第二話
そんな勇者管理委員会の中で、カルマの所属する抑制課とは他とは全く別の役割を担う。管理する委員会で、新規勇者の増加を抑制する課。
つまり、本来召喚されるはずの勇者を強制的に解き放って自分たちが勇者召喚に応じる。
勇者召喚がされれば行方不明が数分単位から数年間といったような単位で行われるわけなので、行方不明者が続出しないためにも当然用意されてしかるべき役割だ。
(俺たちが忙しい……勇者がいっぱい……)
「え、それって大丈夫なのか? 元の世界の影響とか、いろいろ」
「だから、駄目だって話してんでしょうが……」
呆れながらもカルマの頭をリリアが叩いた。顎が背もたれにガツン、と当ってカルマは呻き声を上げて椅子から転げ落ちた。
リリアの外見は普通の女子高生だが、勇者業を行っただけのことはある。
「てかさ。なんでそんなに勇者がいっぱいなんだ?」
「……馬鹿が。さっき言っただろうが」
足を組み替えながら、視線を向けることもなくライリが吐き捨てた。
なんだと、と立ち上がったカルマだが、勢い込んで向かう前にカルマの前にお茶が突き出された。
「ほらほら、あつーいお茶ですよ。いりませんか?」
「いらない」
にこにこ。呆れるほど創り笑顔の上手いアララギに即座、否定した。
「そうですか。美味しいのに……」
じゃぁ、捨てちゃいましょうかね。そう言いながらユノミを傾けて緑色の中身を床へと――
「いるから、掛けんな……っ!」
カルマの足元へとぶちまけようとした熱い茶を、そうですか?何て言いながら再びカルマへと差し出すアララギ。言動が本気かどうかの区別がつかない。
(何考えてんだ、こいつ……)
ユノミを手に、椅子に戻るカルマ。その視線は先ほどライリに向けていたのに代わり、アララギへと注がれている。
「こちらに表示したのが今年に入ってから召喚の儀を行ったとされる世界です」
それまでの事を何もなかったかのように、切り出しから本題に入るマリエッタ。存外、天然なところのあるマリエッタだから手元の操作をしていてライリやアララギとの云々を見ていなかったのかもしれない。マリエッタは機械操作が苦手だ。
カルマはそう、マリエッタの様子を素直に受け止めた。