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教室 ~いじめ~  作者: 青木ユイ
暮羽編
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さようなら

 希望、どうしてなの?

 あたし、希望は絶対に、本当の友達だと思ってたのに! もういいよ、あたしだって、もう希望なんて、大っ嫌いなんだから!


「希望のバカっ! もう希望なんて、知らないんだからっ!」


 あたしは叫ぶ。

 前は授業なんて、退屈でたまらなかった。

 だって、休憩の時間にみんながあたしを取り囲んで、ワイワイ楽しくやるのが、好きだったから。


 でも、今は授業の方が楽。なにも気にしないでいられるから。

 いじめなんて、あたしは気にしない。あたしは、弱いけど、強いから。


 あたしは頑張る。希望に裏切られても。


 帰りの会の時、連絡があったら伝える時間がある。そのとき、希望が手を上げた。

 希望は学級委員だから、よく連絡したりするんだけど、今日は特に何もなさそうだったような……。

 も、もしかして、あたしのいじめのことかな? まっ、まさか、そんなはずないか。


 だって、あたし、希望に嫌われたもん。でも、もう別にどうでもいい。

 さっきの休み時間だって、希望はあたしに向かって言った。


「暮羽と一緒にいたら、あたしいじめられるから、もうあたし、暮羽と一緒にいないから」


 そんなことで、縁が切れるほど、あたしたちの絆って、薄っぺらいものだったかな。

 あたしだけなのかな、友達だと思っていたの。あたしの、早とちりだったのかな。

 ……そうだよね。

 あたしの早とちりに決まってるよね。あたしなんか、ただ偉そうにしていただけの、弱い女の子なんだもん。


 希望が、カーディガンの袖を握りしめる。萌え袖ってやつをしてるみたいだ。

 いまさら、なんなの?

 さっさと連絡してほしい。


「えっと……」


 じらしてくる希望に、あたしはイライラする。学級委員なんだから、もうちょっとしっかりしてよね。

 いじめられるからって、いじめを止めずに、いじめる側に回ったりするなんて、学級委員失格だよ。


「あの、あたし……実は……」


 そこまで言うと、希望はまた黙ってしまった。

 何なのアイツ。超ムカつく。あたしをいじめたりしておいて、ちまちま止まったりして、イライラするんだけど。


「あたしっ……引っ越しますっ!」


「はぁ?」


 みんなも、驚いていた。

 引っ越す? それだけで? わざわざ連絡?

 なあんだ、じらしてくるから、もっと重大なことだと思ってたのに。

 たとえば、転校するとかさ。

 ドキドキして損した。


「だから、その、みんな……さようなら」


「……」


 んっ? さようなら?

 もしかして、転校?


「希望……さよなら。元気でね!」


 希望と仲が良かった女の子がそう言う。

 もしかしてみんな、転校するって、察してた? あたしは、ただ単に引っ越すだけだと思ってたのに。

 みんなが驚くのも、なんでそんなことで? ってことだと思っていたのに。

 みんなは、転校するの? っていうことで驚いていたんだ。


「希望……」


 あたしはつぶやく。転校なんて、信じられない。

 なんで、転校だっていうのに、あたしに冷たくなんてしたんだろう。

 ひどいよ、希望……。


 放課後、あたしは希望に呼び出された。なにか、文句でもあるのかな?


「あのさ……ごめんね。冷たくなんかして」


 突然そう言われて、あたしは驚く。なに、それ。どういうこと?


「どういうことなの? わざわざそれだけを言うために呼び出したの?」


 すると、希望は悲しそうに首を振った。


「それだけじゃないよ。ごめんね。あたし、暮羽に嫌いになってもらおうと思ったの」


 どういうことなのか、意味が分からなかった。嫌いになろうと思った?

 どういうこと?


「まだ分からない? あたしのこと、嫌いになったら、あたしが転校しても、悲し

くないでしょ?」


 希望は泣きそうになっていた。何それ、なんで希望、そんなこと言うの……?


「希望……ありがとう。さよなら」


「さようなら」

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