閑話休題 ④
久しぶりの空鬼と絶鬼のお話です。ちょこっと登場している、料理好きな友人が出てきます。彼ら三人のお話です!
とある秋晴れの麗らかな午後。
すでに、昼食を済ませた時間帯。とある村に行くまでの道に一軒の飯処があった。
一軒家の作りで、多くの人でにぎわうこともない、平凡な飯処だ。
街道にちょこんと、まるで休憩処のように立っている店は繁盛しているようには見えない。しかし、ここ界隈を通る商人や飛脚たちはいい骨休めの場所としてよく利用している店でもある。
何故なら、飯がうまい。
これに尽きる。
小さな店に反して、出てくる飯はすべて美味しい。しかも、品書きは一切なく、客の要望をすべて聞いてくれる。金も高くない。食べたいものが決まらなければ、「おすすめ一つ」と言えば間違えない。
そんな、奇特な店である。
その店は、一人のまだ若い青年が切り盛りしていた。
少し癖のある短髪に、人の好さそうな笑みを浮かべて料理をする姿は実に楽しそうだ。しかし、何を隠そう、彼は【鬼】である。
人の姿をとり、人へ料理をだしている一風変わった鬼族。
元来、鬼族は一族で生活をし、行動している。単体で人里へ降りることはめったになく。いたとしても人に興味・関心を抱かない。そんな特性を持っている鬼族が一人、飯処を開き、人間相手に商売をしている。
それも、料理を振る舞っている。
仕入れから、料理、配膳に、客への気配り。どれ一つとっても、鬼がそんなことをして金を稼いで生活しているなど、人間には想像もつかないだろう。
たとえ、誰かが、そいつは鬼だ!鬼族だ!と声を上げたところで、十人が十人信じない。
鬼とは、人の願いを叶えその代償として、大切なものを奪い去る。
鬼に関わった人間は、一人残らず不幸になる。
鬼は、人を騙し、人の肉を食らう化け物だ。
そんな噂が絶えず聞こえてくる種族だ。まぁ、噂の大半は根も葉もないものなのだが。そう噂されてもおかしくないことを、鬼族は現実にしているのだ。
そんな、鬼族の青年が営んでいる飯処に、昼を過ぎ、客がいなくなった時分にふらりと二人の旅人がやってきた。
「ごめんよ。やってるかい?」
「ああ。やってるよ」
ふらりとやってきた男二人に、快く答えて、よく冷えた水を渡す。慣れたように、礼を言って受け取った水を飲み干す二人組。
一人は短髪で、目尻が下がり、へらりと笑っている。
一人は長髪を頭の高いところでくくり、勝気そうな表情をのぞかせる。
旅装束をまとい、一休みのために立ち寄ったといった体。
そんな二人の前に、ことりと漬物が入った小鉢を置く飯処の亭主である青年。
「久しぶりじゃないか。まだ死んでいないようで安心したよ」
そう言って、同じ卓に腰掛ける。
目の前の男二人組は、寛いぐために荷物を降ろし、服装を緩める。
「ああ。死ぬほどのことはしていないからなぁ」
長髪で勝気そうな顔をしている青年・絶鬼がからりと笑いながら答える。その横で、へらりと笑いながら、空鬼が話す。
「疝鬼は、繁盛しているようでなによりです」
ため口ではない口調に相変わらずだと呟いて、緑鬼・疝鬼は苦笑いを零した。
「う~ん。繁盛していると言ってもらえるほど、稼げていないよ。私なんかより、空鬼と絶鬼のほうが稼いでいるんじゃないかい?」
「そんなことねーよ。金が有ったり無かったりだ。それに、この間は無一文になっちまったしなぁ」
そのために、一時期盗賊をしていたことを思い出す。あれはあれで面白かった。路銀が底をつくことはままあれど、その時は盗賊業ではなく市井に出て稼いぐことが普通だ。
盗賊のようなならず者になって懸賞金でもかけられれば、面倒な目に合う。そのため、盗賊紛いの真似事はあれ以来一度としてやっていない二人だ。
