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教室 ~いじめ~  作者: 青木ユイ
暮羽編
102/109

トランプ

お久しぶりです。ほんとにお久しぶりです。

ほんとにすみません。ごめんなさい。土下座します。

遅れてすみません。頑張ります。今度こそ頑張ります。

「それじゃ、三人でなんかしよー!」


 切り替えの早い希望がそう言う。テンション高いな……。ま、希望がテンション高いのはいつものことか。

 そう思いながら、あたしは純香ちゃんに質問をする。


「なんかって、なに? 純香ちゃんち、ゲームとかあるの?」


「あるわけないだろ、ちゃんと見ろこの殺風景な部屋を」


 冷たく返事をされた。うぅ、やっぱりあたし、純香ちゃんに嫌われてる? いや、でも希望に対してもこんな感じだし、純香ちゃんはもともとこういう性格なのかも……?

 なら仕方ないか、と自分で解決させる。あんまりもやもやと考えるのは、好きじゃない。何事も切り替えが大事なのです。

 でも、ゲームとかがないなら、何をしよう? 一瞬考えたけど思い浮かびそうになかったので、あたしは言い出しっぺの希望に押し付けることにした。


「そっか~。で、希望は何するつもりなの?」


 すると希望はうんうんうなって考え込み始めた。そんなにうならなくても、と言いたくなるくらいにうんうんうなってる。やめて、吹き出しそう。

 しばらくしてから、希望ははっとしたように顔を上げ、言った。


「トランプとか?」


「トランプ?」


 あたしと純香ちゃんの声が重なる。トランプか~。最近やってないから、いいかもしれない。でも、純香ちゃん持ってるのかな?

 そしたら、純香ちゃんは突然立ち上がって机の引き出しを探り始める。ちょっとしてから、彼女がトランプの箱を取り出していた。


「あったけど……やる?」


 純香ちゃんの言葉に、希望は目を輝かせた。


「あったの!? ほんとに言ってる!?」


「見たら分かるだろ」


 ぎゃあぎゃあ言う希望を純香ちゃんが軽くあしらう。いや、そんなことは問題じゃない。純香ちゃんが手に持ってる、そのトランプって――――!


「……純香ちゃん、これ」


 あたしは、小さな声でつぶやいた。


「ん? これは、どっかのピザ屋でもらったおまけの――――」


 純香ちゃんがそう言うのを遮って、あたしは叫んでいた。


「ちょうだい!!」


「……は?」


 何を言っているのか分からない、というような表情で純香ちゃんがあたしを見る。いつもならなんかバカにされてる気がする……って落ち込みそうなところだけど、今はそれどころじゃない。目の前の、このトランプをどうしても手に入れたかった。だって、だってこれって!


「ちょうだいって……ただのトランプじゃん」


「何言ってるの純香ちゃん! これが見えないの!?」


 肩をすくめる純香ちゃんに、あたしは必死に叫ぶ。トランプの箱に映っている女の子を指差しながら。


「純香ちゃん、もしかして知らないの!? RI☆COだよ、RI☆CO! 今話題の、現役女子高生のシンガーソングライター!」


 あたしはそう言うけど、純香ちゃんは「はあ……」とか言って、全然興味ないみたいだ。今、すごく人気なのに、純香ちゃん知らないんだ。まあ、たしかにあんまり興味なさそうだけどね。

 RI☆COは、あたしの大好きな人だ。憧れてる。歌も全部好きだし、歌詞ももちろん覚えてる。とにかく、大好きなんだ。そういえば、ピザ屋さんとコラボしたって言ってたなあ。でも、あたしの家あんまりピザ頼んだりしないんだよね。


「だから、お願い! 純香ちゃんが別にRI☆COのことを好きでもなんでもないんだったら、このトランプあたしに譲って!」


「えぇ~」


 あたしは土下座しそうなほどの勢いで頭を下げお願いするが、純香ちゃんの反応はイマイチだ。

 だめかな……と思っていると、純香ちゃんがこう言った。


「じゃあ、違うトランプちょうだい。うちにはそれしかトランプないんだからね」


 なるほど、とあたしは思った。それだったら、あたしがもらったら悪いよね。でも、あいにくトランプは持ち合わせていない。どうしようかと考えて思いついたのは、リュックの中に入れてきたおもちゃだった。

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