魔女との邂逅
長らくご無沙汰でした。のんびり更新になります。。。
くっきーと共に森の奥へと進む。吹き抜ける風が気持ちが良い。
太陽の光から考えて、もう昼を回っているだろう。時おり聞こえる鳥の声は澄んでいて、生い茂る草木は艶めいてきれいだ。
こんな所、元の世界にもめったにないだろうな。高名な霊山であれば、この森のように神々しい空気に満ちているのかもしれないけど。
「GU!」
くっきーの声に前を見ると、眼前の景色が開けた。そこには、清んだ湖。そしてー
「すごい」
巨木が、天を支えるように、そこに在った。
幾星霜。どれほどの時を生きているのだろう。輝く緑の葉、力強い根、歴史を刻むような樹皮。全てに圧倒する。
その巨木へ、くっきーが先導するように木の根を上っていく。その後について僕も進む。踏み締める根は大地のように固く、この森の豊かさを物語っていた。
進むに連れて、巨木の幹が近づき、清冽な空気が辺りを包む。そんな巨木に圧倒されながらも、違和感を覚えた。
扉がある。
それも、かわいらしい扉が。
木ではあるけれど、鳥や鹿がかわいらしく彫られていて、花が飾られている。
誰か住んでいるんだろうか?木の中に?
そう思っていたら、くっきーが扉の横に吊されていた、これまたかわいらしい紐を口に加えて引っ張った。すると、鈴の音が響く。それも、巨木の内側から。
驚いて固まっていると、扉が開く。
「なんじゃ。今寝たところ、なのじゃが」
出てきたのは、十歳程の少女。大きすぎる被り物に、引きずるほど長い服。
「おや?レーヴェではないか。うん。後ろのものは?」
レーヴェ?くっきーの事かな?
「ふむふむ。なるほどなるほど。そうかそうか。ほうほう」
一体何を話してるんだろう?くっきーは大人しく少女を見つめているだけ。
しばらく、少女が相槌を打つ声だけが響く。
「そうであったか。それならば、クレアが面倒をみてやろう」
くっきーの面倒を見てくれるのかな?それは、ありがたい。
「では、よろしくなのじゃ。クウキ。」
「え?僕ですか?」
もしかして、僕のことを言ってたのか?というか、名前。くっきーと話せるのか、自然と呼ばれた。
「他に誰が居る?」
「くっきーは」
「くっきー!?レーヴェをくっきーと呼んでるの!?」
「え?はい」
あれ?口調が普通になった。
「は?え?いいの?ま、まぁ本人が良いって言うなら。でも、本当にいいの?」
確認するように、くっきーに顔を近づけて、念を押すように聞いている。
口調、こっちが素なのかな。
それに、くっきーは一言も話してないのに、話が通じている。不思議だ。
「こほん。えー。それならばいいのじゃ」
「・・・あ、りがとうございます?」
どうやら、ここにいても良いらしい。くっきーとは知り合いみたいだし、しばらくここで、ほとぼりが冷めるまでお世話になろう。
「あ。しゃべりやすい口調でいいですよ」
「何のことかさっぱりわからん、のじゃ」
◆
「ここにあるものは、好きに使ってもらってよい。お主にしてもらうことは得にないが、それでは暇であろう。そじゃなぁ、クレアがこの世界のことを教えてやろう」
小さな体躯で、精一杯胸を張って話す少女。微笑ましい。茶色の服が、木と同化して分かりづらいけれど。
好きに使っていいと、案内されたのは、巨木の内側。幹をくり抜いたわけではなくて、自然に出来たウロを活用しているようだ。
木々の香りに馴染むような、古い書物の匂い。そして、
「少し散らかっているが気にするな」
足の踏み場もないほどの宝石とガラクタ。
本だけは几帳面に棚におさまっているが、書きかけの用紙は散乱している。することがないどころか、すべきことばかりな部屋だ。
「おお。そうじゃ。お主の部屋をどこにしようかの。何分、部屋は多くあるので、好きなところを使ってくれ」
「ありがと、ございます」
そう言われて、案内された部屋は、毛布で埋まった部屋、薬品を詰め込んだ部屋、動植物を育成している部屋、おそらく巨大な鳥の巣になっていた部屋などなど。とても、生活できる部屋では無かった。
「・・・」
掃除から始めるか。
こうして、巨木に住む魔女、終末の魔術師・クレアのお世話になることになった。
一人暮らしの、研究三昧で生活力がほぼ皆無な彼女の食事からはじまり、掃除洗濯は当たり前で、部屋の片付けから、最終的に髪の手入れまですることになった。
天然の温泉があるのは嬉しいけれど、絶対に一緒には入りません。




