閑話休談 ③
今回はシリアス雰囲気です。長いです。
人がいる。妖怪がいる。鬼がいる。
鬼は人に付き、願いを叶える代わりに、その人間から大切なモノをもらう。それは、色だったり、香りだったり、視力だったり、金だったり、地位だったり、土地だったり。
制限はない。ただし、例外は『命』である。
人の『命』以外であれば、欲しいと思ったものを貰うことができる。
それが、鬼の呪い。
『色』をもらえば、色がなくなり特徴がなくなる。
『匂い』をもらえば、香りがなくなり存在感が薄くなる。
『視力』を失えば、その瞳に何も写すことはなくなる。
『金』を失えば、今までの貯蓄全てを奪われ、この先蓄えることができない。
『地位』を失えば、一番憎い者へ位を移させられる。
『土地』を失えば、親しい者から住む場所を追われる。
鬼に願えば叶えてくれる。ただ、そのための代償を支払わなければいけない。
そいて、鬼が叶える願いは戦ごと、争いごとにおいてのみ願いを叶える。
ただし、人が払った代償は、彼ら鬼族が実際に手にするわけではない。
色を取り入れることはなく、香りを纏うことはなく、視力が良くなるわけではなく、金を得られるわけではなく、地位を手にするわけではなく、土地を広げるわけではない。
ならば、彼らは何を得ているのか。
彼らは食事をしているのだ。
人の願いは美味しい。大切なモノの味は格別。
【大切なモノ】を喰べるのだ。
だから、鬼の呪いは性質が悪い。
◆
ぞろぞろと連れ立って歩く集団の後方で、のんびりと歩きながら二人の青年は話していた。
のどかな日和だ。青空には薄い雲があるが晴天。
「護衛って」
「しゃーねだろ。そういう契約でもあるんだし」
貴族の行列は足場の悪い道を懸命に歩く。まぁ、貴族に付き従っている家来たちが懸命に歩いているのだが。
主役はのんびりと歩く牛が引く籠の中で好きなことを、気分気ままに言っているだけだ。
「お前、あのお姫様がかわいいから引き受けたんじゃないのか?」
「ああ。かわいいだろ」
「・・・・」
「ぶねー。おい、殴るなよ」
「殴るだろ」
隣の相棒にはほとほと困ったというように肩をすくめながら、躱された拳を引っ込める。女性に優しいのはいいことだが、こんな苦労は御免だと青年が洩らせば。
「良いだろ。ほんの三日だ」
そう答えて、楽しそうに笑いながら相棒の肩に腕を回す。しかし、肩に腕を回された青年は歩きにくいとその手を払いのけてのんびりと進む。
少したれ目がちな青年と、勝気そうな顔を楽しそうに弛緩させている青年。
その彼らの目の前で行列が止る。どうやら、籠の車輪が溝にはまったようだ。
「はぁー」
遅々として進まない行列を見ながら、たれ目がちの目をうんざりだというように細める。
「たまには戦いを避けてさ。静かに旅行ってのもいいだろ?」
「静かでもないぞ」
現に目の前の家来たちは騒がしい。やれ押せだの、やれ外れないだの。まったく、どうして人とは非力なのだと言いたそうにため息をつく。
相棒の態度に苦笑いを零しながら、いつも通りの軽口を返す。
「そうだけど。でもただ酒だぞ。全部あっち持ちなんだから」
「それはいいけど」
「だろ?」
街道に人の姿はまばらだった。この街道は旧街道で人の往来は少ない。
森の中を通る新街道が別にあるからだ。現在進んでいる旧街道は、崖沿いの道となっている。
旧街道は新街道よりも近道であるが、通常より危険だから道先を急ぐ商人か、道に詳しい飛脚ぐらいしか利用しない道なのだ。
しかし、現在旧街道を使っているのは貴族の一人。急ぐ道でもないのに。
