趣がある
「……てかさあ、おかーさんがさっきから私の事睨んできてるんだけど。騒がないでくれない?」
純香ちゃんの言葉に、あたしは彼女の視線の先を辿る。お母さん、らしき女性がこっちを睨んでいた。あたしの視線に気付くと、その人は慌てて視線を逸らし、そして笑顔をつくってからもう一度こちらを向く。わ、なんか詐欺っぽい笑顔だなあ……純香ちゃんがひねくれるのも分かる気が(以下略)
「うわっ、やばっ……。み、みんな、上あがろう! 純香の部屋!」
純香ちゃんのお姉さん、萩香さんがそう言って、みんな階段を上がる。一番最後に続いたあたしを、純香ちゃんのお母さんが見ていたような気がしたんだけど……気のせいかな?
まあ、居候させてもらってるし、見られるのは分からなくもないけど。
部屋に入ると、あたしはあることに気が付いた。ここにいる間は、学校に行かなくていい。だけど、たしかやりかけの古文のプリントがあったような……。
いや、なんで持ってるのかあたし自身も不思議なんだけどね。別にやらなくてもいいんだろうけど、いずれ連れ戻されるだろうし。その時に全然勉強分からんぜよって感じになっちゃったら困る。だから、せめて古文はどうにかしてマスターしたい。特に苦手だし。
「あ、そうだ。あたし、古文の宿題しなくちゃなんだけど……純香ちゃん、教えてくれない?」
教えてもらう人は純香ちゃんに決めた。何となく直感で、この中で一番まともそうな人だと思ったからだ。希望、希望のお姉さんらへんは不安しかないし、純香ちゃんのお姉さんに頼むのはちょっと気が引けた。希望のお姉さんも同じくだけど。
というわけで、純香ちゃんをセレクト。問題は、いいよって言ってくれるかどうかなんだけどね……。
「どれ?」
以外にも、純香ちゃんはすぐいにあたしの持っているプリントを覗いた。お、よかった。
と思ったけど、純香ちゃんはすぐにプリントから目を離した。
「ごめん、私パス。年上に任せる」
「え、純香ちゃん私は!? 私は無視なの!?」
年上に、という言葉に希望が怒っている。希望、あんたどうせわからないでしょ。
というわけで希望と純香ちゃんのお姉さんの方を見る。――――無言で首を振られた。無理ってことか!
まあ、何となく予想していたけど、まさか純香ちゃんのお姉さんまでもが……。いや、でも、見た目も天然そうだから、予想外ってわけじゃない気もするけど。ってあたし失礼。
「あのさ、この「趣がある」の意味を教えてほしいんだけど」
「趣?」
仕方ないのでもう一回純香ちゃんに聞く。これだったらまだ簡単だと先生が言ってたし、頭良さそうな純香ちゃんならわかるかもしれない。あたしはバカだから分からないけど。
「……あ、しみじみと心惹かれる、じゃなかった?」
「ああ!」
それだそれだ。しみじみと心惹かれる、だ。先生、そういえばそんなこと言ってた。
だめだなあ、あたし。全然覚えられない。やっぱ、塾とか行くべきなのかな……。いやいや、まだ1年だしきっと大丈夫。
……こういうこと、2年になっても言ってそうだ、あたし。絶対言うよ。
なんとかぎりぎり……。
なんか、純香編と合わせて書いているとだんだん暮羽の気持ちだけどっかに行っちゃって、もともとの暮羽の言葉と気持ちが合わなくなっていく気がします……
心情描写が暴走しまくるからですかね。




