帰り道
私はスクバ(スクールバックの略)を肩にかけて、2時間目に渡された紙を開こうと思った。いや、あれは渡されたと言わないな。うん。
って、そんなことはどうでもいいんだけど。ちなみに、2時間目以降は何もなかった。あ、教科書がないのは日常茶飯事だからね。
とりあえず、上靴は確保していたし。体育なかったし。体育館シューズがない~なんてことにはならなかった。ま、そこは良かったんだけど……。
気になるのはこれ!
「これ……なんなんだろう」
私はそうつぶやくと、紙を開いてみた。
そこには、細かく何か文字が書かれていただけで何も入っていなかった。
とりあえずセーフだな。うんうん。何書いてるんだろう。
あいつらのことだからきっと悪口でも――――――。と、思ったのだけど。
私は思わず「え?」と口に出してしまうほど驚いた。そこに書かれていたのは、信じられないことだったからだ。
【今まで本当にごめんなさい。もういじめません。だから、友達になってください。】
そう書かれていた。マジで? いや、これは一種のだまし、じゃないか? いやいやいや、わざわざこんなこと書くわけないか。
えぇ~、でもでも、まさかあいつらがそんなこと、言うわけないだろ。
えぇ~、でもでも、わざわざこんなこと書くわけないだろ。
だから、本当……いや! やっぱり信じたくないなっ!
「あ゛ぁぁぁぁぁっ! 絶対ないっ!」
私は叫んだ。なんか、太陽と通行人の視線が痛かったです、はい。
いや、マジで本当に、なんなんだ!? やっぱりだまし、だろうな。
「うん、そうだ」
私は一人で納得して、早足で帰った。家に帰ると、いつも通り誰もいなかった。うん、そうだろうな。
だって、お母さんは死んじゃったし。お父さん仕事だし。再婚した母親はいっつもどっか行ってるし。いてもうるさいから私部屋にこってるし。お姉ちゃんは部活だし。
そりゃ、私独りだよね。てか、お姉ちゃんは私の事好きじゃないんだよね、たぶん。なのに、教科書貸してくれるのは……なんでだろう。うん。
私は、一応聞いてるからね。貸してくれるのも、たまにじゃなくて、毎回。
きっと、そこまで私の事嫌いではないと思う。もう、分かんないんだけどね。
「ただいま」
お姉ちゃんが帰ってきた。
一応、おはようとか、必要最低限くらいは言ってくれるからいいんだけど。
「おかえり」
そのあとの返事はなし。てか、普通の人でも、返事しないと思う。なんてしたらいいのか分かんないじゃん。
うんうん。そうだそうだ。だから別に返事がなくたっていい。
でも、お姉ちゃんはまだマシだから、いじめの事も話してるわけで。偽の母親なんかに相談するくらいなら、実の姉に言った方が良いでしょ。てか、あいつは私が話しかけても何も言わないからね。それはお姉ちゃんに対してもそうする時もあるみたいだ。
だから、たまに愚痴る。お姉ちゃんは、たまにしゃべってくれる。それが、私の落ち着いて人と話せるひとときなわけです。話し相手いなくても大丈夫だけど、色々とお姉ちゃんには助けられてますし。
私はやっと自分の部屋に行くと、カバンを投げ捨てた。教科書は、持っていってないからカバンは超軽い。筆箱とプリント入れるファイルくらいしか入ってない。ま、そんなんだったらこんなでかいカバン持って行かなくてもいいんだけど。
でも、持って行かないのもあれだしね。うん、色々とね。なんで手ぶら? なんであんなちっさいかばん? とか思われるのめんどくさいし。
それと、さらに面倒になるから、私はいじめはまるっきり無視してるけど……。
――――――別に、傷ついてないわけじゃない。