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目的地へと

「だからって、着いてこられても~。・・・どがいしますの?」


「なるようになるだろ」


「えー」


 思いのほか混乱はなかったけれど、みなキメラが一緒の事には難色を示した。

 それはそうだろうなぁ。キメラ退治をしたから、カータさん達は重傷を負い、怪我人も出ている。


「おい。とりあえずお前が言い出したんだから、面倒はお前が見ろよ」


「はい」


 ここで首を振るほど、厚かましくない。水とお肉をあげればいいのかな?


「というか、勝手に狩りをしてきそうですけれど」


 さぁくすさんはそう言っていたけれど、キメラは僕らの側から離れなかった。何か考えでもあるのだろうか。テッドルさんが追い払う仕草をしても尻尾を振るだけだ。尻尾が蛇だから、威嚇してるのかもしれない。


 兎にも角にも、初日から奇妙な同伴者を引き連れることになった。



 キメラと遭遇し、同伴者となってもやることは変わらない。

 

 カータさん達を聖医の下に連れていくこと。

 

 キメラがどうして僕たちと一緒に行こうと考えたのかはまるで分らないが、こちらに危害を加える気がないことはわかった。


 お昼を過ぎて、夕刻近く。


 そろそろ町が見えてきてもいいころだと、テッドルさんが言った通り、小さな宿場町が見えてきた。さてここで問題。まぁ、問題とわざわざ言わなくとも、キメラの同伴者が居る時点で問題だらけなんだけれども。


「おい。どうする?」


「そうですね・・・」


 そっと、僕のほうを見ながら言われてもなぁ。


「今日はこの町で一泊することになるんです。だから、ここから離れた森の中で、あなたも一晩明かしてもらえ居ませんか?」


 そう、お願いしてみる。

 すると、キメラは蛇の尻尾をゆらりと蠢かせて、素直に森の中へと向かっていった。

 うん。大変素直。それに、これで完全にこちらが言っていることが理解できていることが分かった。


「利口ですね」


「それは、それで危険だと思うんだけれど」


 しゃるねすさんがそう一言呟くのが聞こえた。

 不安そうとうよりも、僕に対して多分に呆れを含んだ声音だっだ。ここは聞かなかったことにしよう。


 町で一晩明かし、朝日が昇ったところで支度をする。

 カータさん達も馬車から移動させ、宿の一室で休んでもらった。移動で彼らの体力が著しく低下していると、看護師のせーてぃあさんの説明もあってのことだ。


 怪我の回復を優先するあまり、意識を長時間保つことができないことと、満足に食事ができないから、体力的にも底をつきかけているとのことだった。

 あまり、悠長にしていられないけれど、急ぎすぎても身体に負担がかかって危険だ。


 そこら辺は、専門家である看護師の意見を聞きながら進んでいく。

 御者であるコルネスさんによると、天気の崩れは心配いらないとのこと。長年、冒険者や行商人の旅路を助けているだけあって、ある程度の天候を読めるとのことだった。

 けれども、何事にも油断は禁物。天気が崩れればその分足を止められるし、雨に当たれば僕たちも体力を消耗してしまう。


 不測の事態に備えて、万全を期すようにするしかない。


 なので、カータさん達の体調を見ながら、移動はなるべくゆっくりでもいいが距離はできるだけ稼ぎたいのだ。

 稼ぎたいのだけど。


「ここに来て、これですかい」


 僕たちは今、足止めを食っていた。


「ほんと、こういう時に勘弁してほしいぜ」


 目の前には、盗賊のなれの果て。数名こと切れて転がっているが、別にそこは問題じゃない。

 問題なのは、盗賊たちが射った矢が、一頭の馬に当たり怪我を負ったことだ。

 つまり、カータさん達を運ぶための馬車を動かせなくなったこと。


 馬は二頭いるが、その一頭が馬車を引けなくなってしまった。代わりの馬なんて、街道に落ちているわけもなく、僕たちは足を止めざる負えなくなっている。


「仕方ない、誰か一人先に行って、馬を一頭買い付けてくるしかねーだろうな」


「・・・・・そうするしかないか」


 時間がかかりすぎる。

 みんな思っていることだろうけど、こればかりは焦っても仕方がない。


「ほんじゃ、誰がいきますぅ?わしとしては、シェアが適任かと思うんやけど」


「僕?」


「身軽やし、馬の買い付けぐらい口八丁でいけるやろ?」


「口八丁は酷いなぁ。別にいいけれど。それでいい?カイサルさん」


「おう」


 カイサルさんが了承したので、しぇあさんが行くことになった。そこで、食料と水をとなったところで、


――GAU


 と、声を上げる一匹、いや、一頭?一体?

