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第一話


「お前……そんな言い方ってないだろ!」

 だが、そんなライリの行動に噛み付くのはカルマ。

 普段から行動ががさつにして短慮な気質のカルマはしかし、以外にもフェミニストだ。老若男女を分けることのない、その性質は本当ならば単純に優しい、といえばよいのだろうがリリアとしてはそう表現するには少々、間違っているような気がしていた。

 とはいえ、誰にでも冷たく容赦ないライリと一部を除いては誰にでも優しく接するカルマは二人一緒にいることで釣り合いが取れているのかもしれない。

「なんっでお前なんかがモテんのか、意味わかんねー!!」

(単にモテたいだけか……)

 はぁ、と呆れ混じりに溜息ついてリリアは頭を抑えた。

「モテんのは顔が良いからよ」

 常識でしょ、なんて言ってみてもカルマが納得するわけもなく。

「なんだよ、そんなの。人間は中身、こいつがオウボーなのリリアだってよく知ってるくせに」

「まぁ、幼馴染だしね……」

 しかし、中身と言ったところでカルマはコートのフードを外さないのでそもそも顔が見えずに得体のしれないという印象まで植え付ける。モテるなどという言葉とは無縁だ。

「なにをやっているのですか」

 冷ややかな言葉がその場に降って来た。

「マリエッタ、状況は」

 鮮明なる水色が過ぎって上げた視線に、彼女の名を紡ごうとしたリリア。けれどそれよりも一足早くライリが尋ねた。

 それに、やって来た人影の内の一方、背の小さい方がコートのフードを外した。

 薄く水色がかった水色零れ落ちて、暑い位の日光に照らされて輝く。

「カルマ、この女性は?」

 ライリの言葉に答えることもなく、マリエッタはカルマに声をかける。女性云々に関してはライリに関与するだろう、ことは既にマリエッタも了解している。その上で、ライリがこの場にいる女性に対し、何の情報も持たないこともわかっている。

 ライリからマリエッタへ、視線が強く注がれたがマリエッタは気にすることもなくカルマの言葉を待った。

「勇者一行の事を聞いて、ライリの後をついてきた地元民」

 ふてくされたような声音で告げ、カルマは顔を背けた。

 カルマもカルマで、マリエッタの言葉に感じる所があったらしい。感情の伺えない声音は常の事だから、責められたと感じたというより、自分でばつが悪くなったのだろう。

 わかりきっていたことだが、その返事を聞いたマリエッタは表情も変えなかった。一瞬、冷血漢という言葉がリリアの脳裏に浮かんだが、それはライリだ。マリエッタはそう――鋭利なのだ。眼鏡をかけているせいできつい印象が出来上がってしまっているともいえる。

「では、町に向かいながら状況の確認をしましょう。――アララギ」

 はい、と言ってもう一人の人物が口を開いた。

 勇者御一行の五人目、アララギ。常に感情の読めない笑みを浮かべる男だ。リリアの手から、突き倒されていた女性を受け取ってエスコートする。その手際の鮮やかさは目を見張るものだ。たいてい、ライリに靡いた女性はこうしてアララギに回収される。今回もつつがなく、アララギにときめいてしまったらしき女性に別れ際の予想までついてしまってリリアはいつも通りだ、と何気なく思った。

 常に無表情のマリエッタと常に笑顔のアララギ。二人がリリアの上司であり、暴君のライリとライリに突っかかるお馬鹿のカルマがリリアの同僚。

(ほんと、仕事環境整ってほしいわー)

 決して色恋沙汰の雰囲気ではないのに出来上がってしまっている、殺伐とした三角関係。ストレスが溜まりつつあるのを自覚しながら、リリアは後についていった。



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