私のせいらしい
「なんで?」
私が首を傾げながら尋ねると、希望は「なんでって……」とあきれたような表情を見せていた。な、なんだよ、希望に呆れられるなんて心外だぞ。
暮羽も「これだから希望の友だちは……」とか言っている。希望の扱いがかなりひどいと思う。私も人のこと言えないけど。
というか、希望の友だちは暮羽もだろ? 何だよ、その言い草。
「ちょっとぉ、希望! あたしの純香ちゃんをとらないでよぉ~」
「いつ私はお前のものになったんだ」
光輝がいると、話がとんでもない方向に飛ぶことがある。あと、希望と同じくボケ体質だから、ツッコミ役がいなくて困る。お姉ちゃんもボケ体質だから当てにならないし、暮羽はそういうのできなさそうだし……。
必然的に、ツッコミ役は私一人ってことになる。そうだよ、だから疲れるんだ。
なんでツッコミキャラ出てこないんだよ! 私がツッコミのしすぎによる過労死してもいいのか!
というか、希望たちがボケなければいい話だと思う。
すると、光輝の言葉に反応してお姉ちゃんが声をあげる。
「光輝さん、邪魔しないでよ! なんで純香が光輝さんのものになるわけ? どう考えたって、純香は私のものだもん!」
「ちょ、お姉ちゃんくるしい。つか、キャラ変わってない?」
首絞めるのやめてくれ。苦しい。
ってか、ほんとにキャラ変わってない? お姉ちゃん、前まではもっと適当人間だったじゃん。ちょうど一週間前くらいまでは……。
私に対しても結構冷たかったし。どういう風の吹き回し? つーか、マジで苦しい。死ぬ。
「純香、こういう人にはね、近寄っちゃダメなんだよ。面白そうだなーって思って近づいたら、一瞬でガブッだからね! ガブッってくるから!」
「なにその例え」
「ちょっとぉ、萩香ちゃんっ! あたしはそんなことしません~」
「お姉ちゃん、その歳して恥ずかしいよ。やめてよ」
「……希望、お姉ちゃんいたんだ…………」
こういうのを、カオスって言うの? 誰が何しゃべってんだか。
とりあえず、変なこと言ってるのがうちのお姉ちゃんで、一番台詞短いのが私で、妙にウザいのが光輝で恥ずかしがってんのが希望。最後に驚きを隠せずに口から本音出ちゃってるのが暮羽か。
あ、誰が何話してるのか普通に分かったね。余裕だったよ。
「だーかーら! こうしよう、光輝さん。拳で勝負しよ!」
「おーよ!」
お姉ちゃんまで変なことを言い出した。そしてそれに乗っかるんじゃない22歳。
何となく予想はついていたけど、拳で勝負というのはつまりじゃんけんのことである。おい、私の意見は無視かよ。
ってか、私は誰のものでもないんだけどね? 変なこと言わないでいただきたいよ。ったく。
「じゃーんけーん」
「ぽん!」
気付けば、じゃんけんに参加した手は3つに増えていた。
お姉ちゃん、光輝……それから希望。おい、希望あんた何やってんだよ。
「少なくとも、お姉ちゃんにだけは純香ちゃんは譲らないから! だってお姉ちゃん変だし!」
「変!? 希望、あんたそれ、実の姉に向かって言う言葉じゃ――――」
「あ~すっごーい! 希望ちゃん、私たち気持ちが同じだね! というか……」
お姉ちゃんが、そう言いながら自分の手と二人の手を見比べた。
お姉ちゃん、パー。希望、パー。
……光輝、グー。
「負けたあああ!」
絶望する光輝。そんなたいしたことじゃないだろ。
対して、お姉ちゃんと希望は何故か仲よさげにハイタッチしていた。挨拶にも緊張していた一週間前くらいの希望とは、大違いだ。
みんな、たった一週間で、変わってるんだなあ……。
って、私、なにしみじみしてんの。
もはや いじめの 要素が まったく ない。




