、きっと。
それでもあたしは、昔誰かがくれた言葉に頼って生きてくよ。あたしはあたしのままでいいんだから。




