第2試合 ラウンド1 純香VS希望
前回のあらすじ
勝者:純香
勝者より一言:いつ私が香華と争った(怒)
「純香ちゃん、やっぱりなんか、あの、遠巻きにされてない?」
希望は言いにくそうにささやいた。さっきの人たちに聞こえないようにかな。だってあの人たち、私たちを(特に私を)ガン見してるし。怖い。女子怖い。
「そうかな~」
平静を装ってそう答えると、急に希望が机を両手で激しく叩いた。わっ怖っ。なに、なになになになに。
「純香ちゃん、我慢してちゃダメなんだよ」
「お、おう」
なんかすごい真剣な顔をしてくるから、びびる。怖いから、やめてそのマジ顔。吹き出しそうになる。悪いのは分かってるけど、ほんとに吹き出しそうになるんだよ。お願いやめて、マジ顔はやめて。
私はマジ顔の希望となるべく目を合わせないようにするけど、どうやってでも視界に入ってくるスーパーガール希望を振り切ることなんて到底できなかった。降参。
「ごめん、なんか、私が悪かったって認めるから、お願いその顔だけはやめて」
「え? いや、あの、純香ちゃん?」
なにがなんだか、というような顔をしている希望。まあいいじゃないか。ってか、決着つくのが速すぎる。こんなものじゃダメなんだぞ。
「ねえ希望」
「んー?」
呑気そうな希望に、私は言った。結構本気顔で。
「腕相撲しない?」
「……え、っと?」
希望がいつにも増して動揺している。動揺している! 希望、超動揺している!!
「純香ちゃん、あれ、もしかしてこの寒さのせいかな。純香ちゃん壊れちゃったのかな」
希望が失礼なことを言っている。ねえ、寒さのせいかな。希望こそおかしい。私は壊れてなんかないからな。勝手にそんな風にするな。
「あ、ところで希望」
こういう時は話題を変えるのに限る。っていうか、腕相撲しないのかよ。まあいいや、これ以上腕相撲腕相撲って言ってたら本当に頭おかしい子だって思われそう。
「ん? ど、どうしたの純香ちゃん」
「何その顔」
希望は口をパクパクさせながらどこか違う方向を向いている。私はため息をついた。なんか最近、楽しくないなあ……。
思えば、数日前までは香華にいじめられていたから反抗したりするのでいろいろやることがあった。どうやって撃退しようか考えているのもまた楽しかったし、藻だらけのプールに落ちた後の香華の顔なんて傑作だ。あれはテレビに出てもおかしくなかったよ。でもさあ……。
最近の香華を見てよ。まったく面白くない。面白味のひとかけらさえない。昔はもっと面白くて表情のバリエーションがあって、今みたいにぶりっ子してるようなやつじゃなかった……ってなんだよなんか香華はいじめっ子の時の方が良かったって言ってるみたいじゃないか。いや、実際そうなんだけどさ。だって本当に面白くなんかないし。
「純香ちゃん、本当に大丈夫?」
なんか希望に心配された。おいやめろ、頭大丈夫って言いたいのか。やっぱ希望もちょっと変わった。なんていうか、失礼なやつになった。生クリームぶちまけられたこともあったけど、そういうのとはまた違って。なんでかな、みんなやっぱり変わっていくんだね。
……私やっぱり熱でもあるのかな。
 




