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躍動②

 ユーリテのお店に一泊した次の日、僕とくっきーは図書館へ向かう。

 今日は晴れていい天気だ。今朝ユーリテもコウリンちゃんも元気に振る舞っていたけれど、大丈夫かな?


 昨日の今日で、割り切るなんて事できないだろうけど。僕が出来ることは何も無い。騎士の人達が、犯人を捕まえてくれることを願っているけれど、難しいだろうな。


 あれだけ徹底して痕跡を残さないで、必要な物だけ盗っている。

 薬品の扱いに慣れていて、複雑な機材を備品の類も残さず壊して、家主に朝まで知られずに立ち去っている。


 手慣れている、というよりも、薬品を被ってもどうでもいいと言いたげだな現状だった。


「にゃー」


「うん。ちょっと心配だけど、二人だけにしておこう。今は気持ちの整理も必要だろうから」


 くっきーはしきりに後ろを気にしている。コウリンちゃんを気に入っているみたいだから、心配なんだろう。けど、僕やくっきーがいたら泣けないかもしれないしね。

 これから、二人で生きていかないと行けない。まぁ、ユーリテは薬師としての腕は確かだし、自分のお店じゃなくて、誰かに雇って貰うこともできるだろう。

 

 ユーリテが、他のお店で働いている姿を想像出来ないけれど。

 でも、無一文になってもやりようはある。僕みたいに、冒険者登録して、誰かと組んで活動すればお金は貯められるだろうし。


 まぁ、だとしても今話すことじゃないだろうなぁ。

 心の整理をして、前を向けるようになったら、それとなく誘ってみようか。コウリンちゃんは気配りが出来るから、きっとどこでも歓迎してくれる。


 うん。僕に出来ることは何も無いけれど、話し相手にはなれるし、ご飯も少しは作れるし、二人が立ち直る間だけでも、ちょこちょこ顔を出してみよう。


「さ!図書館で何を借りようかな。古い本を見てみてもいいしね。くっきーはどうする?」


「みー!」


 返事を返してくれるけど、何を言っているのかわからない。けど、かわいいから額を撫でる。

 図書館で本を借りたら、ユーリテのお店に戻る前に、何か屋台で買っていこうかな。



 目が覚めて清々しい晴天に、私はにやにやしてしまう。

 ああ!昨日の素晴らしい体験が、私にさらなる知識を授けてくれた。もっと、もっとさらに多くの知識を得たい。王宮で習う以上の知識と経験を!

 私の中で期待が膨らむ。今まで以上に今日の私はやる気に満ちているわ!


「姫様。連日街に降りるのはどうかと」


「別にいいでしょう?昨日、街に行ったけれど危険な目にあわなかったわ。平和な街よ」


 治安がよくて、通りに居る人は笑顔の人が多かった。馬車で通ったけど、子供達も楽しそうに遊んでいたわ。モニカは心配性なんだから。


「それは護衛が多数居りましたから」


「ええ。でも、図書館にはいつも通っているじゃない」


 本当はもっと通いたいけれど、駄目だと言われいるから我慢しているわ。私だって、護衛する側の都合を考えるのよ。

 けれど、それ以上に私の中にある知識欲は止まらない。早く早くと、せかすように私に新しい世界を知れと言ってくる。


「さあ、行きましょう!」


 私はいつも通りお忍びの格好で出かける。

 今日は天気がいいわ。きっと、昨日と同じ素晴らしい一日になるわ!



 王族の情報を洗い出すと、目立つのは王女の動向。街に降りることが多いようだ。それも、図書館。よくもまぁ、のこのこ人気が少ないところに出向いてこれる。

 けど護衛はいるし、図書館には防壁結界があるから簡単には入れない。正面玄関から堂々と中に入ればいいんだろうけど、他人に顔を覚えられたら面倒だ。


 他人を巻き込まず図書館から連れ出すとしたら、護衛を排除して、王女を連れて王宮へ入る。


 不可能じゃねーけど。危険が多い。それに、王女を危険にさらすことになる。果たして、それがいいのか。もっと、他の手段はないか。


 一番は、王城の結界が緩まればいいんだが。そうすれば、一気に奥まで突っ切ることが出来る。


 なんて、そんな都合良く行かないか。どんな理由があれば、王城の結界が緩むものか。俺たちみたいな盗人がいて、中で暴れて結界を壊してくれればいいけど。

 そんなこと起きたら、反乱だな。


 正面から堂々と王城に入ってみるか?そっちの方が、ごまかしながら進めそうだ。短期間に攻略するには時間が無いが、こそこそ忍び込むのも限界がある。


 ここらで、一気に行きたい。


 なら、多少の危険も承知で王女を人質に王城に入るか?入ったとしても、出ることは出来ないだろうな。まさしく、地獄への入り口だ。

 『書』を確認できたとしても、取り押さえられて斬首が目に見える。それじゃ、意味が無い。


 命を賭けるとしても必ず成し遂げられ、且つ、俺たちが生き残ること。

 うーん。やっぱり、物語の魔法使いも賢者も裸足で逃げ出す無茶ぶりだなぁ。


 けれど例え、空振りに終わるとしても、もう俺たちには時間が無い。



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