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孤児院のお手伝い ②

「え?アンネさん、今日はお出かけですか?」


 僕が、いつも通り孤児院のお手伝いに伺ったら、アンネさんが出てきた。それも、いつも通りの服装(青色のシスター服)だけれど、大きな荷物を持っていた。


「はい。子供達には話してはいるのですが、急に決まりまして。本日は例の討伐に参加することになりました。と言っても、救護のお手伝いなのですけれど」


「そんなに、まずい状況なのですか?」


 僕は、少し心配になる。カータさん達が回復して参加しているとはいっても、状況がどうなっているのか、詳しくわからない。というか、教えてもらえない。内部情報は話せないとか、なんとか。

 レンさんにもそれとなく聞いたけれど。口止めされている、といわれた。


「私も詳しくは聞いておりません。ただ、一日だけ手を貸してほしいと、アルメスさまより言われましたので。なので、申し訳ないのですが、本日はクウキさんお一人で子供たちを見てもらいたいのですが」


「それは、大丈夫ですよ。みんな良い子たちですし、お手伝いもしてくれますから」


 僕一人で面倒見ることは別に構わない。

 ここの子たちは、手のかからない子ばかりだし、年長の子たちもよく小さい子たちの面倒をみている。大変ということは無いだろう。


「では。よろしくお願いします」


 朝の短い時間だったけれど、アンネさんは慌てて迎えに来た馬車に乗っていた。

 そんなに急ぎなのだろうか?

 ちょっとだけ、皆が心配になった。非戦闘員であるアンネさんも、救護とは言え参加しないといけないなんて。本当に、人手がないのか。何か、問題でも起こったのか。


「大丈夫だよ。シスターはお仕事だから」


 とことこと近くまで来て、そう声をかけてくれた。

 どうやら、たまにこういったことがあるみたいだ。みんな、普通にしている。


「朝ごはんの準備できたよー。顔を洗ってきてね!」


 台所からは、そんな元気な声が聞こえてきた。



 朝食を食べ終わって、みんなで片づけを終わらせる。

 今日はシスターが居ないからみんな集まって、「今日すること」を割り振ることになった。


「じゃ!今日はシスターが居ないから、わたしたちだけでお洗濯とお掃除お昼ご飯と、夕ご飯の支度をします!」


 アイゼルちゃんの声で、「はーい!」とみんな元気よく手を挙げて、返事を返す。

 元気がいいな。


「ルトたちは洗濯当番ね。お昼ご飯はわたしたち。お掃除は、フーたち。夕ご飯は」

「あ!お買い物の日だよ!」


 そういって、手を挙げたのはアイラちゃん。アイゼルちゃんより一歳年下といっていたから九歳。この子もしっかりしている。年長であるアイゼルちゃんをよく手伝っている子だ。


「そ、そうだった・・・」


 アイゼルちゃんがどうしようと、おろおろ慌てる。


「お買い物ですよね?買うものは決まってるんですか?」


 僕が「はい」と手を挙げて聞くと、お買い物の日は決まっていて、買うものも決まっている、お金も準備されていると返された。


「でも、お買い物はシスターと一緒じゃないと、いっちゃだめなの・・・」


「そうなんですね。買わないと困るものがありますか?」


 アイラちゃんがちょっと待ってと言って、台所へと向かう。

 今日じゃなくても、シスターが居る時に出かければいい。もし、どうしても必要なものなら、僕が買い出しにいってもいい。


「夕ご飯のおかずと、明日のご飯の材料と、あと古着」


 なるほど、食材の買い出しが主のようだ。これは、「買わないと困るもの」だな。


「材料の詳細はわかりますか?僕が買ってきますよ」


「うん。でも、たくさんあるよ。一人じゃ持てないよ」


 ルトくんがそう言ってきた。この子は、照屋さんだけど優しい子だ。


「手伝ってやるよ!」


 そう胸をはって言ってくるあたり、頼ってほしいのだろうなぁ。


「だめだよ!シスターが言ってたでしょ。勝手に外に行っちゃいけません!って」


「でも、クウキが一緒だぞ。大人が一緒なら大丈夫ってことだろ?なら、大丈夫だ!」


「そう、なの、かな?」


 アイゼルちゃんが困ったように腕を組んで、「どうしよう」と呟た。そうだよな。子供達だけで、外に出て迷子になったら困ってしまうし、きっと、アルメスさんにどやされるだろうなぁ。


「クウキさん、クウキさん」


「はい。何ですか?アイラちゃん」


「クウキさんは、お店知っている?古着屋さん知ってる?」


「あー」


 しまった。どっちも知らない。


「すみません。どっちも、知らないです。この街に来たばかりですし。まだ、あっちこっち見て回ってないですね」


「え?そうなの?」


「はい」


「アイゼルちゃん。私とルトとローゼリアで、買い出しいけないかな?シスターに連れていかれて、道覚えてるの私たちだし。買うものもわかるわ。アイゼルとフーなら、小さい子たちの面倒しばらくみれるよね?どうかな?」


「そうだね。・・・・それが、いいか。うん!そうしよう!みんなそれでいいかな?」


「はーい!」


 元気いっぱい。小さい子たちも手を挙げて、「おねいちゃんのおてつだいする!」と楽しげに言っている。


「じゃあ、まずは洗濯だね!みんなで終わらせれば早いわ!」



 洗濯をみんなで終わらせれば、後は干すだけ。アイゼルちゃんが後は、任せて!と元気よく胸を張っていたから、洗濯物干しは任せることにした。

 僕は、ルトくん、アイラちゃん、ローゼリアちゃんと買い出しへと向かうことになったんだけど。


「ど、どうし、たんですか?」


「これ?ルトは耳と尻尾あるし、ローゼリアは角とか爪が危ないし、私は鱗があるでしょ?だから、隠さないといけないの」


「・・・・・・・そう、なんですね」


 ルトくんは、狼の獣人。ローゼリアちゃんは、小さな紫色の角が三本額にある。アイゼルちゃんは、黒に近い紺色の髪に紺色の鱗が腕や足、首筋から覗いている。

 外見で言えば、人ではない。


 けれど、この子たちは子供で、人の中で生活しないといけない。それが、どれほど、過酷なことか。

 親はどうしたのだろう?

 否。そんなことは、僕には関係がない。

 同情して何になる。


「篭は持ちましたか?」


「はーい!メモもちゃんとあるわ」


 同情はしない。けれど、この子たちの笑顔は守らないといけないものだと、思った。




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