「それは一大事だ。私に金はないよ」
「借りたりしませんよ。すでに、稼ぎ終えてますしね」
何でもないことのように話す空鬼。稼げていなかったところで、友人に金の無心をするような連中ではないことは、疝鬼がよく知っている。だからこそ、おどけたように言えるというものだ。
「それならば、よかった。ああ。ちょうど食べごろのイワナが獲れたんだ。食べてみるかい?」
「うまそうだな!」
「是非」
二人がそう答えたのを聞いて、疝鬼は調理場へと入っていった。
☀
赤鬼・空鬼、青鬼・絶鬼。
最近名が売れ出した二人の鬼だ。
赤鬼と青鬼の珍しい色の組み合わせに、一人は凄腕の剣術士、一人は頭脳明晰の策士などと噂されている。また、彼ら二人が戦場に現れたなら戦局がひっくり返るとも囁かれるほどだ。
もっとも、二人ともまだ新米の域を出ておらず、噂話ばかりが先行している状態だ。
しかし、使えるものはなんでも使う二人のこと。この噂話をもって、有力者たちに売り込みに行く途中で寄ったのだろうと、緑鬼・疝鬼は思う。
貪欲に勝利を狙い、どんな局面においてもまず自分たちの命を最優先にする。契約内容が破綻しないように自分たちが有利なように誘導し、時には人よりも狡猾に振り舞うことができる。
一族で徒党を組んでいる鬼族たちではこうはいかない。
良くも悪くも、通常の鬼族は人に関心がないからこそ、人との契約に緩さが混ざる。そうなれば、契約が遂行したにも関わらず、思った通りの代償を得られない場合や、そもそも対価をもらえない場合も出てくる。
もっとも、頻繁にそんなことをしていれば鬼からの信頼を失うばかりか、敵国に一族こぞって引っ越され滅ぼされてしまうから、契約不履行を頻繁にはできないが。
それでも、人は欲が深く、不義理であり、他人を生贄として差し出す者もいる。
他の鬼であれば納得することもある「替えの代償」も、通用しない。空鬼と絶鬼は徹底して自分たちの望みの対価、代償を得ることに固執している。そんな二人だからこそ、契約はきっちりと遂行する。それが、噂話を盛っているのだろう。
―――どんな契約でも、必ず完遂する二人組みの鬼族がいる
と。
そんな二人の友人にして、恩人でもあるのが―――
「ところで、このイワナを獲った川に河童がいたんだけど」
緑鬼・疝鬼。
緑鬼の特徴は、あらゆる薬物・毒物に精通していること。
毒を操る鬼族。
他色族からも恐れられている能力だ。最も薬草への造詣が深く、良薬や毒薬を調合することに長たけているのだ。
毒を広範囲にまき散らされれば、解毒薬を持たない敵軍は一たまりもない。ゆえに、彼らと戦う時は必ず川下・川上を見極め、風の流れを読めなければ、一軍丸ごと殲滅される恐れがある。
そんな、恐ろしい緑鬼である疝鬼の料理を目の前にして目を輝かせる空鬼と絶鬼。
毒を自在に操れるほどの知識を持っている疝鬼の料理は、絶品であると二人は知っている。
「河童? そんなん、どこでもいるだろう。うっまそう!」
「美味しそうです」
イワナの塩焼きに白飯、茸の吸い物、小鉢に入った漬物。簡素な料理だが、身が詰まったイワナが一尾あるだけで花がある。
「「いただきます」」
二人そろって、手を合わせ箸をとる。
「召し上がれ」
それを見て、笑みをこぼしながら、疝鬼は自分の癖のある髪の毛の先に触れる。
「確かに河童はどこにでもいるけど、人の子と相撲をして負ける河童はそう居ないと思わないか?」
「うまっ!すっげ!うま!」
「美味しいですね!こんな美味しい食事は久しぶりです! それは河童じゃないんじゃないですか?」
絶品のイワナを堪能する絶鬼。
味わって食べながらも律儀に返事を返す空鬼。
「ありがとう。いいや。河童だよ。あれは、河童だ。人の姿をとっていたけれど、断言できる」
