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剣の稽古 ー青鬼の準備ー

お待たせしました。久しぶりの更新です。これからもがんばります。

 今日からカータさんに剣の稽古をつけてもらえるようになった。ようやくな気がする。場所は、武器屋のぶろっとるさんのお店がある隣。

 僕とカータさんが手合わせをした空き地だ。


 昨日のキメラ探しは、みどれす?さんに引き継いでもらうそうだ。どんな人なのかあったことはないけれど、どうやら魔法で遠いものを見聞きすることができるのだそうだ。でも、自由に見れるわけじゃなくて、目印を付けて建物や生き物、場所を見ることができるのだとか。


 よく分からなかったけど。

 昨日見つけたキメラの巣の近くに目印を刻んでいるから、見張ってもらってるってことらしい。


 便利なのか、どうなのか分からない。


 だから、今日は丸一日時間が空いたから、こうして相手をしてもらっている。でも、カータさんは誰かに教えることが苦手みたいで、僕がひとしきり切り込んでいる。切り込みながら、カータさんの動きを観察する。動き方を見る。呼吸の仕方、足の運び、腕の捻り、剣の軌道。どこにどう剣を置くのか、切りかかってくるのか。

 体で覚えろとのことだった。


 はっきり、言って荒業だ。


 まぁ、師匠の時も同じような稽古の仕方だからついていける。けど――――


「おせー」


 剣の重さに振り回される。小回りが利かない。

 力で強引に(ふる)うことはできるけど、それでは動きは単調になるし、何より威力がないから意味がない。


「力が入ってない」


 そういうけれど。これでも力を籠めている。これ以上は剣が壊れてしまう。

 でも、カータさんは力を入れてきちんと操っている。どうしたらいい?どうしたら振り回されることなく動ける?


 動きを見て、剣筋を捉えて、呼吸を乱さずに。


 見て、視て、観る。

 よく見れば、癖まで分かる。剣筋は絶妙、無駄に力まずに、腕や腰の捻りを利用する。刀を使う要領とは別。でも、よくよく見て考えれば似ている。そこまで違いはない。剣と刀。同じ刃物なら、同じ用途なら。大丈夫、難しく考えずに。見て覚える。



 今日一日時間が空いたから、空鬼に剣の稽古をつけることになった。別に、伸ばしてたわけじゃないがタイミングがなかなか無かったというか、なんというか。

 そのことは、別にあいつは気にしてないみたいだけど。でも、いざ教えようとしたら、俺は誰かに剣を教えたことがなかった。


 俺の剣の師は父親だ。


 空鬼と同じで親父から手ほどきを受けた。親父は冒険者だった。でも、そこまで有名でもない。けれど、俺にとっては尊敬できる親父だ。

 だから、その時のことを参考にさせてもらう。


 でも、早まったかもしれないと思った。

 

 だって、俺と同じよいうに空鬼がついてこれるかっていったら、分からない。はっきりいって、親父の事は尊敬しているけど、師匠としては、教える指導者としてはうまいとは言えなかった。

 言葉で教えてもらったことはないし、もう、ぶつかって覚えるしかなかったからな。

 この教え方だと駄目かもしれないと思ったのは、幾度も剣を合わせた後だった。空鬼自身はめげずに幾度も剣を向けてきたが、上達してるようには見えなかった。

 それを3時間も続ければさすがに、疲れてくる。


 でも、驚いたことに、空鬼は弱音ひとつ吐かずに3時間俺についてきた。

 こいつは剣の扱いは素人丸出しだが、体力は常人以上にあるのだろう。オニ族というのを差し引いても。やっぱり、こいつは普通じゃない。普通の一般人じゃない。

 剣での殺し合いを。

 殺伐とした闘争を知っている。


 さて、それをこいつに聞いても素直に話してくれるのかが問題だが。

 いや。話さないだろうな。話すチャンスはいくらでもあった。サァクスが素性を聞いたときに、話すことはできたはずなんだから。

 はぁー。俺たちはまだ信頼されていないってことだろうな。

 警戒心はないのに、用心はあるのだろう。


 ああ。そろそろ休憩を入れるか。

 俺がしんどくなってきた。


☀☀☀


 師匠と話を終えて。俺は、準備のために己の部屋へと行く。


 空鬼を攫った何者かは、本当に師匠が思っているような理由で攫ったのだろうか?それなら、いくらなんでも無謀すぎる。

 あいつが、簡単に人の言いなりになるはずがない。


 だって、空鬼は人を信用する(・・・・・・・・・)ことは絶対にないし(・・・・・・・・・)人への敵愾心は相当だ(・・・・・・・・・・)


 人の言葉だってまともに聞かない。

 最近ようやくましになった。そうじゃないと、村の子供たちと遊ぶなんてできないし。

 でも、本当にようやく、なんだよなぁ。


 それでもやっぱり、あいつが人に対する態度はどこか線を引いている。普通の、あんな良い村の人々に対してもまだそうあるんだから、敵の言葉なんて・・・。

 あいつは、敵陣の人間の言葉なんて雑音程度にしか捕えてない。耳に入ったとしても、意味の体をなさないし、言葉を理解しようなんて思いもしない。

 そんな空鬼を攫って、言いなりにさせようとしても無意味だ。

 あいつの事だから、例え拷問されても、目も合わせないだろうし、言葉を返すこともないだろうな。


 だから、時間がない。


 空鬼に時間はあまりない。

 敵にとって操り難い者は必要ない。そうなれば、殺されるだけだ。

 そんなことは、させない。絶対にさせない。

 空鬼が変な気を起こす前に。攫った奴らが、空鬼を殺す前に。見つけ出さないといけない。


 大丈夫。大丈夫だ。


「ふー。落ち着け俺」


 空鬼は殺させない。俺が助けるんだ。

 あいつが俺を救ってくれた。だから今度は俺が、空鬼を助ける。


☀☀☀






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