怖いんです
「暮羽、今希望に子供っぽいって言った?」
希望がやっと静かになったと思ったら、今度は純香ちゃんがそう尋ねてきた。なんでそんなことを訊かれたのかは分からなかったけど、あたしは正直にうなずく。
「え? うん、まあ言ったけど……」
答えると、純香ちゃんは明らかにひいていた。えっ、なになに!? あたし、なんか変なこと言った!? 子供っぽいって言うの、そんなにだめ? 本当のことだと思うんだけど。
まあ、たしかにちょっとひどいかな? でも、本人は全然気にしてないから多分大丈夫だと思う。
純香ちゃんは、あたしのことを横目で見ながらつぶやく。
「……これだから女子は、ほんと怖いわー。マジ怖いわー」
「純香ちゃん、棒読みでぼそぼそ言ってるの怖いよ。やめて」
あたしがそう言うと、険しい目つきで睨まれる。えっ、怖い! 純香ちゃん怖い!
部屋の端の方で寝転んでいる希望は「純香ちゃんがおかしくなった~! ねずみのせいだ~!」とか騒いでるし。うるさいな……。
「希望、何気なくあたしのせいにするのやめてよ」
あたしは小さくため息をつきながら希望に言う。だって、ねずみのせいってひどい。ぶっとびマウスは何も悪くないよ! それに、あたしも悪くない!
「え、してないよ! 私は、ねずみのせいだって言っただけで……あ、ごめん」
希望はしおらしく謝る。ねずみのせいって言われたことが嫌だったってことに気付いたみたいだ。でも、謝られるとちょっと罪悪感ある。別に謝ってほしかったわけじゃないんだけどなあ。
「いーよいーよ」
あたしはすぐに許す。純香ちゃんがあたしのことを見ているような気がしたけど、気のせいということにしておこう。
「ねーねー純香ちゃん。それで、トランプは?」
「は?」
あたしは気持ちを切り替えて、純香ちゃんに尋ねる。また「は?」って言われた……純香ちゃん、何気にいつもひどいよ……。
「いや、今一緒にやるのならいいけど、あげるのは無理だよ?」
「あ、くれなくてもいいの! そりゃーくれるって言うんだったらもらいたかったけど、仕方ないもんね! ネットで探してみるよ!」
純香ちゃんはどうやら、あたしがまだトランプを欲しがっていると思っていたらしい。まあ、そりゃあ欲しいけどね……。
でも、ネット通販とかで売ってるかもしれないし、もしかしたらまだキャンペーンが終わってないかもしれない。それに、純香ちゃんのトランプ、ただで譲ってもらうのはやっぱり悪い気がするしね。
「あっ、それで、一緒にトランプしない?」
あたしは床に置かれたRI☆COのトランプを拾いながら提案する。
「別にいいけど……。希望は?」
「あ、うん! 私もやる!」
純香ちゃんが少しめんどくさそうに答え、そのあとに希望も続いた。三人でやるってことでいいらしい。っていうか、希望、本当に切り替え早いね……。さっきまで床に這いつくばってたってのに。
まあ、それが希望のいいところなのかな? いつまでもさっきのねずみのことでうじうじされてても困るし。
純香編をただただ追っかけてるだけなのがつらい。もっと自由に書きたい……。