ありえねえだろ
お久しぶりです。
純香ちゃんです。
「純香ちゃんちは、あたし泊まれるかな?」
「は?」
暮羽の言葉に、私は耳を疑った。私の家に、お前を泊めるだと?
ありえないありえない。つーか、希望と私の家は一緒も同然なんだっつーの。この子、本気で知らないわけ? それとも、わざとか?
「ありえないでしょ、無理」
見知らぬ女の子を泊めるわけにもいかないので、冷たく拒絶。いやだいやだ。
なんで私が暮羽なんぞを泊めなくちゃならないんだ。そんな義務ないはずだぞ。
すると、希望が突然マジな顔になって暮羽に言った。い、嫌な予感がするんですけど!
「あのね、暮羽」
「う、うん」
暮羽は一歩後ずさりした。そりゃあそうだ。
あんなに近寄られたら、後ずさりしたくもなるだろう。私だったら走って逃げるけどな。
実際、希望は暮羽にすげー近寄っていた。さくっと説明すると、鼻当たるんじゃね? もしくは唇当たっちゃうんじゃね? みたいな距離感だ。
とにかく、見てると無性に殴りたくなる。ちなみに、決して私は暴力沙汰を好むタイプではない。
「純香ちゃんの家に泊めてあげる」
「ありがと……え? 純香ちゃん?」
予想通り、希望はとんでもないことを言い出した。あいつ、殴られないとわからないか?
と、そういうのはおいといてとにかく。暮羽を家に入れてたまるものか。
別に暮羽に恨みはないけれど、オカーサン(棒)がどういう反応をするかがまぶたの裏に映ってんじゃねーかよ。危険を冒してまで私は他人を助けたりなんかしない。してたまるものか。
数秒後。私と希望の口論が始まった。
「なんでいらないこと言うわけ!?」
「だ、だって、暮羽を今から帰すなんて、そんな惨いことできないよ!」
「だからって、なんで私の家なわけ!?」
「だって、あたしの家は純香ちゃんの家だもん……」
というか、自分の口調に身震いする。キモい、私キモイな!
すると、暮羽までとんでもないことを言い出した。
「ちょっと待って。ということは、あたしが仮に純香ちゃんの家に泊まるとしたら、希望もいるわけ?」
「うん、そうだけど」
暮羽の言葉に反応したのは希望だ。私は会話に加わっていない。そう、気配を消すんだ。そして逃げれたら一番いいんだけど……。
「なら、泊まりたい。ううん、泊まる! 泊まらせて純香ちゃん!」
「ええ!?」
ここで私に話を振るか、暮羽! やめろ、キラキラした目で私を見るな! 期待しないで!
なんで、私こんなことになってんの? ねえ、私なんかした? つか、今さらだけど暮羽って何者だよ!
そう思いつつも、ここまで言われて断るのも人でなしではないかと考えるようになってきた。人でなし扱いされるのは嫌だしなあ。それに、別に暮羽は嫌じゃないから、泊まってくれたって構わないんだけど……。
「……でも、アイツがなあ……」
私はつぶやいた。そう、うちにはアイツがいる。それはまあ、お察しの通りオカーサン(棒)なんだけど。
ほんっと、オカーサン(棒)が厄介なんだよな。邪魔。はっきり言って邪魔。
どうすっかなー。