「すっげー!イワナってこんなうまかったか!?」
絶鬼が料理に感動の声を上げ、口の中一杯に白飯とイワナをかき込む傍らで、空鬼はゆっくりと食べ進める。
「どうしてまた、そう思うんですか?」
「負けた子に【河童の妙薬】を渡してたから、かなぁ」
「・・・それは、また、なんとも」
ゆっくりと箸を進めながら、首をかしげる空鬼。
【河童の妙薬】とは、読んで字の通り河童が作った薬のことだ。効能としては、打身や切り傷によく効くことだろう。
「だろ?賭けでもしていたのか、負けてすごすごと出していたよ。まぁ、別にね。子供同士のこどだし。そんなこともあるのかと思って、一日目は見過ごしたんだよ」
「一日目?」
「そう。その河童の子、三日続けて負けて薬を渡してたんだ」
「・・・河童の子ではないのでは? 狸か狐が化けて遊んでいたのかもしれませんよ。いい加減うるせー」
ばしりと、隣にいた青鬼の頭を殴りつける。
言葉遣いが乱れ、垂れ目がちだった目は怒りで少し吊り上がっている。その形相を見て、絶鬼は静かにお茶をすすった。
「うーん。私もさすがに二日目で疑って、後を着けたんだよ。そしたら、川へ入って、ぽん!と変化を解いて河童になったんだ」
「そうなりゃー。もう、河童だろ。何故が相撲で人間に負けてしまう河童」
一人うるさく食べていても、きちんと話は聞いていたのか、絶鬼が口を挟む。
河童は怪力で知られている妖怪だ。もっとも、人と妖怪では持っている力が違うため、大概は妖怪に軍配があがる。それが例え、妖怪が子供で人間が大人でも負けるわけがないだ。
それなのに、人に負けたと疝鬼は話す。
妖怪が人間に負けたのだ、と。
「正確には、何故か人の子に負けてしまう、河童の子だよ。どう思う?」
絶鬼の言葉を修正し、疝鬼は二人に問いかける。
「どうも何も」「ただ、弱いだけじゃね?」
身も蓋もない返答。
空鬼は相も変わらず、ゆっくりと箸を進めている。目尻がへにゃりと垂れているところを見るに、ゆっくり食べて美味しい食事を堪能したいからだろう。
「人の子に三日とも負け続けるほど?」
疝鬼の再三の問いかけに、二人はしばし考える。
考えはするが、答えなど知っているわけでもなければ、そんなことをする理由も思い至らない。互いにちらりと目を合わせる。
「一日目は気まぐれで負けたとしても二日、三日と続けて負けて、しかも薬まで渡してるってことですよね?」
「う~ん。弱いっていうよりも、わざと負けているって考えたほうがしっくりくるな」
二人の見解を聞いて、疝鬼は腕を組む。
「それは、どうだろう。見ていたけれど、三日とも真剣そのものだったよ。だから脅されているのか?と、思ったんだけど」
「脅されていても、薬を渡すように言えば済むと思いますが。相撲をする意味はない気がします」
「大人に脅されているとか」
「干からびらせて見世物にした方が、お金が稼げそうな気がします」
「お前、エグイこと言うのな」
「なら、絶鬼はどう考えるんだ?」
さすがに空鬼の一言は問題だったのだろ、絶鬼が呆れた様に言い返す。空鬼も自分の一言は問題があったと認めたのか、絶鬼に話を振った。
空鬼は物事の深い処を考える事に、自分の性格が向かないことはよく知っているのだ。その点、絶鬼は物事を多方面から見て判断をできる広い視野を持っている。
「俺ならー、そうだな。大人は周りにいなかったんだよな?」
「うん。子供たちだけだった」
「その子は常に一人だったか?話しかけるやつとかいたか?」
「そうだね。何人かに心配そうに話しかけられてはいたなぁ。二人の女の子に、手当されていたっけ」
「相撲する相手は決まってんのか?」
「ああ。確か巳之助っていうここら辺のガキ大将だ。その子以外とは相撲していないね」