ただこの道を通りたいという我儘を聞いているだけにすぎない。自分の足で歩くわけでもないのに、行道まで指図を受け従う家来たちは偉いなと、護衛である青年たちは思うだけだ。
彼らからしてみたら、道の悪い良いは関係ない。
もし危険が迫れば雇い主の息子を逃がせばいい。
他がどうなろうと、どうでもいい。契約内容には家来の命まで面倒を見るとは含んでない。だからこそ、後からのんびりと歩く。
四苦八苦しながら、やっと牛を進ませることができた牛飼いや御者は大変であるが。
「この行進を三日って考えると、ちょっと憂鬱だな」
「慣れろよ」
「あいつの目が嫌いだ」
「ああ。それは同感。でも雇い主の息子だ。言うことは聞かなくてもいいけど、余計なことは言うなよ?」
「分かってる・・・・・・・・・・」
「どうした空鬼?」
不自然に途切れた空鬼の言葉に絶鬼は尋ねた。空鬼はしばらく何かを探るように、視線を宙に彷徨わせ口を開く。
「つけられている。後ろ、五町先」
「ふーん。追いつきそうだな。ここらで仕掛けられたら面倒だ」
「追い払うか?」
「いや。こいつら先行させた方がいい。前方には?」
「居ない」
「りょーかい。じゃあ、伝えてくる」
絶鬼は空鬼と離れて前方へ向かう。何の迷いもない。雇い主の側に危険が迫っているなら、助けるのが契約だ。
ほどなくして、絶鬼が戻ってくる。
変わらず並んで歩きながら、たわいない話をする。この旧街道は道幅があるが、片側が断崖絶壁と言っていい。行進できるほど広いが、戦闘となれば狭い。
だから、先行させるのだ。
戦闘に邪魔なものはいないに限る。
「来るぞ」
「へーい」
こういった戦闘時の空鬼の勘は当たる。当たるというよりも、まるで見えているかのように的中させる。赤鬼の一族なら誰でも出来るのかというと、そうではない。つまり、並はずれて空鬼の索敵範囲が広いということだ。
だからこそ、何時何処で戦闘になろうとも、裏をかかれるということはない。
「鬼道 第6番 十二重 疾風怒濤」
「鬼道 第8番 八重 火炎乱舞」
二人が同時に鬼道を練り上げる。風が巻き起こり、そこに炎が加わり渦を巻きながら後方の敵へと迫った!
後ろから迫ってきた敵兵は、裏をかいたつもりで、自分たちが不意を打ったつもりでいたところに攻撃を受けて一気に足並みが乱れる。響いた悲鳴に、前方にいた家来たちがにわかに騒ぎ出す。しかし、すでに指示を出していたため、それほど取り乱すことなく駆け足で走り出した。
これで邪魔者はいなくなる。
問答無用で襲ってきたのは後方の連中なのだ。大義名分は必要ない。
鬼なのだ、敵がいるのなら倒すのみ。
「絶!」
空鬼の言葉で、絶鬼は後方へ飛ぶ。
「こりゃまた」
空鬼の隣に着地しながら、絶鬼は先ほど自分が居た場所を見る。見事に地面が抉れていた。
「―――――――」
「術師ってーのは厄介だな。ちょっと溜めるから、ある程度数を減らしてくれるか?」
「ああ」
術師。
京の都に籍を置く陰陽師のように陰陽五行の理を解し、鬼道のように術を繰り出す者のことを言う。もっとも、術師とは市井に出回っているよいうな気休め程度の占いのようなことをする者から、それこそ陰陽師のように魑魅魍魎の退治を専門に行うものまで幅広く指す。
だから、現在目の前にいる術師の腕がどれ程のものか分からない。だが、それがどうした?二人は鬼なのだ。強敵であればあるほど、血が騒いでくるというもの。
「そんじゃ」「「“双刃の空絶絶空”押して参る!」」
飛び出すのは、赤鬼と青鬼。
鎧を纏うことなく、本来の姿を晒して向かってくる“鬼”に最前列にいた兵は悲鳴を上げて後退する。後方に控えていた兵士が避けきれるはずもなく、押し問答している場所に切り込んだ!
