もうこれは事件と認定する
お久しぶりです(?)
最新話です。ちょっと話を盛り上げてみました。
「ねえお願いだから美冬っ! こっち来てよ、純香ちゃんに迷惑かけたくないのっ」
香華がなんか言っている。私に迷惑かけたくないってどういうことだろう。散々いじめられて迷惑かけられてましたけど、私。いや、別にいじめられたからどうってわけじゃないけどね。普通に平気だったし。うん。
でも、なんか香華、めっちゃ必死な気がする。なんかあんのかな? まさか私を怖がってる……?
いや! それはない! 私は香華のこと怖がらせてなんかないしな! ……でも、なんかそういうことを言われると、困る。ほっとくわけには、いかないじゃん。
「うるさいなっ、触んなって言ってんじゃん!」
美冬が香華の手を叩く。ばしっという音が、しんとした教室に響いた。誰も、口を開かない。大声を出した美冬の方を、見ている。
すぐにほかの人たちは目を逸らしたけど、私は美冬のことを見続けた。ありえない。いくら私でも、許さん。
「お前何調子乗ってんだよ」
いつもより低い声で、私はうなるように言った。怒ると口が悪くなるのが私の癖だ。これは仕方ない。気にしないで先へ進む。
「……は? 別に調子乗ってなんか」
「乗ってんじゃん。香華に偉そうにしたりさ? 弱み握ってんのか何なのか知らねえけど、性格悪すぎだろ」
私の背は美冬よりも高いので、彼女を見下ろしながら言う。さっきの剣幕はどこかに行って、美冬はびくびくしていた。気持ち悪い。
それから、思い出したのでこれも言っておいた。
「あ、そうそう、この間あんたの母親に会ったよ。すっげえあんたの母親らしかった。自己チューなのは親から受け継がれてんだね」
するとその瞬間、美冬の顔が真っ赤になった。あ、地雷か。やばいな、変なこと言っちゃったかもしれない。これで逆ギレされたらめんどくせーな……。
しかし、美冬は逆ギレするどころか、黙ってうつむいてしまった。教室中の視線が私に集まる。
え、ちょっと待って!? まさか、みんな私を悪者にしようとか思ってないよね!? ちょっとふざけんなよ、私は敵を倒したんじゃないか。勇者だぞ勇者。
そんな私の心の叫びは誰にも届かない。美冬は泣きだしてしまった。おいおいおいおい……。逆ギレされるよりも面倒なんだけど。やだよやだよ、これで先生来たら絶対私が悪者じゃん。違うよ、私は一応これでも香華をかばったんだよ。
いや、でも美冬は優等生ぶってるから、先生甘いだろうな。逆に、私みたいな不真面目なやつには厳しい。別にいいんだけどさ、怒られても。ド派手にやられてたいじめにも気づかないようなやつ、最初っから期待してねえし。
「純香ちゃん……」
まずいよ、みたいな目を私に向ける希望。そうだった、希望がいるんだった。ここはいっちょ希望を盾にして……。
「大丈夫だって。希望が手伝ってくれれば何とかうまくいくから」
私は不敵な笑みを浮かべながら言う。希望は首を傾げながらうなずいた。よっしゃ、と右手を握りしめる。
すべては、先生への言い訳だ。