「なら決まりだな」
「何が?」
ひとつ、得意そうに頷いた絶鬼にすかさず空鬼が追及する。
「いいか。子供っつっても女の子にモテたいっつー男心がもうその年には芽生えているもんだ。河童の子は二人いた女の子のどっちかが好きで、ガキ大将は好きな子が河童の子を手当てしているのが気に入らねーってんで、勝負を挑んでは薬を巻き上げている」
「筋は、通っているの、かな?」
と、首をかしげる空鬼。
「どうだろ、なくはない気がするけれど。じゃあ、河童の子はわざと負けてるってことか?好きな子の前で勝ちたくはないのか?」
と、腕を組んで唸る疝鬼。
「勝ったら手当てしてもらえないばかりか、ガキ大将の手当てを女の子たちがすることになるだろ?それが嫌なんだな!」
「そんな、複雑に考えるかな?」
子供なんだぞ?と空鬼が言うと、なら普通に考えたら辻褄がか合わないだろ、と返される。
「まあ、普通に考えたら負けること自体が有り得ない事なんだけどね」
疝鬼の言葉に、二人は頷く。
「でも、気になるよなぁ」
そんな、疝鬼の一言に――別に急ぐ用事もなし。少し、その河童の子を見に行ってみようと話が纏まった。
☀
昼飯時を過ぎ、大人たちは休憩を経てすでに畑へと仕事に出ている。子供たちは、親のいない間に遊びつくそうと家の外へと出ていた。
そこには、仲の良い子と遊ぶもの、話をするもの、嫌いな相手と喧嘩をするもの様々な子供たちが居た。
大人たちが見える場所、でも子供たちだけで遊べる場所。そういった、広場だ。
疝鬼と共に広場に訪れたが、そこには数人の子供たちが集まっているが、件の河童の子はいないという。
ガキ大将の巳之助も、姿が見えないとのことだったから、まだ来ていないのだろう。昼過ぎに大の大人がうろうろとしているのは、恰好がつかないが、やることもない。
夕食の仕込みはすでに済ませてあるとのことだったから、ここらで自分たちも休むか、となった。だが、絶鬼が河童の子が住んでいる川を見てみたいと言い出した。
「もしかしたら、子供なりに事情というものがあるのかもしれない」
とか、なんとか。口が達者な絶鬼について二人も別に構わないかと思い、川へと出向くことにした。もしかしたら、食べごろのイワナでも獲ろうと思ったのかもしれない。
「この川か?」
絶鬼が川面をのぞき込む。
「ああ。私が見たのはここだよ」
「ふ~ん。深いな」
絶鬼が言う通り、川の下まで見ることができない。多少濁っているのもあるが、おそらく河童たちが自分たちの住みやすいように妖力を使って見えなくしているのだろう。
三人はしばらく話しながら河川敷を散策をする。もし、河童の気配があれば空鬼がすぐさま気づく。
「河童の子ってことは、親がいるんだよな。薬は親からもらっているのかな?」
空鬼がフと疑問に思ったことを話す。
【河童の妙薬】は、簡単に人の手に渡っていい薬ではない。悪用はされないだろうが、本来ならば自分たちで使うために作っているのだから、もし、河童の子が無断で持ち出しているのならば、見つかるはずだ。
「さぁ。妙薬の作り方なんてものは知らねーからなぁ。子供でも作れる薬だったら、三日連続で渡すこともできるんじゃないのか」
絶鬼の返答に、空鬼がさらに言い募る。
「それにしては、親は気づきそうなものだけど。子供が怪我をして帰ってくるわけだし」
「そうだよな。そしたら、行くなと言われるわけだ」
もっともだと、頷きながら絶鬼も空鬼の言葉に親はどうしてるんだ?とつぶやく。水面下でいったいどんな生活を送っているのか知らないが、自分の子供が怪我をこさえて帰ってくるのだ。親ならば、気づいて当然だろう。
「う~ん。親がいないとか?」
疝鬼がポツリと零す。
