ここに、いたい
お久しぶりです。
サボってて本当にすみません。
古文のプリントの空白に「しみじみと心惹かれる」と書き込む。手に持っているのはお気に入りのシャーペン。小6の時の誕生日に、友だちからもらったやつだ。
あたしの好きな緑色。ノック部分はクローバーが付いている。あたし、クローバー好きなんだよね。
しばらくすると希望のお姉さんは立ち上がって、純香ちゃんのお母さん怖いから帰ると言い出した。
彼女がいなくなってから、あたしははっとする。そういえば、あたし純香ちゃんに無理やり泊まりたいとか頼んじゃったんだっけ!
慌てて、純香ちゃんに声をかける。
「あ、じゅ、純香ちゃん。ほんとに、その、あたし……今日、泊まってってもいいの?」
純香ちゃんはどうでもよさそうな顔で素っ気なく「別にいいけど」と答えた。だけどその素っ気なさなんかはまったく気にならなくって、あたしはただ嬉しくて「ありがとう」とお礼を言った。
あたし、純香ちゃんに嫌われてるのかなあって思ってたんだけど、意外とそうでもないのかもしれない。まあ、よかった……の、かな。嫌われてないみたいだし。純香ちゃん、嫌いな人なんか絶対家に泊めるわけないだろうし。
そのあと、純香ちゃんのお姉さんも立ち上がって自分の部屋に戻ると言い出した。意味深に純香ちゃんに謝って、最後に「三人で仲良くね~♪」と言い残し、部屋を出て行く。
……純香ちゃんのお姉さん、なんで純香ちゃんに謝ったんだろう? 騒いだりしてたからってことかな? 純香ちゃんの様子をこっそり窺ってみると、彼女も何か考えているような表情をしていた。純香ちゃんも、意味分かってないのかな?
二人がいなくなって、急に静かになった。しーん、という音が聞こえてきそうなほど静か。さっきまで主に希望と純香ちゃんのお姉さんが騒いでたから、余計かな?
すると、希望が口を開いた。
「お姉ちゃんがごめんね。なんかあの人、精神年齢低いからさ。ああやってすぐはしゃいじゃうんだよ」
精神年齢低いって……希望も相当でしょ。心の中でそうツッコむ。それから、ずっと言いたかったことを口にした。
「というかさ、希望。あたし、希望にお姉ちゃんがいることすら知らなかったんだけど」
すると、希望が驚きの声をあげる。
「え! そうだっけ!? 私、暮羽に言ってなかったっけ!」
「そうだよ! あたし、結構希望と仲良いと思ってたんだけど、なんかショック……」
ちょっと意地悪な言い方になってしまったような気もしたけど、本当にショックだったので正直にそれを伝える。すると希望は慌てて取り繕いはじめた。
「え、え。く、暮羽ごめん。教えたくなかったとかそんなのじゃなくて、ただ単に忘れてたっていうか、言ったつもりでいただけなの! だから、怒らないでよ~」
別に、教えたくなかったと思われているとかは考えなかったけど……。でも、なんか、ちょっとショックだったなあ。
これって、わがままかな? やっぱり、まだ偉そうにしてた頃のが残ってるのかなあ。だって、そんなすごい前じゃないしね。
「ねー暮羽、ほんとごめんって! 許してよぉ~」
何も言わないあたしがまだ怒っていると思っているみたいで、希望は延々と謝っている。だんだん申し訳なくなってきたので、許した。
そしたら、希望が「暮羽ぁ~!」と叫びながらあたしに抱きついてくる。あ、暑苦しいな……。
そんなわけで、無事仲直り。……って、別にケンカしてたわけじゃないけどね。




