ばいばい
希望が、いなくなった。うちの学校から、いなくなった。
どうして、希望は転校したのか、誰も分からなかった。
お父さんやお母さんの仕事の関係なのか、希望がこの学校で嫌なことがあったからなのか、住んでいた家が良くなかったのか。
いろんな可能性があったけれど、真相は分からない。
そして、希望がどこへ行ってしまったのかということも。
「希望、どうして……」
あたしは、帰り道つぶやく。
希望は、今日、もう引っ越しするそうで、明日からはいないらしい。
ぎりぎりまで、言わないなんて、最低だよ……。
もっと早く言ってくれれば、お別れ会だって出来たはずなのに。
どうして? 希望。
あたし、あたしもっと、希望と楽しく笑い合っていたかったよ。
希望のこと、大好きだったよ。
とぼとぼとあたしは歩く。
空はオレンジ色に染まっていき、あたしの陰は長く伸びた。
希望と初めて会った時も、こんな風に、夕暮れの時だった。
あたしは、まだ友達がそんなにいなかったから、一人で砂利道に絵を描いて遊んでいた。
そしたら、同い年くらいの女の子が、その様子をじっと見ていて、あたしは「一緒に遊ぼう」って声をかけたんだ。
それから、一緒に遊ぶようになったんだっけ。
はぁ……。
希望、どうして転校なんてしちゃうの?
あたしは、希望がいなかったら、生きていけないよ。
あたしは、あたしは……。
悲しい……。
あたしは家に帰って、自分の部屋に閉じこもった。
悲しくてたまらなかったから。もう、誰にも会いたくなかった。
希望、ごめんね。大好きだから、戻ってきてよ。
あたしのことが嫌だったんでしょ?




