親は厄介
「帰りますっ」
私はこれ以上暴言を吐かれてたまるか、ということで希望を引きずって帰ることにした。なんなんだ、あいつはっ! うちの義理の母親もそうだけど、美冬の母親はもっとたちが悪いわ。
うちのは主に私に対して棘を向けてくるんだけど、美冬母は他人の子どもに向けてだよ? あーあ、親バカってホント迷惑だわー。美冬も可愛そうだな。あの親は、怖いぞ。
そうか、あれのせいで美冬はちょっと変わった女の子に育ってしまったんだな。まあ、私も人のことは言えないけど。この間まで散々下等な人間だとなかんとか言ってたし。あーもうあれ、私の立派な黒歴史……。
ちょっと中二病っぽかったのかな。いや、あんまり意味も分からないのに使ったらそれこそイタイ人だな。やめておこう。あの頃の私はイタイ人だったんだ。うん、そういうことにしておこう。それ以上でもそれ以下でもない。ただの頭のイカれた中学二年生だ。
「ちょっと純香ちゃん、痛いんだけど」
「あ、ごめん」
いつの間にか復活していた希望が文句を言ってきた。私は希望の腕をつかんで引っ張っていたから、痛かったんだな。すまんすまん。
「それにしても、親って厄介だよね」
希望は、遠くを見ながらそうつぶやいた。な、何怖い。何ほんと怖い。なんで遠くを見てるわけ? え、ほんと怖いんすけど。まさか希望、頭が……?
「まあ、そりゃあね」
平然として返すと、希望は今度は地面を見つめだす。おいどうした。
「美冬の問題は美冬だけにあるわけじゃないと思うんだ。ああいう風に育てた親も悪いのかもしれないし、周りの波に揉まれてああいう風になってしまったのかもしれないし。少なくとも、美冬だってああいう性格にはなりたくなかったと思うよ」
台詞長いな、おい。
なんでいきなり希望が真面目なキャラになったのかは分からないけど、とりあえず私たち二人の間には浅めの溝が出来ていて、なんとなく殺伐とした雰囲気で、しんみりしているというか。とにかく、なんか冷たい。希望が冷たい。雰囲気暗い。そして怖い。
「そうか」
とりあえず、言うことが分からなかったので頷いておく。返事がないよりはいいだろう。てゆうか、希望の言った事ほとんど聞いてなかった。美冬がなんだって? まあいいか。そんな大事な事じゃなかっただろう、多分。
「なんか純香ちゃん、冷たいね」
「いや、お前がな!?」
あたしは素早く反論した。冷たいのは希望の方だろうがよ。なんで私が冷たい人扱いされなくちゃならんのだ。確かに少なくとも私は心の温かい人ではないがな。
それにしても、親は本当に厄介なやつだ。あんなラスボスを投入してくるとは……。美冬、図りすぎだろ。私たちは別に推理小説に出てくる陰謀を隠し持ったキャラとかじゃないんだぞ。お前は探偵か。
二人でてくてくと歩いていると、前方を歩く人影が見えた。背は同じくらいだから、もしかしたら同じ学校の人かもしれない。私はうつむいた。厄介なやつとは出会いたくないんだ。
「暮羽!?」
希望が、声を上げた。その途端に、相手も顔を上げて希望の顔をまじまじと見つめ「まさか、希望!?」とか言って感動の再会を果たしていた。なんじゃそりゃ。つか、誰?
「あ、純香ちゃん。この子は二篠暮羽って言って、私の前の学校の友だちだよ」
「お、おうそうか」
「初めまして」
わ、私は初対面の人とか苦手なんだよ。コミュ力低いからな、私。
何だこのフレンドリーな感じ。こういう人マジ苦手。
するとその子はゆっくりと近づいてきた。なになになになに、近づかないで! 怖いこの子! 誰!!
やっと二人が出会いました。
ちなみに暮羽の学校は純香の学校とは県が違うという設定です。