しかし、そこに術師が術を放つ。
放たれたのは、水。濁流となる水が二人に襲い掛かる。
しかし、抜き放たれた一刀のもとに水は切り裂かれた。鬼気を乗せた一刀だ。ただの一撃よりも重く鋭い。術は半ばから切り裂かれ威力を弱めながら、背後にいる行例の後方にいた従者を幾人か貫いた。
だが、味方が幾人か倒れても気にすることなく、空鬼は目の前にいる敵を次々に切り伏せていく。統率は乱れ、逃げまどう人間を冷静に冷徹に冷酷に一刀のもとに切り裂いていく。
鬼の所業。
まさしく、鬼の業だった。
術師は前列の人間を切り裂きながら迫る赤鬼に恐怖を感じた。今更過ぎる恐れを感じ、味方の安否を顧みず、前面に水の陣を展開する。
展開されるは「水薄陣」。
薄い水の陣と書くが、文字から連想される陣とは対照的に高圧の水弾が面となって前方に向かい放たれた!
人一人貫通しようとも止まることなく突き進む水弾!
幾人の味方を犠牲にし、ついに赤鬼の眼前に迫る。逃げ道はない。前方は幾筋も迫りくる水弾、右は切り立った絶壁、左は奈落の底に続くかのような断崖。逃げ場所など最初からない。
それにも拘わらず、赤鬼は止まらない。止まる理由などないからだ。
「鬼道 第4番 十一重 緑陵壁」
眼前に迫った水弾の陣が緑の外壁に阻まれる。
空鬼の後方で鬼道を練っていた絶鬼の技だ。緑の外壁は空鬼に押し寄せた水を遮断するだけではなく、後方にいた術師の足元にも出現した。
右は切り立った絶壁、左は奈落の底に続くかのような断崖。
左に足元が傾けは、必然落ちる。
「う、」
『うわわわわわわわわわわわーーーーーーー!!』
幾人もの敵を断崖の下へ滑り落とす。
無慈悲にも、空鬼は地面から生える蔦にへばり付く様に取りすがっていた兵士を足蹴にし奈落へと落とす。どこに足を乗せればいいのか、どこを歩けば滑り落ちないのか分かっているのだ。
瞬く間に、戦闘は終結した。
開始から終結まで、人からのまともな反撃は術師の放った水弾ぐらいだろうか。
「おおー。落ちたなー」
後方に幾人かの生き残りがいたが、反撃することなく反転して逃げて行く。遁走する人間たちの背中を見ながら、崖下を見下ろしている絶鬼の元へ空鬼は向かう。
「何しに来たんだろう?」
「さぁ?暇だったんじゃないかぁ」
どうでもよさそうに言い放った絶鬼が、覗き込んでいた崖淵から引き返そうとして、
刀に付いた血糊を払い落とし、空鬼は刀を納めようとして、
「っ絶!」
密かな気配に気づくも、空鬼は突如飛来した矢に声を上げることしか出来なかった。
「かっ」
右脇に突き立つように刺さった矢に絶鬼は顔を歪め、空鬼は顔色を無くす。
しかし、即座に崖上を見上げて六本の矢を叩き落とした。何時からいたのか、七人の刺客がそこにいた。
空鬼の索敵に入らず、隙を伺っていたのだろう。
先ほどの兵士は囮だったのだ。仲間を犠牲にしてまで、彼らの狙いは貴族ではなく初めから赤鬼と青鬼だったということだ。
空鬼は赤い瞳で上方の敵を睨みつける。
敵は遠く剣戟は届かない。しかし、鬼道ならば敵の懐に潜り込むこともできる。できるが、崖下に落ちていく絶鬼を追うために空鬼もまた空に身を投げ出していた。
放たれた矢も牽制。赤鬼が青鬼を追うと解っていて、放った矢だった。空鬼は落ち行く絶鬼の手を掴み、射殺すような視線を刺客に向ける。
「鬼道 第4番 六重 華逆の振動」
鬼道の詠唱を聞き即座に身を翻す刺客。しかし、振り抜いた刀は彼らの足元に向けられていた。
「!」
足元が振動し地面が崩れる!それも広範囲を巻き込みながら、崖崩れを起こした!
