お泊り会は続く
「じゃあ、私も光輝さんが帰ったことだし自分の部屋戻るね」
お姉ちゃんがそう言って立ち上がる。光輝がいたら帰らなかったってこと? 光輝がいたら何がダメなんだろ?
すると、急にお姉ちゃんは真面目な顔になって私を見てきた。いや、見据えるって言うべきなのか? 日本語は難しいね。
「――――純香。ごめんね?」
「はい?」
ごめんね、になぜ疑問符をつけるんだ。ぶりっ子がよくそういうのする気がするんだけど、お姉ちゃんは多分ぶりっ子の類には入らないと思う。
というか、そのごめんねはどういう意味で言ってるんだ。これだからクルクルパーは……。
「それじゃ、三人で仲良くね~♪」
お姉ちゃんは上機嫌で部屋を出て行った。うるさいのがいなくなると、一気に静けさが際立つ。
だ、誰か話題を振れよ……私はそういうのできないけど、能天気な希望ならできるだろ。もしくは暮羽、あんたもきっとできるだろ。コミュ力あります的な顔してんじゃん。
何事も人任せにする私がそう考えていると、ついに希望が口を開いた。
「お姉ちゃんがごめんね。なんかあの人、精神年齢低いからさ。ああやってすぐはしゃいじゃうんだよ」
……光輝も希望にだけは精神年齢が低いとか言われたくなかったと思うぞ。
希望もそれなりだから、人のことは言えない気がする。
すると、今度は暮羽が口を開いた。
「う、うん……。というかさ、希望。あたし、希望にお姉ちゃんがいることすら知らなかったんだけど」
なるほど、暮羽は知らなかったのか。
まあ、私もほとんど存在を忘れてたけどね。インパクトは大だけど、しばらく会わなければ自然とそうなっていくものだよ。多分。
「え! そうだっけ!? 私、暮羽に言ってなかったっけ!」
「そうだよ! あたし、結構希望と仲良いと思ってたんだけど、なんかショック……」
希望の驚いたような声に、半ギレする暮羽の言葉。
うんうん、あるよねそういう気持ち。でも、私はそういうのウザいからやめてほしい。
自分が仲良いと思ってたって相手が本当に自分と同じ気持ちかは限らないのに、そういうの押しつけて教えてもらうのが当然とかそういう風に考えてるやつは苦手だな。ショックウケられても、困る。
だから女子ってめんどくさいんだよ。まったくさー。
「え、え。く、暮羽ごめん。教えたくなかったとかそんなのじゃなくて、ただ単に忘れてたっていうか、言ったつもりでいただけなの! だから、怒らないでよ~」
希望は必死に取り繕おうとしている。あーもう、こういうのほんと嫌い。
女子ほんとめんどくさい。男子に生まれてきたかった。
希望の友だちだから大丈夫だろうってなんとなく思ってたけど、暮羽も普通の女子だから、やっぱり私の苦手な女子なんだなあ……。
もう、ほんと、面倒だ。