盗賊の根城 ⑧ 作戦は昼間に限るでしょ!
白昼堂々とした盗賊団になってしまった。
空鬼としても、夜よりもいいかなって思ってます。たぶん。キーくん視点で動いていきます。
作戦開始。
商隊が通るのをおとなしく待つ。
天気は晴天。
つまり、真っ昼間の白昼堂々と襲うのだ。
こんなに堂々とした盗賊団でいいんだろうか??
まぁ、いいのか?
「もうすぐだ」
お頭さんから声をかけられて、僕は気を引き締める。もとより、油断はしていない。
「来たら俺の側から離れるなよ」
そう声をかけられるけれど、僕は大丈夫なんだけどなぁ。けど素直に返事はしておく。
◆
今、俺の目の前を商隊が通っている。文字通り、目と鼻の先に居る。けれど、やつらは一切気づいていない。
あ、俺キーです。
何だかんだで、空鬼の世話をしてる「虎の獣人」のキーです。丸い耳に尻尾があって、自分で言うのもなんがだけっこう俺イケてる。
狐の獣人であるお頭の元に、虎である俺がいるっていうのも変な話だが、そこは、お頭の人柄に惹かれて身を寄せているので変なことではない。
さて、唐突ですがここでの常識の話。
空鬼はうちに入ってきて一ヶ月の新人だ。
そんなやつが、今回のような大きな作戦に参加なんてさせてもらえない。ちょっとした失敗か命取りだからだ。
だから、普通はない。
もっとも、食料調達だって若造にはさせない。理由は魔物が出るのと、若いやつらほど死ぬ確率が高いから。
だから、空鬼は異例中の異例だ。
腕は立つようだし、お頭とも仲がいいようだ。
“あの”お頭と。
気にくわないやつは、とことん追い詰めるお頭と“仲がいい”。
サイネンストさんでも遠慮している部分に平気で立ち入るし、お頭の機嫌が悪くてものほほんとしている。こっちは、見ててハラハラしてるっていうのに。
そんな奴なのに、お頭は黙認している。
武器だって持つとき、ためらいもせず中古品を選んだ。いいけれど。勧めたのは俺だけと。まさか、躊躇なく選ぶとは。
しかも、使う気はさほどなさそうだ。
そんなやつ。
そんな変わったやつ。
何にも知らないやつ。
会ったときは常識がまるでなくて、どこから来たんだってしつこく聞いたこともある。
どうやら、オニ族らしい。証拠に角を見せろって言ったけれど、今まで一度も角は見せてもらえてない。
でも、いつもバンダナで額を隠しているから嘘ではないらしい。
オニ族はみな額に角があり、皮膚の下に隠すと独特のアザができると聞いた。たぶん、見られたくなくて隠してるんだろう。
見せたがらないのも、角は弱点の一つだから。だから、隠すのは当たり前だ。
けれど、空鬼はオニ族で、戦いが生業の一族。
でも、空鬼の雰囲気はふわふわして、つかみ所がない。そして以外と仲間思いのやつだ。
「もうすぐだ」
お頭がみんなに合図を送る。皆合図を皮切りに、気合いを入れ換える。
空鬼もそうする。ああ、そうそう。仲間思いのいいやつなんだけれど、どうも隠し事が多くあるみたいだ。
皆と一緒にいるときは楽しそうにしているけれど、川辺に一人でいるときは話しかけずらい雰囲気を纏っていた。どうも、一人でいるような、独りぼっちのような。
見てて、やるせなくなる雰囲気を纏っていた。
見たのは一度きりだけれど。それだけで、何か事情を抱えている奴だと俺はピンときた。だから、しつこく問いただすこともなくなったんだけれど。
ああ。余計なことを考え過ぎだな。
今は目の前の仕事に集中しないといけない。
商隊が護衛を展開させながら進んでいく。
俺たちはそれを半まで見送る。数分すると、先頭からざわめきが上がった。
始まった!
今回の作戦は複数の商隊を相手にするから、本隊と陽動隊の2つに分けた。
先頭が陽動隊。そして、街頭の茂みに隠れている俺たちが本隊!
護衛連中が先頭に駆け出す。加勢に加わるのだろう。だが、それが間違だ!
「ハイス!」
お頭が鋭く声をあげた。
今までハイスさんが施していた隠蔽魔術が解かれた。これぼど近くにいながら、まったく警戒されなかったのは、一重にハイスさんのおかげだ。
“異色の魔術師”の二つ名は伊達じゃないぜ!
俺たちは飛び出し、驚いている護衛や御者を排除する。
対した抵抗もされず倒せるのは楽でいい。
これは、お頭の力。
“影使い”ロミネ。
森の影を伸ばして、動きを阻害している。
狐の獣人の中で稀に影を操る者が生まれてくる。それが、お頭だ。しかも、その扱いは一流で、影で絞め殺したり、ただ拘束したり、痛みを与えたりもできる。しかも、その範囲が半端ない!
自分の影なら拘束は二人か三人が限界みいだけど、森の茂みの中なら、その広さの分だけ影を操れる。
夜なら無敵!
魔法ではなく特殊な能力だと聞いた。
魔術師であるハイスさんですら真似できない力。
うちの頭は凄いんだぜ!
だから白昼堂々と襲えるんだ。てか、夜中だと、俺らがお頭の足引っ張ることになるから、昼間に決まっているようなものだ。
影を操るっていうのも、状況を把握出来なければ諸刃の剣でしかないらしい。
でも、やっばりすご!
だって一時間とたたず、お宝ゲットだぜ!
つうか―――――
「すご!なっ!すごーー!!」
金銀財宝、お宝の山!
貴重品から名品、珍味に名酒、上等な生地からきらびやかな装飾品の数々!しかも、一つの馬車だけじゃない!合計13の馬車に乗せれるだけ、乗せている!
なんですか、これわーー!
仲間と一緒に夢中になって袋に詰める!
詰められない分は、自分の服に詰める!
がめたりしない、したら後が怖いからな!
取り零しがないように、奪う。奪う。
もう、さいこー!
ああ、空鬼はラッキーだな!こんな美味しい時に実践積めて!
大した腕のやつはいなかったし。抵抗もほとんどされなかった。
やっぱり、頭はすげーや!
お宝を詰めるだけ詰め終わり合図がかかる。
それを境に、俺たちはアジトに戻っていった。戻ったら宴会だー!
「おい!空鬼早くしろ!」
一人なにも持ったず突っ立てる空鬼に声をかける。あいつ、どこ見てんだ?
なんか主人公が目立ってない。。。




