それぞれの今
久しぶりの投稿です!亀更新で申し訳ないです。。。気長にお付き合いいただければと思います!!
アルメスが眠り、俺は代執した手紙を出すために外出する。
アンネさんが子供達と一緒に居てくれるから安心できるし、ギルドにもよりたかったから、ちょうどよかった。
街は一月前と変わって活気付いている。
魔物の異常繁殖が収まり、緊張感がなくなったからだろう。この街に住んでいる住民は、何も知らされていないが、兵士達の緊張を感じ取っていた。だから、一月前までの夜の街は特に静かだったのだ。
この光景を見ると、異常繁殖が悪化しなかったことは喜ばしいことだ。
「聖獣様のご加護があるお守りだよー」
「聖獣様ご光臨の場所はここさ!」
「聖獣様の似姿だ!ここだけでしか売ってないよ!!」
聖獣レーヴェ=シュテルネンハオフェン。獅子の守り。守護の聖獣。
その加護がこの街を守っている。そう、街の人々が信じていることも、活気付かせる一役になっているだろう。もっとも、これは王太子殿下がそういった噂を流したからだが。
あの王子様。聖獣の名前をこんな風に使うなんて。逞しいというか、ちゃっかりしている。でも、それで街の活気がもどるのであればいいのだろう。為政者として、能力は申し分ない。けど、アルメスにとっては、厄介な王族であることは間違えないだろうが。
「お!カータ」
「レンか」
本名はヴァレンティールなんだが。いつの間にか、クウキが呼んでた愛称が定着してしまった。
あいつがいなくなって、カータ達は少し気落ちしている。まぁ、気持ちは良くわかる。
「今日も仕事か?」
「まぁ、な。けど、あのキメラが聖獣だったんだ。俺たちの街にキメラが来たことに関係はないと思うが、一応調査することになったからな」
「キメラか。移動してきたとしたら、ここを通った可能性はあるな」
「ああ。けど、この間の異常繁殖した魔物の討伐で、そういった痕跡はあらかた消えたしなぁ。魔術で追うのも限界があるし。今のところ、どうするかは――――。正直、手詰まりだぜ」
「そうか」
キメラ討伐から始まり、原因究明までするとなると、人手は足りないだろう。しかも、手がかりになりそうなことが少なすぎる。もし、レーヴェがあのまま俺たちの味方として居てくれたら、何かしら手がかりを教えてくれただろうか。
――でもあいつ、どうしてあんな所に居たんだ?
姿を偽ってまで。
守護の聖獣。守りに関しては誰も敵わない。守ることは、隠すことでもある。だからこそ、隠蔽結界など目では無いほどの、完璧な偽装ができる。誰にも見抜けないほど。
そんなことまでして、何をしてたんだか。
本人にでも聞かないと分からないことだろうけど。
今頃、どこで何をしてるのやら。
◆
あ。この服破れてる。ここさっき、掃除したばかりだよね。また、書類を積み上げてる。
一月、クレアと一緒に住んでいるけれど、どうしてか小さな子供をあやしてる気がしてくる。別に、僕は居候だし、掃除洗濯は苦じゃ無いけれど、師匠よりも手がかかる女性がいるのかと、日々痛感する。
まぁ、師匠の相手は青鬼と一緒にしてたから、負担が分散されて、こんなこと思わなかったのかもしれない。
「Gu」
「ありがとう、くっきー」
くっきーはよく僕のお手伝いをしてくれる。正直、すごく助かる。一人だと多分、一月立たずにここを出て行っていたと思う。
一月。掃除洗濯、料理に洗髪。これだけをしてきたわけじゃない。
この世界の知識を教えてもらった。特に、文字。読み書き、一切出来なかったけれど、クレアに全ての国の言語、文字、数字を教えてもらった。
「睡眠学習が一番効率が良い!!さあ!寝るのじゃ!」
そんなことを言われて、すぐに寝れるわけなかったけれど(部屋もまだ掃除していないかった)、寝ているだけで少しずつ文字が分かってきたことにはびっくりした。
睡眠学習がどういった方法でされているのか、寝ているから一切分からないけれど、このことは本当に感謝している。
けれど、もうそろそろ考えないといけないだろうなぁ。ずっとここにはいられない。文字が読めるようになって、家事の合間に少しずつ本を読んでいる。その中で、異世界のこと、別世界のことを書いてある本もいくつかあった。それは、冒険譚だったり、夢物語だったりしたけれど、魔術の本にそういったことが少しだけ書かれていたものが在った。
”魔術師が生涯で臨むもの。魔術の深淵につながる大樹。世界の幹。ユグドラシル”
”その根は、あらゆる世界とつながり、葉脈にはあらゆる世界の情報が記されている”
そんな一文があった。
あらゆる世界と繋がっているのなら、僕の世界とも繋がっているのでは。探してみる価値はある。
けれど、その木がどこにあるのかは、記されていなかった。クレアに聞いてみたら
「ユグドラシル?世界の果てにあるようじゃ。私もまだ行ったことはないが、船ではたどり着くことが出来ないほどの、遥か遠くにあると言われているよ」
船でいけないのに、どうしてあるとわかるんだろうか?それも尋ねたら、飛んで行ったのだろう、と言われてさらに驚いた。
どの道、険しいことに違いはない。けれど、諦めることは出来ない。
もう少し文字を覚えたら、ここを出る話をしよう。