「鬼がっ!」
負け惜しみの台詞を聞き流し、空鬼は絶鬼の体をしっかりと抱き込みながら、崖下へと落ちて行く。
◆
「ぐっ」
空鬼は絶鬼を背負いながら森の中を進んでいる。落下しながらも≪浮き雲≫を発動させ何とか地面に着地することが出来た。しかし、その代償として足を挫いてしまったようだ。右足を庇いながらも懸命に前へと進む。
川のせせらぎが聞こえているから、少なくとも川辺の近くまで行きたいのだろう。
森の中は夕日の光を受けてまだ明るい。しかし、すぐに夜が来るだろう。そうなる前に安全な場所まで移動しなければ。
「ぜつぎ」
背中からは苦しげな息遣いが聞こえるだけ。意識がないことは、何度も呼びかけているのに反応すらないことからわかりきっている。
放たれた矢は、[破邪の矢]だった。
強力な妖怪や悪霊を払うための特殊な弓矢。
それを、脇腹に受けた。絶鬼でなければ絶命してもおかしくない。[破邪の矢]とは、妖しにとっては天敵のような武器なのだ。
「ぜつぎっ」
分かっている。知っている。それでも、防げなかった。
[破邪の矢]は特殊で、誰でも扱えるわけじゃない。鬼に対抗するための手段としては妥当で、敵がそれを持っていることを想定するべきことだった。
それなのに。警戒を怠った。敵が近くにいるのに、目の前しか見ていなかった。上方にいるかもしれないなど、考えもしなった。
そんなことは、言い訳だ。
何もなりはしない。何もできはなしない。力を持っていても意味がないじゃないか。
「ぜつ」
苦しげな息遣いが聞こえる。生きている。まだ呼吸をしている。
背中が熱い。まるで火を背負っているかのように。まるで、命が燃えているかのように熱い。
川辺まで。
傷口を洗って、水を飲ませなければ。
命を繋がなければ。
こんなところで終われない。刺客は恐らく生きている。戻らなければ。契約不履行では、願いを叶えなければ対価は貰えない。
それは防がなければいけない。
あんな連中に邪魔されるわけにはいかないのだ。目的にはまだ遠い。それなのに、こんなところで躓いているわけにはいかないのだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・そら?」
「絶!?しっかりしろ!」
「・・・・・ああ」
意識を取り戻した絶鬼を背負い直し、空鬼は足を速める。挫いた右足の痛みを無視して進む。こんなところで終われない。こんな場所で、止ってなどいられないのだ。
「まだだ。まだ。全然。まだなんだっ。だから」
焦りが募る。
絶鬼を守れなかったこと。刺客を取り逃がしたこと。なにより、契約が履行できないことに。このままでは、何時まで経っても―――――――。
「わかってるよ」
熱い息が首筋にかかる。苦しげな声。だが、芯は通っていて、生きる意志に満ちている。そんな声。
絶鬼の声を聴いて、焦っていた心が少しだけ落ち着きを取り戻す。追い詰められているのは、空鬼の方だった。
背中に感じる熱が冷めていくのが恐ろしい。背負っている命が失われることに、絶望してしまいそうになる。
「だいじょうぶだ。くうき」
呟かれた言葉は弱弱しいが優しく暖かい。話すのさえ辛いだろうに、息をするのさえ苦痛だろうに。それでも、大丈夫だと囁く。
囁きは途中で途切れてしまったが、熱い息は感じる。体温はまだ失われていない。まだ生きているのだ。それなのに、空鬼が足を止めることはできない。
空鬼は絶鬼の言葉に励まされるように進む。足元は覚束ないが、紅い瞳は強い光を湛えていた。
◆
暗く深い森の中。
まだ、日は昇らず。薄ら寒い闇に閉ざされた森の中。
「?」
虫すら眠りに落ちている闇の中で、虚ろな意識が覚醒する。
手足の感覚はない。風の音も、生き物の息遣いもない。闇に呑まれたかのような無音。
(俺は死んだのか?)
