朝
朝になって、私はカーテンと窓を勢いよく開けた。
すると、希望はまぶしそうに目を閉じながら起き上がった。
「おはよー……うぅ、まぶしい」
希望はそうつぶやきながら、布団をたたみ始めた。私も自分の布団をたたむ。
窓から暖かい風が入ってきた。それと同時に、下からいい匂いがしてくる。朝ご飯の卵焼きかな。
私は布団をたたみ終わると、そのまま一階に行った。キッチンには、お母さんが立っていた。
「おはよう」
私はそう言ったけど、お母さんは無視した。別にいいけど。
泊まるとか決めてるのはいっつも希望のお母さん。私のお母さんはいつも嫌そうに「まぁいいけど」とか言ってる。
お母さんって、本当に何なんだろう。迷惑だな。なんで、こんな性格なんだろ。
「ふぁぁぁ……。純香ちゃん、先に行かないでよぉ~」
希望がやっと一階にやってきた。希望が履いているスリッパが階段にパコパコ当たって音を立てている。
しばらくすると、お姉ちゃんが部屋から出てきた。お姉ちゃんは私と希望を見ると「おはよ」とつぶやいた。私には聞こえたけど、多分、希望には聞こえていない。何も言わずに、テレビ見てるから、絶対そうだ。
お姉ちゃんはもう一度さっきより大きい声で「おはよう」と言った。すると、希望はバッと振り返って「お、おはようございますっ」と緊張したように言った。
私も希望のすぐ後に「おはよう」と返して、またテレビを見始めた。今見てるのはニュースだけど、意外と私はニュースが好き。事件とかがあると、つい見ちゃったりする。
これっておかしいことじゃないよね? 一人でそう思いながら一人で笑った。
希望は私の顔を覗きこみながら不思議そうな顔をした。でも私は何も言わずに希望から顔をそらしてまたニュースを見始めた。
希望はあきらめたかのようにテレビに向き直ると、静かに座っていた。おかしくなったのかと思ったけど、その時朝ご飯が出来たみたいで、私たちは呼ばれた。
とりあえず何も言わないでテーブルに向かう。
「希望、おいしい……?」
私は希望にそう聞いてみた。希望は笑顔で「おいしいよっ!」と言ったが、目は笑っていなかった。
何で……どうして? やっぱりおいしくないんじゃ?
「うそ、つかなくてもいいんだよ」
私は希望の顔を覗き込みながら言った。希望はすばやく私から目をそらすと「どっちだっていいじゃん……ね?」と、何かごまかすような仕草で言った。
なんだか、心の中に黒いもやが広がっていくようで、とても恐ろしく感じた。怖い……。
私は正体の分からない黒いもやと戦いながらもくもくと朝食を食べた。静かな朝食だった。




