第三話
「おばちゃん、これ何?」
あはは、と笑ってリリアからの追及を避けるアララギとは一方で、カルマは早々に路地から抜け出していた。
ぐりん、と音がしそうなほどにリリアがカルマを振り向いた。
「へー、手伝うよ!」
アララギに注目が集まっている内に、無断行動をなすカルマは原住民に話しかけるという暴挙を行っていた。
「ちょ、カルマ!」
これどこに置けばいい、と呑気に会話しているカルマの首根っこをリリアは掴んだ。
軽く首が絞まったカルマがウゲッと呻き声を漏らす。
「あんたね、何勝手に行動してるのよ! 単独行動禁止っていったい何度言えば……!」
「お嬢ちゃん、怒んないであげなよ」
ほら、駄賃だよと言ってお店のおばさんはカルマの手にこの世界の通過らしきものを載せる。
「んー、俺お金より食べ物欲しいな!」
「カルマ、あんた図々しいにもほどがあるわよ……」
とは言いつつも、リリアは渡された硬貨への観察と、おばさんが店の商品を確認する。
そうかい、と言いながらカルマの手にお金と取り換えに果物のようなものがいくつか置かれた。
「これはおまけだよ。お姉ちゃんと、お兄ちゃんと一緒にね」
そう、見送るオバサンにカルマは手を振った。それから、リリアと共に後ろを振り返る。
「お姉ちゃんと、お兄ちゃん……ね」
お姉ちゃん、というのがリリアのことを指して言っているのは明白だ。そしてもう一人、お兄ちゃんというのは、
「こんな馬鹿が弟なんて反吐が出る」
ライリはそう吐き捨てた。
リリアはカルマがその場で怒るかと思った。フードを被っているので、表情はわからないがむっとした雰囲気は伝わってくる。だが、カルマは反論の言葉を上げるでもなく、先ほどいた路地裏へと入ってゆく。