意識は覚醒しても、虚ろな感覚を引きずっているのか、瞬きしても目をつむった時と同じ闇しか見えない。
深呼吸をしようとして、引き攣る脇腹の痛みで呼吸がうまくできない。まるで、焼鏝を押し付けられたような熱と激痛が襲ってきた。
痛みに身じろぎをして、うまく体が動かないことに気付く。
そこで初めて、抱きしめられていることに気が付いた。背中に感じる暖かな温度と首筋にかかる寝息。
「そら?」
声をかけたら、間近で紅玉が二つ瞬いた。
「絶っ」
暖かな光を宿す紅玉が、空鬼の瞳だと気付くよりも早く後ろから抱きしめられた。
その腕の力強さと、震える体の感触で絶鬼は己の状態を思い出した。そして、近くで燃える密かな焚火と夜の森の中だということを認識した。
無音の世界から、暖かな色と力強い体温が絶鬼を現実へと引き戻す。
「わるいな。しんぱい、かけた、な」
動かぬ体も、上手く息ができない原因もすべて思い出した。
そして、不甲斐無い自分自身に舌打ちをしたくなった。自分を助けるために相当無理をしたことは、空鬼の足を見れば容易にわかる。
服の上からでもわかるほど腫れ上がった右足を見れば、何をしているんだと怒鳴りたくなった。
絶鬼は密かにため息を一つついて、腕を持ち上げる。指先に感覚はまるでないが、回されている空鬼の手にそっと乗せる。
「まったくだ。馬鹿。あの程度でやられるなよな」
空鬼はビクリと反応して、早口で捲し立た。
「ああ。わるい。ごめん、な?」
「許すよ。許すから。早く良くなれ。いいなっ」
「わかってる。なぁ」
動かぬ指先を腹ただしく思いながらも、力を籠める。微力だが、確かに空鬼の温度を感じることができた。
「何だよ」
「なくな」
首元にかかる吐息、震えている体、顔を上げない頑なな態度を見れば嫌でも判る。
「なくな。おれが、わるかった、から」
空鬼に泣かれたらどうしていいか分からない。慰める手もうまく動かない。何より、空鬼にこんな体たらくを晒している自分が許せない。
だから、言葉を重ねる。
「もう、ゆだん、しないから。なくなよ。こんなけが、すぐに、なおして、みせるから、さ」
[破邪の矢]は強力だ。一日やそこらで治るものではない。少なくとも、絶命していなければおかしな一撃でさえある。
だが、絶鬼にその手の攻撃では致命傷を与えることはできない。有効打ではあるが、必殺ではない。だからこそ、助かったのだし回復する見込みもある。
「・・・・・・・・・・・・約束だからな」
「ああ。あさには、なおしてる」
腕の力は相変わらず強いが、体の震えは止った。そのことに、安堵する。
脇腹の激痛はまだ引かないが、この程度の怪我なら回復するだろうと、心の中で回復の目途を立てて、押し寄せる冥闇に目を閉じる。
早く回復するために、その冥闇の中へと入っていくために目を閉じる。
「あさに、なったら、おこしてくれ」
背中のぬくもりと、抱きしめる両腕の暖かさがあれば、冥闇に負けることはない。だから、――――。
「わかった」
朝日はまだ遠く、夜の闇の中に鬼が二人。
傍らにある焚火だけがひっそりと二人を照らし出す。まるで、世界に二人しかいないかのように。闇の中に浮かび上がらせていた。
いかがでしたでしょうか?二人の過去話。本編では絶鬼(青鬼)が空鬼(赤鬼)を必死に探し回っているので、ここでは赤が青を心配していることを書いてみました! 五町先は約550m先、のはずです。




