表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

MEMORYS

電光石火

「……ここ、どこ……?」

 周りを見渡し呟いても、その問いに答えてくれる人はいない。

「あ~あ。完璧に迷っちゃったなぁ……」

 実家や友達にメールしても困るだろうし……。

「やっぱり、引っ越した初日に当てもなく散歩するなんて無謀だったのかな」

 散策と散歩。同じような意味だけど、やっぱり違う。

 それにしても……

「疲れた……」

 さっきからずっと彷徨っていたもんなぁ。心なしか喉も渇いているような気がするし。

 どこか休憩出来そうな場所は……あ。

「公園だ」

 私が幼い頃に遊んでいた公園に比べると大分小さいけれど、どこか懐かしさを感じて自然に足が向いた。


 公園内に入ると、時間が少し遅いせいか子ども達の姿は見当たらなくひっそりとしていた。


 誰もいない、静かな私だけの空間。


 そんな風に少し優越感に浸りながらベンチに座り、夕焼けに染まる空を見上げる。

 昨日まで暑かったと思っていたけれど、いつの間にか秋になっていたんだな……。

「キレイな空」

 呟きながらふと視線を公園内に移すと、さっきは気付かなかったけれどジャングルジムの上に人影を見つけた。

 あんな所に人?

 子ども……じゃないよね? 何しているんだろう?

 ゆっくりと近付き、その人を見上げる。

 その人、彼は、ケータイを夕焼け空に向けていて、私が後ろから近付いてきたことには全く気付いていないみたいだ。

 空を写メっているのか。話し掛けたらマズイよね。

 でも一体どんな人なんだろうという好奇心から、そっと横へ廻ってみる。


「!!」


 息が、止まった。


 彼の横顔は夕陽に映えて……男の人に対してこういう表現が正しいのかは判らないけれどキレイで……私はただその姿に見惚れてしまった。

 まるで一つの絵画を観ているみたいなその光景に、気付くと私はケータイを取り出し彼に向け……



 チャラーン♪



 写真を撮っていた。

 その音に、彼が私を見下ろす。

 うわ……真正面もかっこいい……って、そうじゃなくてッ!

「あ、あの、すみません!」

 それだけ言って、その場から走り去る。



「……変に、思われたよね?」

 私が彼の立場だったら、見ず知らずの人間が自分の写真を撮っていたら気持ち悪くて嫌だ。それにこれって……

「盗撮。犯罪行為だよね……」

 常識的に考えて、この写真は今すぐ消去するべきだと解っている。

 でも、なかなか削除ボタンが押せなくて……私は画面に映る彼の横顔を見ていた。





 あの一瞬で、私は彼に恋をした―――






良い子も悪い子も普通の子も真似しないで下さい(笑)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