トランプ①
「なにする? ババ抜き?」
笑顔で聞いてくる暮羽。でも、私はそれにそっけなく返事をする。
「え、ババ抜き面白くないじゃん」
暮羽が信じられないというような目で私を見てきた。うわっ、その顔やめて! なんか面白いけど、面白いけど見るのがつらい! それが私に向けての表情なのだということがなんかつらい!
いや、はっきり言ったことは謝るよ。でも、本当に私あんまり面白味を感じないんだもん。まあ、ジジ抜きよりはマシか。あれよりは、人の表情を楽しめるババ抜きの方が面白い。
「じゃあ、希望は何がいい?」
ぱっと笑顔に戻した暮羽が、希望の方を振り返る。希望はしばらく考えてから「じゃあ、大富豪はどう?」と聞いてきた。
なるほど、大富豪か。あ、でもあれ、私は弱いんだよな。カードの引きが大体悪い。たまに強いのが来ても、大体革命されるし。
んで、負ける。だからイラつく。そんでしばらく大富豪しなくなったな。だって一回も勝ったことないし。
お姉ちゃんと二人でやってたことあったけど、うん、ほんと勝ったことないわ。お姉ちゃんが強かったのかな。それとも私の運がなかっただけ?
「じゃあ、大富豪でいい? 純香ちゃん」
「え? あ、ああ、別にいいけど」
笑顔で尋ねてくる暮羽に「いやだ」とは言えなくて、私はうなずいてしまう。だって、さっきもあんな顔されたし……。あ、だめだ、思い出すだけで吹きそう。
「じゃ、あたしトランプ配るね」
暮羽はそう言いながら素早くトランプを混ぜて、三人分に分け始める。おお、素早い。かっこいい。
すぐに三人分のトランプが配られた。恐る恐る手持ちのカードを見てみる。
……。
……。
よっわーーーー!
よっわーーーー!
いやいやいやいや、こんなことあるかよ、弱いだろ! ジョーカーないし、1も2もないし!
は? は? これいじめだろ! 仕組んだな暮羽!!
……いや、人のせいにするのはよそう。暮羽がわざわざそんなことするはずがない。うん、そうだ。するはずがない。
だからきっと、これは私の運が悪いだけだ。うん。
それに誰かが革命してくれるかもしれない。つーか、私“3”と“10”四枚もってるから、革命できるしね。よしよし、きっと大丈夫だ。三人でやって四枚持ちが二種類もあるとか、絶対いい感じだよ。うん。
やってやろーじゃねーの!
「サンスペ持ってるの誰ー?」
「あ、私」
希望の問いかけに私は答えた。サンスペで始めるタイプなんだね。
あ、ちなみにサンスペというのは3のスペードのこと。サンスペから出さないといけないっていう決まりがあることもあるらしいけど、基本自由にやっちゃう私はサンスペ出さない。だって革命できなくなるし。
とりあえず適当に5を二枚出してみた。次はどうやら時計回りに回るから希望みたい。
希望は「どれにしよっかなー」とかつぶやきながら6を二枚出した。おお、しかも縛りだ。
「ねーこれって縛りあり?」
暮羽が訊くから、私と希望は顔を合わせて「なしにする?」「ありにする?」と相談する。
考えた末に、縛りはありということになった。ちなみに片縛りはめんどくさいからなし。
やっぱり、ルールは基本自由がいいよね! 暮羽が他の人とやってるルールは知らないけど、私と希望が3年前に大富豪をしたときとかはこんな感じのルールでやってました。
ちなみにお姉ちゃんとやるときはお姉ちゃんがルール決めちゃうから、片縛りも大体ありにされるんだよね。あれ、面倒だ。
関係ないですけど、私はババ抜きよりジジ抜きが好きです。
人の表情から読み取るのとか苦手なので、最後に答え合わせをしてたまに「あれ、合ってないじゃん」とかなるジジ抜きが好きですね。
どうでもいい話ですみません。
 




