表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/126

植物採取 ②

あけましておめでとうございます!今年もカメ更新で頑張ります!

「お兄様!」


「今日も元気だね。何か良いことでもあったのかい?」


「はい!私をギルドに連れて行ってくださいませ!!」


 きらきらした瞳で見つめられて言葉がつった。

 俺の妹は、どうも行動力がありすぎる。王族としての振る舞いに欠けているわけではないけれど。時々困ったお願いをされる。きっと性分なのだろう。

 というか、俺がお忍びで街に降りることをどうして知っているんだろう。


「女性の情報網を甘く見てはいけませんわ」


「肝に免じるよ」


 本当に。ここが王城であり、王族の居住区と言えども、人の目と耳を欺くことは出来ないと、実の妹に教えられるとは。


「ギルドだったね。別に構わないけれど、知りたい事でも出来たのかい?」


「はい。冒険者たちをこの目で見てみたいのです。この国の脅威である魔物を倒す彼らを、私自身知っておきたいと思いました。そして、出来ればヒドロノウツボを観察したいのです」


「・・・」


 俺の妹がついに、魔物の観察に興味を持ってしまったぞ。どうする?

 知識の国と呼ばれるこの国において、知的探究心が強いのにはよくわかっている。かくいう俺もひとかどの研究者よりも知識があると自負している。

 けれど、かわいい妹が魔物の観察に興味を持ってしまったとして、それを兄として勧めることはできない。何より、魔物だぞ?危ないでは無いか!


「そうか。ヒドロノウツボか。確か、魔物に寄生する珍しい植物だったな。しかし、そんな貴重な植物が簡単に観察することはできないと思うのだが」


「はい!なので、観察できたら行幸ですが、観察できなければ諦めますわ。ただ、ギルドがどんな場所で、どんな人々が働いているのか知りたいのです!」


「そうか。よい心がけだ。三日後ギルド周辺の視察をするから、その時にでも案内しよう。細かい時間は後で知らせるから、なるべく目立たない服装を選んでくれ」


「ありがとうございます!お兄様大好きです!」


 そういって、かわいい妹がかわいく笑ってくれるだけで満足だ。

 ああ。アルメスが着ていたな。ちょうどいい。彼も同行させよう。不埒な輩を妹に近づけたくないからな。



 ヒドロノウツボ採取に来たけれど、今日の天気は曇天。雨が降りそう。雨が降る前に終わらせたいなぁ。


「ふふふ。久しぶりに外に出たよ。工房の中に居た方が何倍も落ち着く。早く終わらせて、お家に帰りたい」


 既に、弱音を吐いているユーリテ。コウリンちゃんは、今日は店番をしてくれている。それもあって、きっと早く帰りたいと言ってるんだろうな。


「早く終わらせたいのは僕も一緒です。そのヒドロノウツボはどこに居るかわかりますか?」


「ああ。ちょっと待って。探すのは面倒だから、あちらか来て貰おう」


 そんなことが出来るのか。

 もしそうなら、待ち伏せして倒せば簡単だ。まぁ、簡単に倒させてくれればだけど。


「植物、なんですよね?寄生植物。なら、火で焼いてしまった方が早くないですか?」


「その寄生植物を採取して欲しいのに、焼いて消失させては意味が無いだろう」


 あ。確かに。

 倒すだけでは駄目だった。採取のために、取り外さないといけない。


「少しお香を焚くよ。そしたら、寄ってくる」


「近くに居ることが、よく分かりますね」


 森に来たことがあるのだろうか?でも、さっきは久しぶりに外に出たと言っていたけれど。


「近くに居るかは分からない。けれど、ヒドロノウツボはこの時期、新しい胞子を飛ばして分身を増やしているから、数はいるはずなんだ。ただ、植物だから感情も理性もなくてね。お腹が空けば、寄生した魔物同士が共食いしてしまう。その前に、採取しておきたいんだ」


「へぇ。共食いするなら、胞子を飛ばして増やしても意味が無いですね」


「意味はあるよ。親株の所に寄生した魔物を連れてきてくれれば、食いっぱぐれる事は無いだろ?魔物に寄生するのは習性。生き残れることを前提にすれば、胞子を飛ばして魔物に寄生、親株の場所まで誘導、餌を食べられる。共食いだろうと植物には関係ない。ね?とても合理的な進化さ」


 確かにそうかもしれない。

 生き残ることを前提にして、少数の子孫を残せればいい。採取も特殊な方法で無いといけないなら、人間にも刈られることは少ないだろう。


 植物にしては、知能が高い生き物のように思う。


「進化さ。生き残るための進化。魔物に捕食されることが無く、人間が来ない森の奥で少しずつ数を増やせる。胞子は風に乗って飛ばされるから、運が良ければ鳥形の魔物にも寄生出来る。まぁ、ちょっと凶悪な進化とは言えるけどね」


 そんなことを、ユーリテは言っていた。

 凶悪な進化といっているけれど、寄生植物を採取する方法を知っている人間が一番の天敵だろう。それは、彼らにとって予想外の出来事のような気がする。


 人は何でも殺したがるからなぁ。

 それは、仕方ないのだろうけれど。凶暴な進化をし続ける人間には、どんな魔物も敵わない気がする。


「さて。これでよし。さぁ。少し距離を取ろう。ヒドロノウツボが寄生した魔物が来たら、迷わず首を落としてくれ」


「首を落とすんですか?死にませんか?」


「死なないよ。植物に寄生されているから、すでに魔物本体は死んでいるともいえるけれどね。頭部を失うだけで死にはしない。けれど、動きは鈍るからその時に採取する」


「なるほど」


 植物だから死なないのか。うん?そしたら、採取出来なかったらどうなるんだろう?そういえば、前に採取が失敗したら、何か危ない目に遭うようなことを言っていたような?


「にゃーう」


「ああ。クッキーもよろしくね」


 そうそう。くっきーにも来て貰った。キメラに変身できるし、結界も張れるからくっきーも居た方がいいと思って。ユーリテは魔法が使えても攻撃出来ないだろうから、くっきーが居てくれた方が助かる。


 それにして、匂いに釣られて姿を現した魔物は所々緑色に変色していて気色が悪いなぁ。


 魔物に寄生して、魔物を襲うと言っていたけれど。ヒドロノウツボはどうやって、魔物と動物を区別してるんだろう?

 目の前に居るのは、どう見ても熊にしか見えないんだけれど。 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