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作戦会議は夕食の後で?

本編です。今回は短いです。

 作戦会議をするために僕たちはギルドへ戻ってきていた。

 でも、時間は夕刻。一日中森を歩いていたからお腹がすいてしまった。今なら、あの油ギトギトの肉が挟まったパンでも食べられる。いや、食べたくないけど。食べようと思えば多分食べられる。そんな心境。


「ここら辺で、出前でもとりまひょか。みなさん何食べたい?」


 テッドルさんがそう言って、皆を順々に見る。


「肉で」「肉だな」「食べられればいいですよ」


「女性陣は?」


「お腹すいてるからなんでもいい~」「私も何でもいいわよ」


 そんな答でテッドルさんも何を頼もうかと腕を組んで悩みだした。そこで、僕は――


「なら『れっど・ふぁんきー』のお店お勧めですよ」


 ギルドにほど近い所にある、でるすさんの居酒屋の名前を出した。



「へい。お待ちどーさま!!デキたてほやほやですぜ!」


 そういって入って来たのはでるすさん。でるすさんの腕も上達してきたし、今では普通に食べられるものを作っている。

 何より料理人としては腕は確かだったようで、僕よりもおいしい料理方法を次々試している。いや、僕が料理についてあまり知らないから、僕よりも料理方法を知っていて当然なんだろうけど。


 前が酷かったから、なおさらそう思うのかもなぁ。


 一度食べさせてもらったけど、もう二度とはごめんだ。

 油ギトギトの肉よりも酷かった。美味しい、不味いの領域じゃない。あれは、痛かった。本当に痛かった。あの時、痛い味があるなんて初めて知った・・・。初めての経験だったなぁ。


 そんなこんなんで、料理を教えるようになったけど、この料理を他の誰かにも食べてほしいし、評価してほしい。この間来た黒い男の人しか訪れてないし。

 あの後もあの人一人だけ食べに来てくれる。周りに言ってくれればいいんだけど、言っても多分他の人が信じない可能性があるから、こういった所で食べて話を広げてもらえればと思う。


 そういう思いもあって、名前を出したけど。


 嬉々として料理を並べる、でるすさんの手元を他の人たちは驚いたように見ている。

 なんで?

 見た目は食べたことがない料理だって、シーやしゃるねすさんも言っていたけど、そんなにおかしいかな?


「ねえ。どういった料理なの?見たことないけど。野菜?」


 しえあさんが出された食事を凝視しながら、質問してきた。

 ああ。野菜か。野菜ってあんまり食べないんだっけ。体に悪そう。


「へい。美味しいですよ。まぁ、食べてみてください。ああ、食べるときはコレをかけてください。味が増しますから」


「野菜に味?」


「まぁまぁ。食べましょう。見た目は見たことないでしょうけど美味しいのよ。私とシーが保証するわ」


「そうそう。本当に美味しいんです!」


 カータさんたちは不思議そうに見ている。しゃるねすさんとシーは、味についてはもう知っているからいつも通りだ。


「じゃあ」「ほいじゃ」「だな」「では」


「まだまだあるんで、遠慮しないで食べてください」


「そんなに頼みましたか?」


 さぁくすさんがホークを手に取り聞いてくる。確かに、机の上にはもう置けないほど料理があふれている。この量を一人で運んできたんだよな。すごい。どうやって運んできたんだろう?


「へい。これでもお釣が来そうなぐらいですよ」


「・・・・・・そんなに頼んでねーだろ」


 カータさんが怪訝そうに聞いてきたけど。頼み方がそもそもおかしかった。

 

――あ。ギルドねんけど。200銀貨で持ってこれる料理よろしく! ガチャ


 料理の注文だよね?って思ってしまった。

 みんな普通にしてたから、これが普通なんだと無理やり納得したけど。僕は一人で料理が運ばれてくるまでもやもやしてしまった。

 料理の指定をしていないのに、嫌いな料理が出てきたらどうするんだろう?


「いやいや。仕入れを安くして、手間をかけて料理をすれば美味しくなるんです。だから、元手は最低限の金額でやりくりできるんで楽ですよ」


 そうなんだよな。下処理ができてないから、不味いのであって。仕入れにお金をかけても意味ないんだよね。だから、仕入れは最小限、手間を最大限かければ美味しい料理の完成。

 もとが粗悪だったから、こんな悲しいことになるんだけど。でも、味は本当に。


「お、お、お、おいしいーー!!」

「う、うまっ!?何これ!」

「マジで?・・・・・・・・うまいっ」


 ああ。分かってもらえた。よかった。


「本当ですかい!!よかった!気に入ったなら次は店に来てください。そっちの方が、出来合いの美味しい料理が出せます!」


「意外としっかりしてますね」


 そう。でるすさんは粗野な見た目や言動からではちょっと考えられないけど抜け目ないっていうか、ちゃっかりしている人だ。

 そんな人だから、今までお店も潰れないでいたのかもしれない。


「おう。行く行く!また食べに行くわ!!おいしいー!」

「俺は女の子連れて行く。最近ヘルシーなもの食べたいって言ってたし。この野菜美味しい!」

「空鬼が教えたってしても、うまいな」

「今度は、みんなで食べに行きましょうか」

「行きたーい!」


 盛り上がりながらみんな次々に料理を食べていく。僕もお腹がすいていたこともあって、手を伸ばして食べていく。

 でるすさんは楽しそうに料理の解説をしながら、開いたお皿を下げて新しい料理を置いていく。どこに隠し持っていたんだろう?


「ああ。サラダです。ここらへんじゃ見ないけど、南に行けばもっとうまい野菜がたくさんありますよ」


「おおー!」


 野菜でこんなに感動する人も珍しいだろう。と、言うか。そんなに野菜はここでは珍しいのか? 「サラダ」はでるすさん命名だ。その名前を聞いて、なんだかしっくり来たから僕もその名前を使っている。


「ここは、大きな冒険者ギルドがありますから。肉食、もとい。しっかりとして味があるお肉にしか興味がない人が多いんですよ」


「なるほど」


 さぁくすさんの説明に深くうなずく。なるほど、味がしっかりしているのが好きなのか。ものは言いようで印象が変わるな。

 アレが、「味がしっかりしている」っていうのか。

 まぁ、しっかりしているけど。ほとんど油の味しかしないけど・・・・。


 気を取り直して、でるすさんの料理を食べる。いやー。でるすさんに出会えて本当に良かった。彼が居なければ、今頃僕はどうなっていたんだろうか。

 油のとり過ぎできっと、食べ物の味なんて感じなくなっていたんじゃないのかな。


 作戦会議は脇に除けられ、僕たちは料理を堪能した。

 

 食事が済んで満腹になってからの作戦会議は、まぁ、ちょっとぐだぐだに話がそれながらもこれからの活動方針を決めた。

 今日と同じように、キメラの行動範囲を決めて状況を見極めるということになった。

 そして、次は餌を用意してキメラたちを誘き出す作戦をとるとのこと。


 まぁ、上手くいけばいいんだけど。

 その餌に、でるさんの料理を使おうっていう提案はどうかと思うんだ、シー。



 


ご飯を食べているだけだった・・・・。

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