「あたし、二篠暮羽です!」
「あたし、二篠暮羽です!」
「……片原純香です」
なんだこれは。
私は恨めし気に希望を睨んだ。彼女は手を合わせてごめんというジェスチャーをしてくるが、全く反省の意は見られない。なぜなら、目が笑っているからだ。
あんまり会わなかったりもしたけど、一応私たちは小さい頃からの友だちなんだからな。希望のことくらいわかる。
ため息をつきながら、私はこそこそと希望に耳打ちした。
「なあ、この子誰?」
「だから、私の前の学校の友だちの暮羽。いい子だから、仲良くしてあげてね」
「……私帰ってもいい?」
私はこういう雰囲気が嫌いだ。
肩の位置で内側にくるんとカールした茶色い髪。知らない制服。ぱっちりとした瞳。何か言いたげな唇。
新キャラが現れると、私がこうやって観察しないといけないじゃないか。ふざけるなよ。
「純香ちゃんって言うんだ! よろしくね!」
テンション高いな。さすが希望の友だち……いや、これは失礼だ。やめておこう。
というか、その手はなんですか。
小さくてふわふわしてそうな手が、私の目の前に差し出された。シェイクハンドってか、えぇ?(威圧)
「……よろしく」
ゆっくり、その手を握った。気持ちいい。まあ、二度と会わないだろうけどな。
希望によると、この二篠暮羽という人は隣の県の中学校に通っているのだとか。なら、なんでここに?
「でも、暮羽、なんでここに?」
「あー……その、家出してきた」
「えっ!?」
てへへ、と前髪をいじる暮羽さん……もう、暮羽でいいか。
彼女が腕を上げたときに、上に羽織っていた彼女のカーディガンの袖がずり落ちた。
青黒い傷。ちらっとだったけど、確かに見えた――――。
もしかして、この人もいじめられてるとか……? いやいや、まさか。こんな明るい子がいじめに遭うとか、それこそ少女漫画ものだよ。
「だから、希望の家泊めてくれない?」
「え、あー……」
希望はうちに住んでるんですが。知らないのかな?
でも、ここまで来たってことは希望の親に場所を聞いたんだろうし。ならなんで希望が私の家に泊まっていることは知らないの? 少なくとも、希望が一人暮らししてるとかそんなこと考えてないだろ?
そんなことを考えていると、希望は私をちらちら見てきた。無理だ、却下だ!! なんで見知らぬ女の子を家に泊めなきゃならねえんだ! ただでさえお母さんに悪態つかれるしお姉ちゃんもちょっと機嫌悪いのにさ。
「ごめん、うちは……。でも、暮羽、なんでここが分かったの?」
「そっかぁ。あ、それでね、あたし、希望が転校したのってもしかして前に住んでた木津山市かなーと思って!」
「あはは、暮羽勘いいね。会えてよかった」
二人は私を置いて談笑。ねえ、本当に私家に帰りたいんだけど……。




