藻
「わぁぁぁっ~!」
「きゃぁぁっ~!」
私と香華の声が重なり、バッシャーンと水の音が広い空に響いた。冷たいし、んか気持ち悪い。
掃除する前だから、藻がいっぱいあるんだよね。もうすぐ掃除するけど、火事が起こった時のためにか知らないけど水が溜めてあるから、それに突っ込んだってわけだ。最悪~。
私はプールから出ると、藻だらけの私を見て、ため息をついた。しばらくすると香華もプールから出てきた。
香華も、私と同じく藻だらけだった。私は笑いそうなのを堪えながら立ち上がると、藻を掃って、プールから出ようとした。
すると、香華に腕をつかまれた。あー、こいつ、マジしつこい。ウザいタイプだけど、仕方ない。止まってあげようか。
「なに?」
私が聞くと、香華は私を睨みながら低い声で言った。
「分かってるんでしょ。そういうの、マジでウザいんだよ」
お前がなって、言おうとしたけどやめた。めんどくさいのは嫌いだからね。
いらないこと言ってごちゃごちゃするのは嫌だし、ここはスルーしよう。
「はいはい」
てきとーにそう言うと、香華が舌打ちをした。何も言わない方が良かったかな。
でも、無視しても絶対「何か言えよ」って言われるに決まってるし。結局、私が何言おうと怒られるんじゃん。
でも、やっぱりこういうやつとは関わらない方が良いみたい。つまり、私がプールに来たところからダメなんじゃん。
復讐は失敗か。じゃ、また今度ってことで、手も離されたし帰ろ~。
「よいしょっ」
私は立ち上がると駆け足でプールを出て行った。香華は追いかけてこなかった。
何となく良かったけど……なんか怪しい。またなんか企んでるのかな……。まったく、よくやるよね。
いじめのために時間費やすなんて、私なら絶対しないよ。バカだね、あーいう人たちは。だから嫌なんだよ。本当、ウザいわ。
ねちょねちょした人は嫌いだけど……ま、相手してあげるよ? って、私妙に上からだな。
ま、誰にも言ってないし、いいよね。これは心の中で言ってるだけなんだし?
「待って」
帰り道を歩く私に声をかけたのは……友里恵。
特にねちょねちょした、私の中では結構嫌なタイプの人。
「待ってって言われて待つ人はいないと思うけど」
私は振り向きもせずにそうつぶやくと、歩き出した。すると、さっきの香華のように友里恵が私の腕をつかんだ。あー、ウザいです。
こんな下等な人間なんかに触られたくないんだけど。でも、仕方ないか。でもやっぱりウザい。
ここは振り払って……って、何こいつ。地味に力強い、けど。
私に勝とうだなんて、百万年早いんだっつーの。私はつかまれた手をまわして、友里恵を地べたに打ち付けた。
「い……った」
友里恵はそう言うと私の腕を離した。ふふっ、私の勝ちってとこだね。私に逆らおうだなんてふざけすぎ。私、ケンカは出来る方だからね。
あ、やりたい訳じゃないから。
「お、覚えてなさいよっ!」
あ、負け犬の遠吠えってやつだな。だっさい奴。ほんと、笑える。帰ろう。
私はカバンを背負いなおした。普通の手さげタイプだけど、リュック背負いして、使ってるんだよね。結構軽いし、私はよくこれをやってる。そう言えば、昨日のあの紙、何だったんだろう。
友里恵も香華も何も言ってなかったし、やっぱりただのお遊びってやつかな。よし、気にしないでおこうっと。
私は早足で家に帰ると、お姉ちゃんから教科書を借りて、復習をした。一応しておかないと、私教科書ないからね。
てか、あいつらいつまで私の教科書持っとくつもりなんだろう? ま、どーでもいいけど。
別に下等な人間なんかにとられた教科書なんかに興味ないし。お姉ちゃんの借りとけば、何にも困らないし。ほんと、いじめなんてつまらなさすぎるわ。
この世界にいじめられている人が何人いるかは知らないけど、少なくとも私はいじめで自殺なんてしない。だって、嫌じゃん。他人に死ねとか言われて死ぬなんて。
いじめられている人をバカにしてるわけじゃないけど。だって、いじめてる方が200%悪いわけじゃん。
だから私は、絶対復讐する。あいつらが200%悪いんだって、証明する。
だって、いじめられてる方が悪いなんて、絶対ないから。
あ、でも私の場合は例外かな。ま、そんなめんどくさいこと、どーでもいいけど。