最強の言い訳
「希望、わかった? 今私が言ったこと、覚えた? 完コピしてよ」
「えっ、ちょっ、純香ちゃん鬼畜……」
希望が戸惑っているが、気にしない。希望が働いてくれないと私がいじめっ子みたいになるじゃないか。
その時、ちょうどいいタイミングで先生が教室に入ってきた。異様な空気が教室の中を流れる。教室のど真ん中でうずくまって鼻をすする美冬と、それを立ち尽くして見下ろす私と希望と香華。
先生は驚いたようにそれを見て、美冬のもとに駆け寄った。
「美冬さんどうしたの!? 大丈夫?」
先生がわざとらしく心配そうな声な声を出す。あー気持ち悪い。本当に心配なわけでもないくせに。
「うぇ~ん、先生~!」
美冬もわざとらしく泣き叫んだ。あーあーもう、だから気持ち悪いんだってば。やめろよそういう大根役者並の芝居。全然うまくないし。
すると先生はまたやさしーい声で「なにかあったの? 話してみて?」と言う。だーかーら、気持ち悪いんですって。分かってんのかこの二人。キモいって。
「片原さんにいじめられたぁ~!」
うっぜえなあ……。いじめてねえよ、お前が香華をいじめてたから怒っただけだろうが。ふざけんなバカ、ぶりっこ、消えてなくなれ!
……あ、いや、今のはさすがに言い過ぎた。ノーカンノーカン。今のノーカン。
「片原さん、なにしたの?」
「雪谷さんがいじめやってたから止めただけですけど」
私は負けじと言い返す。こんなやつに負けてたまるか。
希望と香華も、私に味方してくれる。
「そうです、先生。この子いじめられてたんですよ」
希望は香華を指さしながら言う。二人、こういうときはちゃんと協力してくれるんだね。利害の一致ってやつ? いや、それとはまた意味が違うかな。
そしたら、香華は泣くふりをして嗚咽を漏らしながら「美冬ちゃんひどいよぉ~」と言う。おっ、おい! お前も演技下手すぎだろ! 逆に怪しまれるだろ、変なことするんじゃない!
「……本当に?」
ほら、怪しまれた。ただでさえ私この先生に嫌われてるってのにさ。もう、面倒だな。
「あのさー先生」
後ろで、声がした。私の視界の中に希望と香華がいるから、この二人ではないはずだ。それに、美冬は先生にすがりついてるし。じゃあ、誰?
「美冬が悪いんだよ、先生。うちらみんな見てたもん」
「え……っと、誰だっけ」
顔は見たことあるのに、思い出せない。たしか、香華の下僕的な存在だったやつだよね。えーっと、えーっと、誰だ! 思い出せねえ!
一週間前のはずなのに! 何で思い出せない、私! 記憶力なさすぎだろ。
「誰だっけじゃないでしょ、あんた! 友里恵よ!」
「ああ!」
思い出した思い出した。そうだ、友里恵だった。
「友里恵さん、本当?」
「ほんとですよ。ね、みんな見てたでしょ?」
すると、周りにいた人はみんなうなずく。ゆ、友里恵の影響力すげえ……!
「なら、美冬さんは嘘をついたってこと?」
「そーですよっ。美冬、いっつも嘘ついてるんだから。ねっみんな!」
またみんな、うなずく。だからあんた、怖いって……。
でも、ここまでやれば美冬も白状するか。ちょっと無理やりな気もするけど、今回に関しては全面的にこいつが悪いから仕方ない。
だけど――――私はこの先生のことを、そして美冬のことを、見くびっていたようだ。