 まぁ、キメラなんだけど。

 何か言いたそうに、僕のことを見てくる。けれど、そこに込められたものを察することは出来ない。動物の言葉がわかるわけじゃないんだけれど、どうも彼、彼女かな? は僕に視線を向けくる。


「どうしました?」


 そう、声をかけてみるけれど、もう一度吠えられた。

 そして、馬車の方へと顔を向け、僕へと視線を戻す。それを、何度が繰り返してくるから、


「もしかして、馬車を引いてくれるんですか?」


 そう、問いかけると。


――GAU!


 と、元気よく返事が返ってきた。


「えー、と?」


 僕、いや、僕らとしては願ってもないことだけれど、僕一人の判断では決められない。だから、カイサルさんの方へと顔を向ける。


 僕とキメラのやり取りを見ていたんだろ、困ったような、困惑したような顔をして、カイサルさんはキメラを見ていた。

 ちらりと、となりのさぁくすさんへと視線を移すと、仮面をつけているから表情は読めないけれど、目で「ああ、またか」といった僕に対する諦めの感情が覗いていた。


 おかしいな、僕は何もしてないんだけど。


 でも、これで時間を割くことなく、移動を続けることができるのは僥倖だ。



「だいぶ、進みましたなぁ」


 そう、テットルさんが僕を見ながら言ってきた。そうですね、と返しておいたが、何がおかしいのかにやにや笑って肩をバシバシ叩かれた。

 妙に機嫌がいいのはどうしてだろう?


 それに、カイサルさんやしぇあさん、看護師のせーてぃあさんに、御者のコルネスさんも僕に対して、生暖かい目線を送ってくる。

 おかしい、変なことはしていないのに。


「君は、不思議な人だね」


 そう、しぇあさんが言ってきた。僕は、あいまいに頷くしかなかったけれど、この世界の人から見たら、やっぱりどこかまだ不自然なんだろうか?


 けれど、順調に進んだおかげで、もうすぐで、目的地に着くそうだ。途中、町や村を通り過ぎることがあったが、その時は、一度キメラには離れてもらい、馬一頭で何とか馬車をひいて町に入った。町を出たところで、キメラに再度馬車を引いてもらうの繰り返しで、何とかやってこれたのだけど。

 ここらへんで、キメラとは別れた方がいいと意見が出てきたけれど、馬が居ないことには、目的の街まで進むことができない。

 通ってきた町で馬を買おうとしても、買い手がすでにいたり、買い取られた後だったりした。

 その理由を聞いたら、


「この先にある、ファルベットからぎょうさん買い手がくるんよ~。それに、贔屓にしているところも、どういうわけか、仕入れを上げてきよった。いやー。儲け儲け!」


 とのことだった。

 テッドルさんの同郷の人だということで、すんなりと教えてもらえた。


 ファルベットは、僕たちが目指す街。

 馬を大量に買いつける理由が何なのか、詳しくはわからなかったけれど。もしかしたら、大きな戦いでもあるのかもしれない、とのことだった。


 ちなみに、小さな町にあった冒険者ギルドで聞いてもわからなかった(カイサルさんの素性を明かすとみんな素直に話した)。


「ごたごたがないと良いんだけれど」


 そう、しゃるねすさんが呟いたのが印象に残っている。

 ごたごたがない。

 そうであれば、医者である医聖もきっと、真っ先に診てくるだろう。けれど、もし、ごたごたがあれば、それも怪しくなる。


 権力に屈しない人のようだけれど、あったことも、話したこともない人を判断できない。それに、噂は噂でしかない。

 けれど、歩みを止めるわけにもいかず。


 確かに言えることは、向かう先に、カータさん達を救ってくれる人が確実にいることだ。

 



お久しぶりです!亀更新、申し訳ないです。。。この作品を、少しでも面白いと思って待っていてくれる方、これからもよろしくお願いします!

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