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盗賊の根城 ⑥ 狐さんへの恩返し

評価がいつの間にか上がってました!ありがとうございますっ!

話はそんなに進みませんが、お頭さんと空鬼はいい関係になってます。ようやく、理解者を得られて空鬼も少し落ち着きました。

 思ったよりもスガヘルの解体に、時間がかかってしまった。

 まぁ、半分は話してたから遅れてしまったんだけれど。でも、成果はあったし皆にも喜ばれた。どうやら、美味しい干し肉や出汁になるらしい。

 そして、けっこう高値で取引されている食材だそうだ。この点で喜ばれたのは言うまでもない。


 作業が終わって、遅めの昼食をキーくんと食べる。


「おい。これうまい」


「え?本当だ。美味しいですね」


 今日の昼食は魚。煮魚や焼き魚じゃなくて、ソテー?されている料理だ。ここの料理はどれも食べたことがないモノばかりで、美味しかったり、まずかったりする。今日は当たりで、とても美味しい。

 何時も食べるときは、みんなが食べるのを見て食べている。ここでは、ざっくりと先が尖った分厚い金属で刺して食べている。ホークというらしくて、スープを飲むときは、スプーンを使う。これは、平らで(さじ)と同じ形だから使いやすい。 


「その敬語、いつ取れるんだ?」


 キーくんが可笑しそうに聞いてくる。機嫌がいいのか、虎の尻尾がゆっくりと上下に動いていた。それを見て、僕も笑いながら答える。


「そのうちです。お昼からは家業の方ですよね」


「そうそう。近くで商隊が通るらしい。けっこう、大規模みたいだぞ」


 お昼はその準備をするそうだ。

 なんだかんだで、盗賊っぽいことはしている。僕があんまり関わらないだけで。


「そんな大きいところを狙って大丈夫なんですか?」


「大丈夫なわけねーだろ?たぶん、ここでの狩りも潮時なんだろ。一気に稼いでよそに移る気なんじゃないかな」


「なるほど」


 盗賊稼業で一定どころに留まり続けるなんてこと、出来るわけないか。

 定期的に移動していることは分かったけれど、まさか、今か。

 別にいいけれど。どうだろう?

 なんか都合がよくないか。



「おう。お前がいるから早々とここを閉めるんだ。良い所ってわけでもなかったけどなぁ。まぁ、なんだかんだで稼ぎは少なかったのは本当だから、気にすんな」


「そうですか。・・・・・ありがとうございます」


 昼間キーくんと話してて思ったことを、お頭さんに尋ねてみた。そしたら、軽い調子で応えてくれた。

 そこで謝るのもおかしいと思ったから、感謝の言葉を言ったけれど、これもこれでおかしい様な?


「おう!気にすんな!」


 けれど、すんなり受け入れてくれた。

 お頭さんはやっぱり優しい。


「次はどこに行くんですか?」


 今、僕はお頭さんと一緒に、お頭さんの部屋に居る。たまに、一緒にお酒を飲む仲にいつのまにかなっていた。

 晩御飯を食べた後、呼び出された。

 

 僕はちょびちょびお酒を飲みながら、お頭さんは豪快に酒樽でのみながら、他愛もない話をする。ここのお酒はくせがあるけれど、美味しい。お頭さんが飲んでいるお酒が、いいお酒だからっていうのもあるだろうけど。

 

 お頭さんは、どうやら異世界に興味があるらしい。だからたまに呼ばれて話をする。僕はこの時間が案外好きだ。

 けれど、今日は違った。


「その前に、何個か確認したいことがある」


 真剣な顔をしてお頭さんが切り出した。お酒も机の上に置いている。


「はい」


 お頭さんは優しいけれど、厳しい所ももちろんある。そして、なにより話はいつも唐突だ。


「お前。ここに何時まで居たい?」


「何時まで、ですか?」


 意味がわからず、尋ね返した。

 その言葉に、お頭さんは少は苦笑いを返して、お酒を口に含ませる。


「ああ。ここは、分かってると思うが、盗賊団だ。まともな稼ぎをする所じゃねー。お前は、異世界から来たんだろ?だったら、この場所に囚われることもねー。外に行って稼ぐっていう手もある。だいぶ常識も身につけただろうし」


「・・・・」


 確かに。ここにいるのは、この世界の常識を身につけるため、僕が一人でも生きていける様に知恵をつけるため、だ。

 だから、ずっとここに居なくてもいい。

 それは、そうだけれど。


「恩がないわけじゃないです。お頭さんが言ってくれなければ、僕は今も何もわからず彷徨っていたかもしれません。だから、最低限お世話になった分だけでも何かを返せないまま、離れることは考えていません」


 今すぐに、離れなくてもいいじゃないか。

 僕がしたことは微々たる手伝いだけだ。知識も知恵も、全て教えてもらっておいてそのまま「ありがとうございました」「お世話になりました」と出ていくことはできない。


「気にするな。これは、気まぐれみたいなもんだ。そこまで気負ってくれると俺としちゃ、困るんだが」


「僕も困ります。迷惑も多少かけていますし」


「そこ、気にする所じゃねーだろ?お互い様だ」


 しかし、追手からの襲撃が一か月の中で2件あった。

 そのどれも、撃退できたけれど、サイネンストさんやお頭さん、それに魔術師さんにも手伝ってもらったから簡単にできたことだ。

 そうじゃなければ、僕は刀を抜いていただろう。

 それだけは避けなければ。


「それに、シレイのときはこっちが助けてもらった。その分も含めて、お互い様だ」


 そう言ってくれるお頭さんは、盗賊としては異例なほど優しいと思う。

 僕のような奴を利用するでも、気味悪がるでもなく、普通に接してくれる。それが、僕にとってこの世界の見方が、常識がどれだけ変わったかなんて知らないだろう。


 ハロルドとりくしら。二人しか知らない僕にしてみたら、この場所での生活は大きな変化だった。


 世界の常識が、書き換わったように感じた。

 目、態度、仕草。どれも、教会の中じゃ、ないものだった。

 だからこそ、何か恩返しをしたい。ハロルドやりくしらとの間には、信頼も信用もなかったけれど。お頭さんたちは違う。


「それに、俺たちは本業で盗賊やってんだ。そこに、お前が恩を返すことは、なんにもない。俺たちは俺たちだけで全てなんでもできる。そうじゃなきゃ、こんな商売やってらんねーしな。だから、お前が気負うことは何にもねー」


 それも、そうだ。

 いくら恩を感じていても、おせっかいになったら意味がない。

 お頭さんを見る。千切れていない左耳が、ぴこぴこと動いていた。僕の答えを待ってるんだろう。


「・・・・・わかりました」


「おう」


「ただし。商隊を歓迎(・・)するときは僕も行きます」


 真剣にお頭さんの目を見て訴える。

 そうしないと、この人は折れないだろう。優しいけれど、厳しい所もあるこの人は。ちょっとしたことで、僕を気遣ってくれるから。

 本気で訴える。


「こころ強いな」


 お頭さんは面白そうに笑って、そう言ってくれた。




次は大きく動かせたらいいですが、まだ、いろいろと問題が出てきます。問題の主は、おそらく空鬼になるんですけれど。

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