親が気づかない。ならば、親がいないのでは?そう思ったのだろう。
「・・・さぁ」
しかし、空鬼の返答はそっけなかった。そこへ、ポンと手を叩いて絶鬼が仕切りなおす。
「ま!何はともあれ。河童の子を見てみればわかるもんもあるかもだぜ」
散策がてら川に入らないか? と絶鬼は誘うが、河童につかまれれば水中で勝ち目はないと話す空鬼。河童と知り合いになれば、魚がただで手に入るだろうか?と真剣に検討する疝鬼だった。
そんなことをしているうちに、夕暮れが近づいてくる。もう一度、子供たちのところに行こうと話し、戻っていくと。
「お?あれって」
「ちょうどいい。河童の子じゃないか」
前方に、川から上がってきた河童がいた。小さい体躯に、大きな甲羅、全体的に薄緑色の体色をしている。三人はすでに木立に隠れていた。素早い大人だ。
河童の子はきょろきょろとあたりを警戒している様子だ。上がる前に人が居ないか確認をしていないところを見ると、大人たちに街へと連れていかれたことはまだないらしい。
通常だと、人の前に行くときは大人同伴が基本だ。子供は、その時に教えらえること(川面から出るときはまず確認をしてから、変化は近くの林や藪に入ってから等)をまだ知らないのだろう。その所作として、まず人になる前に川から上がってきているし、何より、陸上の丸見えの場所で人へと変化をした。
ぽん!
と、陽気な音を立てて、河童の子は人の子へと姿を変えた。変化はうまいのだろう。水かきも、皿もすべて隠されている。
人になった手で、すべすべと自分の体を確認する。最後に、川のほうへ顔を向けて頭を下げた。やはり、親には内緒で出てきているのだろう。
「さてと、詳細拝見ってな」
子供たちのところへ行くだろうと思って、河童の子の後をついていく三人。そんな三人組に尾行されているとも知らず、河童の子はずんずんと歩いていく。だが、どうも行き先が違うようだ。
広場への道からは少し反れ、藪の中へと分け入っていった。
「どこに行くんだろ?」
河童の子の後を気づかれることなくついていく。体躯は小さく、藪の奥に入られれば小さな体は隠され追いにくいが、こっちには空鬼がいる。空鬼を先頭になんなく後を追いかけていった。
「もう一人いるようです」
空鬼は二人に声をかけて、追いかける速さを落とす。衣擦れや呼吸の音などが森に吸い込まれる中で、子供特有の甲高い声が聞こえてきた。
「おう。ちゃんときたな!」
「ちゃんと来るよ。それより、親には怪しまれてないだろうな?」
「だいじょうぶだ!」
舌足らずな高い声に、少し落ち着いた声が「ならよかった」と答える。同じ子供のようだが、年は違うらしい。
「それにしても、本当にいいのか?」
「だいじょうぶだ!もし、ばれてもちゃんと言いわけもできるし」
「言い訳するようなことをさせて、悪い」
「別にいいって。おれたち、ともだちだろ!」
「・・・叱られるようなことになったら、俺も一緒に謝ってやる」
そう話すのは、ガキ大将の巳之助。舌足らずな声で元気よく答えてるのは河童の子だ。
どういうことだ?と大人三人は顔を合わせる。
「そんなこときにするな!おれがしたくてしてるんだから」
「そうか。お前は小さいのに偉いな水栴」
「ちいさいっていうな!おれはお前よりもトシウエなんだぞ!」
「そうだった。でも、お前小さいし」
「ちいさくてもトシウエだ!」
元気良く反論する河童の子「水栴」。それを、笑いながらからかっている巳之助。どうやら、二人は友達らしく、仲がいいらしい。
それなのに、相撲をとり、水栴を負かして【河童の妙薬】を巻き上げている。
これは、いったいどんな訳があるんだ?
と大人たちは、頭をひねった。
長いので、二部に分けます。もう少し、お付き合いください。




