学校 ―プール―
――――――ガラガラッ
静かにドアが開いた。クラス全員が話すのをやめて振り返った。誰も何も言わない。
でも、それはほんの一瞬のことで、すぐにみんなは何事もなかったかのように話し始めた。ま、そりゃそうか。そんなもんだよね。うんうん。まぁ、それもどーでもいいことなんだけど。
机になにやら貼り紙がされていた。なんだよ、めんどくさいな。私がそれを見てみると、女子たちがくすくす笑っていた。あー、ウザい。まぁ、気にしないけど。だって気にしてても意味ないし。
【放課後プールに来て】
あ~、超めんどくさいタイプだ。放課後? 私は勉強してるんだっつーの。
まったくめんどくさい。大体はこういうのは無視するんだけど……。プールなんて最高じゃん。
押されてプールに入っちゃったら全員引きずり込んでやるっつーの。それともなんだろ。
あ、制服切られるとか? なら、逆に切り返してやるから。
うん、何となく大丈夫そうだ。前までは無視してたけど……今回は復讐でもしてあげますよ。
今日は家庭訪問があるから4時間だしね。それにしても、先生何言うんだろう。お姉ちゃん明日部活ないし、聞いてもらっとかなくちゃ。
今日じゃなくてよかった。お姉ちゃんに何も言ってないし。絶対にお母さん教えてくれないもん。
お姉ちゃんなら聞いてくれるでしょ。
ま、その4時間はどーでもいいほどつまんなくて、特に目立ったことはなくて、体育はなかった。それでいい、それでいい。
で、放課後になった。プールには誰もいなかった。やっぱり来ないと思ってんのかな。
あ、後ろから押されるとか! 私は素早く振り返った。
すると、呆気にとられたような顔をしている女子がいた。え……マジで? 後ろから押すつもりだったんだ。
しかもすっげータイミングバッチシだったじゃん。私、ある意味凄い。で、女子の方は固まったままだった。
そんなに驚くことない……って、この人、なんか私を見てるようで私を見てない?
私は振り返った。その瞬間押された。あ~、や~ら~れ~た~っ。
ってなるかぁっ! 私は思いっきり体重を逆方向にかけて、なんとかこけないで済んだ。
その女子はまた固まっていた。今度は本当に固まってるんだったらいいんだけどっ!
「よっ……と」
私はその女子の腕を思いっきり引っ張って、ハンマー投げみたいにして手を放してやった。
そしたら見事にストライク。
ボッシャーンっていう気持ちいい音と一緒にプールに落ちていっちゃいました。
いい気味だ。
あの子はただ使わされてただけなんだろけど。ショボい下っ端より私はあいつにやってやりたいのに。ま、誰もいないみたいだし……帰るか。
そう思った瞬間、また激しく押された。あぁ、まったくもう! どうせ下っ端……じゃなかった。
ボスっぽい、アイツだ。
――――香華――――
友里恵に任せずにのこのこやってきやがって、マジウザい。って、私もそんなこと言えるような立場じゃないけどー。
てか、私初めてクラスの人の名前覚えちゃった。あんな下等な人間の名前……覚えたくなかったんだけど、覚えちゃったからには仕方ない。全力で覚えさせてもらうよ。
まぁ、私は心の中で思ってるだけで、一度も口に出してないけど。それでも別にいい。わざわざ下等な人間どもと話すとかマジ無意味だし。
あ、私が下等じゃないって言ってるんじゃないからね。それだけは本当だからね。
「あんたさぁ、いつもなら来ないのに、なに? どういう風の吹き回し?」
あんたに言われたくないな。ま、そんなこと口に出さないけど~。
めんどくさいし? あ、私超めんどくさがり屋だからね~。
「無視すんなよっ!」
そう言われるのは分かってたっつーの。私は突き出してきた香華の手をかわしてさっきのように香華の腕をつかんだ。
でも、何となくこの方法では香華をプールにぶち込んでやることは出来なさそうな気がしていた。
そんな私の予想はバッチリ当たっていた。
香華の腕をつかんだ私の手を香華の反対の手でつかまれた。あ、色々とヤバいなって感じだ。
それで、一瞬空中に浮いた感じがした。