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医聖の街 出会い②

お久しぶりです!亀更新で申し訳ないです。。

 あれから、数時間。

 まだ、医聖とは会えていない。夕暮れも近づき、孤児院でも夕飯の支度をはじめている。このまま、夜まで会えない、なんてことになればどうすればいいのだろう?


「もし、夜になっても帰ってこなかったら、ここに居続けることは出来ない、でしょうね」


「でも、宿に帰って朝に出直すとしても、入れ違いになれば意味ないでっしゃろ。一人が残って帰ってきたはりましたら、説得する、のは、きびしいーなぁー」


 そもそも、孤児院の人に迷惑をかけているのだ。これ以上は、子供たちも警戒したままだろうし、シスターたちの仕事も増やすだけになってしまう。

 それに、会えない可能性もあるとはじめに言われているわけだし。


「孤児院の前で待たせてもらったら」


「それはそれで、シスターたちは気を使ってしまうでしょうね」


「やっぱり、いったん帰った方がいいかしら?」


「入れ違いになれば話にならない。出来れば早急に診てもらいたいものだが。ことが、ことだからな・・・」


 堂々巡りだ。

 僕たちとしては、このまま待たせたもらえたら幸いなのだけど。それだと、シスター達にも子供たちにも迷惑になるだろう。けれど、そんな裕著なことは言っていられないのが現状だ。

 門前で待っているのも、怪しい気がするし。そうなると―――


「お手伝いしながら、待てればいいですよね」


 孤児院の迷惑にもならないだろうし、気も使われない。ある程度ならば、居ても問題ない時間まで待たせてもらえたらいいのだろうけど。


「!私、お手伝いしてきます!」


「シー!待ちなさい!いきなり失礼よ!」


 僕の一言でシーが飛び出し、その後をしゃるねすさんが追っていった。あれ?


「考えて、ものいいなはれ」


「ああ言われたら。シーなら飛び出すだろう」


 テッドルさんとカイサルさんが呆れた様に僕を見てきた。何気なくいった言葉にシーが反応するとは思っていなかったんだ。けれど、僕は頭を小さく下げるしかなかった。


「まぁ、しばらくしたら戻ってくるだろ」


 カイサルさんがそう言ってくれたけれど、しばらくしても二人は戻って来ず、テッドルさんが様子を見に行っていた。

 本当に手伝いをしているのだろうか?


「シーとシャルネスが手伝いを買って出て、受け入れられとりました。シスターたちも、もうしばらくなら居てもいいとは言ってくれはりましたが、どないします?」


 どうやら、居てもいいとのことらしい。これには、カイサルさんも苦笑いしていた。僕が発端だとは言っても、本当に手伝っているとは。

 もしかして、人手が足りないのだろうか?子供たちの人数は分からないけれど、女性二人では手が回らないこともあるのかもしれない。


「なら、お言葉に甘えよう。ここ以外に情報がないわけではないが。確率として、この孤児院で待っていた方が一番いいらしいからな」


「どうしてです?」


 確か、医聖は複数の孤児院を持っているとのことだったけれど、ここだけ特別扱いをしているのだろうか?


「・・・この孤児院では、人と魔物の子が引き取られているらしい。いわゆる、半魔と呼ばれる子供たちがここで暮らしているとのことだ」


 複雑そうにカイサルさんはそう言った。

 半魔の子供たち。人であり、人ではない。魔物ではなく、魔物でもある。そんな子供たちが暮らしている孤児院。

 人から差別され。魔物からも軽蔑されてるらしい。

 言われたわけではないけれど、カイサルさんの表情が、テッドルさんの目が、それを物語っていた。


「そうなんですね」


 医聖がここを特別扱いする理由はそこにありそうだ。

 そして、シスターが二人しかいない理由も。彼女たちはどんな気持ちで、その子供たちと接しているのだろう。子供は時として、大人よりも敏感だ。けれども、寄る辺を持たない子供たちであれば、どんな環境だろうと、其処に居ることになる。


「?」


 ふと、気配を感じた。小さな気配。そちらをちらりと見ると、小さな瞳と目が合った。すぐに引っ込んでしまったけれど、子供が寄ってきたのかもしれない。

 小さい子にしてみたら、大きな大人は怖い者のはずだけれど、気になって見に来たのかもしれない。

 微笑ましく思いながらも、これからのことを話し合っている二人の声に耳を傾ける。

 もうすぐ、日が暮れようとしていた。



「お裾分けでいただいてきたわ」


 それは、ここに居る人数で食べるには少ない量だったけど、子供たちとシスターたちの貴重な食事を分けてもらったことには変わりなく、みんなで分けて食べた。

 夕食が終わっても、医聖は帰ってはこなかった。これ以上は、ここに居ることは出来ないだろう。

 シーは動きたくないかもしれないけれど、カータさん達の容態もきっと心配しているはずだ。

 

 しかし、再び議論は堂々巡りになってしまう。

 残るか、戻るか。

 残るとしたならば、最少人数になるだろうし、寝床を用意してもらうのは気が引ける。けれども、ここに居させてもらってもいいものか、シスターたちと交渉しなければいけない。

 果たして、彼女たちの善意に頼りっぱなしでもいいのかという話にもなる。


 そんなとき、車輪の音が聞こえてきた。小さな音で、誰も気づかなかったほど。けれど、徐々に大きくなるにつれて、顔を伏せていたシーが飛び出すように駆け出した。

 もしかしたら、と思ったのかもしれない。


 玄関に行ってみると、孤児院の前に一台の簡易な馬車が止まっていた。そこから、一人の男性が下りてくるところだった。

 白く長い服を着ていた。いつか見た、メアリ―さんに詰め寄っていた男と同じ服装をしている。


「誰だ、貴様ら」


 男がシーの前で腕を組んで、上から詰問を浴びせる。

 でも、そんなことに怯むことなく、シーははっきりと目線を合わせた。


「名医と名高いアルメスさまですか?」


「ふん。名医などというものは、己が名声のために他者を利用している者が用いるもの。俺ではない。うせろ」


 かなり、横暴な性格のようだ。けれど、話をまともに聞かず「うせろ」はないだろう。

 カイサルさんの米神が引きつっているように見えるのは、気のせいだろうか。それに、さっきからしゃるねすさんがレイピアの柄を何度も指でなぞっているけれど。


「助けてください。大切な人が二人、大怪我をしています。その二人をどうか、助けてください。お願いします」


 そういって、シーは勢いよく頭を下げた。何度も、助けてくださいと懇願する。

 僕は、その隣に行って、同じように頭を下げた。僕は何も言うことは無いけれど。シーが全て言ったたから、言うことは一言もないのだけれど。頭を下げて、誠意を見せる。

 すぐに、隣と後ろに気配が続いた。

 カイサルさんも、テッドルさんも、しゃるねすさんも、頭を下げたのだろう。


「・・・・・・・・・・・・・・はぁ。患者はどこだ?」





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