火曜日
眠い、眠すぎる……。
純香、最大のピンチ……。
……。
……。
……。
……。
って、んなわけあるかぁ~っ! 最大のピンチではないな、絶対に。
これ断言するから、本当に。
マジで本当に、わかってるのかなっ? ……やっぱり、私キャラ変わってる。
どうしよう、これってかなりピンチな感じな気がするような気がするんだけどなぁ……。
あーもう、本当に、しんどい。
そういえば、希望、大丈夫なのかな。なんか、昨日といい今日といい、元気なかったっぽかったのになぁ。ふぅ、はぁ……。
ってか、あいつ、どうしたんだろう。
えっと、名前なんだっけ?
あれ……えーっとぉ、忘れ、た? たしかあの、えっと、あれあれ。
きょーか? 香華、だ。
そうそう、覚えたんだっけ。下等な人間の名前。
あっ、私、偉そうだな。
それにしても、ひま……。って、授業中なんだけどね。
「――――さん。純香さん」
そう呼ばれて、私は顔を上げる。あぁ、問1をやりましょうってか。
「-5です」
しらっと答える私に、先生は少し驚いていた。
ここの学校は、みんなのことをしたの名前で呼ぶのが普通だ。みんなそうなんだよね。
だから、自己紹介のときも、苗字は別に言わなくたっていいし、まず、苗字の必要性がない。
それくらいの勢いで。
「は、はい。正解です」
先生、しっかりしてくださいよ? 私だって、聞いてないふりしながら、聞いてるから。
問1やっていないように見えたって、意外とやっていたりするんだから。数学は得意分野ですから。
遠くの席に座っている香華が睨んでいるように思えた。いや、あれは絶対に睨んでいる。ったく、面倒くさい。
バッカじゃないの、香華。ふざけてるっていうか、バカっていうか、ホントやめてほしいっていうか。
「何か用ですか? 香華ちゃん?」
ちょっと笑いながら香華の方を見る。
「はぁ? 何言ってるの、純香。そういうの……うざ、じゃなくって……ふ、ふざけないで!」
先生が香華の方を見たから、暴言を吐くのをやめたみたいだった。
それにしても、香華ってば、本当におとなしくなったよね。怖いくらいに。ふざけてるっていうか……。
なんなのか、分からない。ふざけてるでしょ、絶対。やめてほしいわ。気持ち悪いし。
「私語は慎んで」
厳しい声に、香華はびくびくしながら、小さな声で「はい」と返事をした。あはは、爆笑。
……棒読みだけどね。
「じゃあ、続きです。右辺の-8xを左辺に移項して、符号を変えます」
方程式とか……。はあ、面倒だ。
-8xとか、私はどうでもいいのに。
習いたい人だけ習えばいいじゃん。絶対将来使わない。比の方程式のほうは、まだ使うかもしれないけど。
しんどい、帰りたい。まあ、いじめがなくなっただけましかな?
サンキュー、香華。