お泊り会? そんなんじゃねーよ
昨日サボってすみません
私と希望の会話を聞いて、暮羽はなぜかびくびくしていた。な、なんだよ、そんなに私の発言だめだったのかよ。
反省はしてる。でも、やっぱり同じクラスの男子を恋愛対象としては見れないな。
「暮羽はどう思う? 恋っておかしくないよね!?」
希望が必死になっている。どうしたんだよ、まさか、希望恋でもしたのか? よくやるなあ。
つい最近まで仮にもいじめられてたくせに恋するとは、随分心に余裕があったんだな。いや、いじめられていたからこそ、か? でも、希望と仲よくしてた男子なんて……いなかった。うん、いなかった。
「ま、恋はおかしくないと思うけど、クラスの男子はどうかと思うな。そりゃ、まともな人がいたら話は別かもしれないけど、少なくとも今のクラスにあたしが好きになるような人はいないね」
暮羽がちゃんとしたまともな答えを出す。真面目だな、暮羽。
「そっかあ……」
希望は少し残念そうだ。やっぱりこいつ、クラスの男子のことを……!? 次元が違うな。うん、次元が違う。私たちは住む世界が違うんだ。ふっ、これだからリア充ってやつは……。
「あ! 言っとくけど、私は別に好きな人いないからね?」
思い出したみたいに言ってるけど、もう遅いぞ。私は分かったんだからな、希望に好きな人がいるって。それとも、わざと演技でもしたか? ……なんのために?
すると今度は、暮羽が私の方に体を寄せてきて耳元でこそこそささやいた。髪が当たってこしょばい。
「ねえねえ、純香ちゃんのクラスでの希望って、どう?」
どうと言われても、困る。普通だ。
正直にその旨を伝えると、彼女は希望の友達である。さっさと身を引くようなキャラではなかった。
「ねーねー、どんな感じ?」
「あーもう、希望の友だちってだけあってうるさいなあ……」
うっかり心の声を漏らしてしまったけれど、暮羽は知らないふりをしている。多分聞こえていたんだろうけど、知らないふりをしてくれているのならば、それに越したことはない。
しかし、それからも暮羽は希望の様子について聞き続けた。なんだこいつ、変態か? そんなに知りたいんなら、いっそのこと転校して来ればいいんじゃないか。
あ、でもそうなるとうちにずっと泊めなきゃいけなくなるのか。それは……うん、うるさくなりそうだからやだな。
と、思っている間に諦めてくれるかと思っていたが、浅はかだった。やはり暮羽は諦めない。
仕方ないから、私は口を開き希望の様子について説明してやった。
「えっとね、なんか、いっつもある特定の女子とケンカしてて、そのせいで私はすっごく迷惑してる。私が仲裁をしなきゃいけないから、超めんどい。昼休みだって、私は一人で静かに本でも読んでいたいのにその二人が邪魔してくるからすっごい殴りたくなる。だから暮羽、希望を持ち帰ってくれない?」
「それこそ問題発言だ!」
せっかく丁寧に説明してやったのに、感謝の一言すらない。なんだよ、その態度は。
それと、私は問題発言なんかさっきから一度もしていない。失礼である。それこそ問題発言じゃないのか。いくら性格悪いからって、私にだって自由に話をする権利くらいあるはずだぞ。
「問題発言ってさ、問題なことを発言したときに言うもんじゃないの? 私今、何も問題発言してないよ。事実を言ったんだよ」
思ったことをそのまま言うと、希望が全力で否定してきた。どちらかというと、もう一つ前の私の発言に対してだけど。
「純香ちゃん、結構話盛ってるからね!? 暮羽、純香ちゃんの言う事今は信じちゃダメ! ちょっと今、頭おかしいみたいだから!」
「おい希望、殴られたいのか」
言いながら、私は殴る気満々だった。落ち着け私、暴力はだめなんだぞ。
すると、暮羽が声をあげた。
「ちょっとみんな、一回落ち着こうよ!」
しらけた。ああ、この人って……。




