裏切り
あたしは何もしていないはずだった。
でも、本当は、あの優しさも、全部嘘だったんだ。
あたしを騙す、大きな大きな作戦だったんだ。
計画。
いまは、とても恐ろしい言葉。
みんな、あたしを騙している。
あたしを騙した。
どうしてあたしがいじめられなくちゃいけないの?
あたしは、いつもみんなの中心で、劇の主役とかも、全部あたし中心。
あたしがやってたのに。
なのに、どうして今は……。
どうしてっ、どうしてなの!
どうして、あたしをいじめたりなんかするの!
意味が分からない、脳がくるってるんだわ。
そうよ、あたしは間違ってない。
あたしは、この世界の中心なんだから。
世界は、あたしを中心に回っているんだから。
あたしは間違っていない。
あたしはいつも、みんなの中心。
こんなこと、絶対にありえないんだから。
ふざけてるんだわ、みんな。
あたしを、びっくりさせようとでも思っているに違いない。
それ以外、ありえないんだから。
でも、もしそれが、違ったら……。
手が震える。
あたし、こんなに弱かったっけ……?
そう、あたしは弱い。みんなに守られていただけ。
あたしは結局、自分が強いと思っていただけで、本当は、あたしじゃなく、あたしの周りにいた人たちが、あたしを守ってくれていて、それをあたしが勝手に、あたしが強いんだって思っていただけなんだ。
こんなに悲しいことって、あるのかな。
あたし、バカだ。みんな、あたしなんて見てなかった。
あたしの近くにいれば、守ってもらえると思っていたんだ。
あたしを守れば、あたしに守られるって。
それで、あたしは調子に乗って、みんながあたしより、下の立場だと思っていたんだ。
本当は、まったく逆なのに。正反対なのに。
あたしの机に、落書きがされているのを、あたしは見た。
「何、これ……」
思わずつぶやく。
そうだ、希望。希望がいる。あたしには、希望がいる!
あたしの心に、希望の光が射す。
希望がいれば、あたしは、無敵なんだ。
「希望っ……」
振り向いて、彼女の名を呼ぶ。
振り向いたら、いつも、笑顔で「暮羽っ」って、言ってくれる、希望が。
でも、今日は違った。
ううんきっと、明日も明後日も、違うだろう。
希望は、まるで死人のように、いつものような輝きのない瞳で、あたしを見ていた。
真っ黒で、絶望したような瞳。
あたしは後ずさりした。
これは、希望じゃない!
あたしの大好きな希望は、どこへ行ったの?
「希望、希望っ!」
あたしは、希望の肩を持って揺さぶる。
でも、希望は、何も言わない。
しばらく揺さぶっていると、希望の瞳に、いつもの光が戻った。
「希望……!」
あたしは、ほっとして胸を撫で下ろした。
良かった、これで、あたしに味方が出来た。
あたしは喜びでいっぱいだった。
嬉しいっ!
良かった。
これで、あたしはもう、こんなつらい思いをしなくても大丈夫だわ!
あたしは希望の手を握りながら言う。
「希望、良かっ――――――」
「触らないで」
冷たく言い放たれた、あたしへの「触らないで」という言葉。
どうして、希望まで、あたしを裏切るの?




