結局
毎日投稿が少しだけでも出来てうれしい私です。
「うーん、まあ、希望もいるしいいかな。私は嫌だけど、アイツが許せば仕方ないか……。そうじゃないと、希望に言い訳できないしな」
私は一人、どこかの怪しい少女のように独り言を言っていた。視線を感じるが、気のせいだろう。
私は、暮羽を家に泊めてやろうかと考えていた。オカーサンが許してくれる可能性は低いだろう。もし許してくれなかったら帰ってもらえばいい。薄情者だと言われても、私は構わない。もともと私はそういう人なんだから。
逆に、いくら友だちの友だちとは言え突然家に泊めてなんて言ってくる方が、無茶ぶりもいいところだ。だから、私が断ったって別におかしくないはず。うん、そうだそうだ。
「いいよ、おかーさんが許せば泊めてあげる」
「あ、ありがとう……」
暮羽の顔が引きつっていた。ああ、なるほど。
――――私の目つきが、そんなに悪いか。
これは別にわざとじゃないんだ。故意じゃない。もともと目つきが悪いって、ただそれだけだ。
まあ、別に誤解されようがどうだっていいんだけど、目つき悪いことを指摘されるのは嫌だから、私は暮羽から目線を逸らした。
家に帰ると、案の定オカーサンが怒り狂っていらっしゃった。でも、暮羽の姿を目にすると、その態度は一変して「いいお母さん」を演じているようだった。
まあ、私としたら好都合だから気にしない。こんなの、いちいち気にしていられないしね。
さっそく私がオカーサンに交渉をすると、さらっと認めてしまった。ちえ、結局泊めることになんのかよ……。ま、いいけどね、別に。
暮羽が悪いやつじゃないってことは何となくわかるし。それに、腕の傷のことも知りたいし。
これこそ、利害の一致ってやつか?
「お泊り会だ! お泊り会だお泊り会だー!」
「わーい!」
「……二人、うるさいんだけど。黙ってくれない?」
部屋に入ると、突然二人が騒がしくなった。ったく、面倒なキャラが二人もいると大変だな。
暮羽はもっとまともなキャラだと思ってたんだけど、さすがは希望の友だち。私の期待を見事に裏切ってくれた。
あーもう、なんか最初から疲れたなあ……。
「じゃあさ、じゃあさ、女子会でもする?」
謎の言葉を発する暮羽。すると、その言葉に反応して希望も乗っかる。
「おー! いいね! 暮羽さっすが!」
なにがさすがなのか、私にはよく分からない。でもまあ、知らなくていいことも世の中にはあるんだろう。そうだ、知らなくていい。
……でも、女子会とやらをするのなら、私も強制的にその輪の中に入れられることだろう。その中で、私一人浮いた発言をするのも嫌だ。
仕方なく、私は訊いた。
「女子会って、なにすんの?」
すると、希望が目をキラキラさせて待ってましたとばかりに説明を始める。
「うーんと、まあ、簡単に言えば恋バナが多いかな? あとは、グチとか?」
「え、何それ超怖いんですけど」
率直な意見である。グチってなんだよ、グチって。
どうせあれだろ? 愚痴と思わせておいて悪口の略のグチなんだろ? それくらい、わかる。
だから怖い。恋バナは聞かなかったことにして、グチとかなんだそれ、怖い。
「まーまー、適当に話せばいいんだよ! てゆーか、私たち別に恋してないしね」
希望はそう言いながら笑う。あー、そうですか……。
私が恋してないってことは決定なんだね。ま、そりゃそうだけど。誰が同学年に恋なんてするか。
他学年とは知り合うこともないし、そもそも私は部活に入っていない。
青春という名のきゃっきゃうふふなんて、私は経験していないのだ。まあ、私の青春なんて部活に入ろうが変わらないだろうけどな。それと、きゃっきゃうふふしたいとかまったく思ったことがない。
そんなことを思いながら、沈黙したその場をどうにかするために、真顔でつぶやく。
「ふーん……。今ドキの女子って、私ついていけないから分かんないけど、男を好きになって楽しいの? あんなクズみたいな連中を?」
「……純香ちゃん、そういうこと言うのやめようよ」
希望が呆れたようにため息をついた。悪かったな、そういうこと言って。
でも、私が感じたことを否定する権利は、希望にはないと思う。これだから、思い込みするやつは嫌だね。
って、私もか。