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子守り ①


 日が昇る前に医聖・アルメスさんはあらわれた。昨日と同じ白い服装。汚れひとつ、皺ひとつない。

 交代でカータさんと団長さんの看病をしていた、僕とさぁくすさんが居てよかった。そうじゃなかったら、どんな起こされ方をされたものか。


 とにかくカイサルさんを起こして昨日の話の続きをした。といっても、僕はせーてぃあさんについてカータさん達の看病へと戻ったけれど。

 子守担当としては、孤児院の事を少なからず聞きたかった。でも、討伐隊は今日も森へと行くらしく、話す時間は限られている。

 今日の討伐の事を話したら、すぐにでも出発するだろう。


「早く元気になってくれるといいですね」


 せーてぃあさんが優しくそう言ってくれた。

 彼女も討伐に参加、というよりも、治療班として参加すると言われていたけれど、カータさん達が目覚めるまでいてくれると言ってくれた。

 万が一の事があったとき対処できる人がいた方がいいと、あの医聖に面と向かって言っていたのは凄かった。

 万が一など起こらないと、断言した医聖だけど、気持ちは理解できるとあっさり、せーてぃあさんの言葉を受け入れた。

 横暴な部分ばかりに目がいくけれども、揺るぎない信念がある人だ。

 医者としての信念。

 そんな彼は、信じられる人なのだと思った。


 日が昇り、みなさんは身支度を整えるとすぐに出発して行った。どうも、偉い人と会うらしい。

 王族とかいっていたけれど、アルメスさんは王族と知り合いなのだろうか?

 僕には関係ないため、見送りをして、せーてぃあさんは看護のために残った。御者のコルネスさんも、せーてぃあさんを手伝うために宿に残り、レンさんは討伐に参加させられた。

 そう、参加させられたのだった。初めは、僕と孤児院に行くと言っていたけれど、どうやら医聖に気に入られたのか、連れていかれてしまった。


 レンさんは討伐には行かないと結構強めに反発していたけれど、アルメスさんの強引さにはかなわなかったのか、無理やり引きずられていった。

 かなり不服そうなレンさんに、くれぐれも変なことはするなと念押しされた。

 変なことなんてしたことないのに。


 僕は昨日の道のりを思い出しながら、孤児院へと向かう。

 朝の空気と、朝からの市場は活気があって清々しい。夜の静穏(せいおん)はやはり、魔物への恐怖心からだろう。

 

 孤児院への訪問は具体的な時間は聞かされていなかった。早めに着く分には問題ないだろうと思ってきたけれど、どうやら、朝から問題があったみたいだ。


「おはようございます」


 と言って、訪問を告げるとともに、飛び出してきた女性とぶつかった。

 驚きで体を受け止めたけれども、僕の姿を見て泡を食って駆け出してしまった。何もしてないのに。


 しばらく、走り去った方を見ていたら、奥から、昨日の年配のシスター・アンネさんが出てきた。


「ああ。おはようございます。アルメス様より聞いておりますよ。どうぞ中へ」


「おはようございます。あの、今シスターが飛び出していったんですけど」


 挨拶をしながら、とりあえず中へと入り、先ほどのことを尋ねたら、苦笑いをされた。


「彼女は、ここを出ていくと。今朝方、一方的に告げられて、飛び出して行ってしまったのですよ」


「はぁ。それにしては、手荷物をしっかり持ってましたね」


「ふふ。荷造りして告げたのでしょう。私に引き留められたくなかったのでしょうね。もっとも、告げた直後に、私の言葉も聞かずに飛び出して行ってしまいましが」


「そうでしたか」


 朝からずいぶんと騒がしかったのだろう。シスターの顔には疲労が滲んでいた。


「早速で申し訳ないのですが、朝食のお手伝いをよろしいですか?」


「はい」


昨日の部屋を通りすぎて、さらに奥へと進む。小さな施設だけと掃除は行き届いているのか小ぎれいにされていた。

 進んだ先には、台所があって、食材が籠に積んであった。今日の朝食なのだろう。


「野菜の皮むきをお願いします」


「はい。わかりました」


 大量の芋と人参(おそらく。他の野菜かもしれないが)の皮むきを頼まれる。包丁は好きに使っていいとのことだったので、適当に借りて取り掛かる。

 子供たちの正確な数は知らないけれど、大人数ではないだろう。思ったよりも、食材は少ない。

 僕の傍らでは、シスターが汁物の準備を始めている。けれど、彼女では、桶に入った大量の水を鍋に移し替えるのも一苦労のようだ。見かねて手を貸して、続きをする。


 これでは、女性一人では食事に洗濯、掃除はきついだろう。けれど、医聖もまさか今日シスターが一人減るとは思っていなかっただろう。

 僕が来て正解もしれない。


 全て皮をむいて、均等に切り分ける。それらを鍋へと入れて、調味料で味付け。

 パンは、保存箱から保存されていたものを出して籠に乗せ、飲み物の準備をしていたシスターに声をかけて味をみてもらう。どうやら問題ないようなので、火を少し弱める。

 ここの味付けは、だいたい学でいたのがよかったのだろう。少し驚かれて、「美味しいです」と言ってくれた。


 僕が火を見ている間に、シスターは子供たちを起こしに行った。


 子供達とは初対面だけど、昨日の警戒ぶりからだと挨拶位が無難かな。この施設の子供たちは魔物と人間の血を引いているから、初対面の僕に対してどんな反応をとってくるだろう?

 やっぱり、人と思って警戒するだろうか?


 いろいろ考えていたら、廊下から軽やかな足音が聞こえてきた。


 さて、お皿はいくつ出せばいいかな?




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