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教室 ~いじめ~  作者: 青木ユイ
暮羽編
72/109

あたしのことを思ってくれている人

 学校に行けばいじめ。

 行かなくても、部屋に閉じこもるだけ。

 楽しかったあの日々は、もう戻ってこない。


 全部、全部希望がいたからできた。

 希望がいなければ、あたしはただの石ころ。

 誰にも見向きもされずに、踏まれるだけの雑草。


 希望がいたらあたしはダイヤモンド。

 みんなを振り向かせる、魅惑の薔薇。


 この違いは何なの? どうしてなの?

 いつもなら、こんなこと考えない。

 あたしは綺麗な薔薇なのにね。

 どうして今は、雑草なんだろう?


 希望がいなければ何もできないなんて、あたしは希望がいても雑草だったってわけね。

 ただ、希望があたしのことを引き立ててくれていただけ。

 あたしは薔薇だって、思わせてくれただけ。

 でもそれは、幻想だ。空想で、想像。

 あたしが自分の都合の良いように考えていただけ。


 希望がいなくなれば、一気にこんなことになっちゃう。

 でも、希望がいなくなる前からあたしはいじめられていた。

 ってことは――――みんなは、希望が転校することを知っていた?

 何それ……そんなはずないに決まってるじゃない。

 希望はあたしのこと、好きだったんだから。

 希望は、あたしのこと…………好きだったの?


 分からないよ、希望。

 どうして行っちゃうの?

 あたしのことを助けてくれるんじゃなかったの!?

 昔約束したじゃない。


 ――――お互いのピンチには駆けつける――――


 って、それは嘘だったの? 希望はあたしを鼻で笑っていたの? 違うでしょ? 希望はあたしの大切な友達だよ!! あたしはわがままでウザい奴だったかもしれないけど、でもあたしのこと、一瞬でも好きでいてくれた? だって、あの笑顔。


 太陽みたいに、あたしの心の中の雲を全部取っ払ってくれたあの笑顔、あたしに向けてくれていたよね? あたしのことを、少しでも、嫌いじゃないって思ってくれていたよね?

 あたしのこと、あんな明るい笑顔で見る人、初めてだったんだよ。

 嬉しかったんだよ!!

 あぁ、あたしのことを思ってくれている人が、ここにはいる――――って。

 あたし、信じてたよ。大好きだよ。今も信じてる。希望は、あたしのことを嫌いになったりなんかしないって。

 だからあたし、頑張る。いじめなんかに負けない。希望がいてくれたからだよ。

 本当にありがとう。

 いつかまた会えたら、そのときは状況報告しちゃいます。


 ――――大好き。


 あたしはそうつぶやいて、薄暗い部屋のドアを開けて、電気の付いた廊下へ出た。

 するとそこにはお母さんが立っていて、あたしを見た瞬間、嬉しそうに笑った。


「暮羽、やっと出てきてくれたのね。さ、お母さんと一緒に話しましょ。何を言ってもいいから、ね」


 お母さんは少し泣きそうになっていた。




 あたしのことを思ってくれている人へ。


 あたしは今日も元気です。

 ちょっといじめにあってるけど、それはまあ大丈夫。

 希望もいるし(心の中に)お母さんも心強い味方だし、いざとなったら助けてくれるはずです。

 だから、どうか心配しないでください。

 あたしは、大丈夫だから――――


 そんな手紙を出せたらな、なんて思いながら笑う。


「あのね、お母さん。あたし――――」


 学校でいじめられていること、希望がいなくなってとても寂しいこと、苦しいこと。

 いろんなことを話したけど、お母さんは黙ってうなずいてくれた。


「暮羽、それはお母さんに最初に相談することよ。学校に連絡してもいいのね?」


 あたしはもちろんというようにうなずく。

 そのために話したようなものだもん、学校に連絡しなかったら何の意味もない。


「じゃあ、電話するから」


 お母さんはあたしを安心させるためなのか、にっこりと笑った。

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