表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/126

魔女との邂逅

長らくご無沙汰でした。のんびり更新になります。。。

 くっきーと共に森の奥へと進む。吹き抜ける風が気持ちが良い。

 太陽の光から考えて、もう昼を回っているだろう。時おり聞こえる鳥の声は澄んでいて、生い茂る草木は艶めいてきれいだ。

 こんな所、元の世界にもめったにないだろうな。高名な霊山であれば、この森のように神々しい空気に満ちているのかもしれないけど。


「GU!」


 くっきーの声に前を見ると、眼前の景色が開けた。そこには、清んだ湖。そしてー


「すごい」


 巨木が、天を支えるように、そこに在った。

 幾星霜。どれほどの時を生きているのだろう。輝く緑の葉、力強い根、歴史を刻むような樹皮。全てに圧倒する。


 その巨木へ、くっきーが先導するように木の根を上っていく。その後について僕も進む。踏み締める根は大地のように固く、この森の豊かさを物語っていた。

 進むに連れて、巨木の幹が近づき、清冽な空気が辺りを包む。そんな巨木に圧倒されながらも、違和感を覚えた。

 扉がある。

 それも、かわいらしい扉が。

 木ではあるけれど、鳥や鹿がかわいらしく彫られていて、花が飾られている。

 誰か住んでいるんだろうか?木の中に?


 そう思っていたら、くっきーが扉の横に吊されていた、これまたかわいらしい紐を口に加えて引っ張った。すると、鈴の音が響く。それも、巨木の内側から。

 驚いて固まっていると、扉が開く。


「なんじゃ。今寝たところ、なのじゃが」


 出てきたのは、十歳程の少女。大きすぎる被り物に、引きずるほど長い服。


「おや?レーヴェではないか。うん。後ろのものは?」


 レーヴェ?くっきーの事かな?


「ふむふむ。なるほどなるほど。そうかそうか。ほうほう」


 一体何を話してるんだろう?くっきーは大人しく少女を見つめているだけ。

 しばらく、少女が相槌を打つ声だけが響く。


「そうであったか。それならば、クレアが面倒をみてやろう」


 くっきーの面倒を見てくれるのかな?それは、ありがたい。


「では、よろしくなのじゃ。クウキ。」


「え?僕ですか?」


 もしかして、僕のことを言ってたのか?というか、名前。くっきーと話せるのか、自然と呼ばれた。


「他に誰が居る?」


「くっきーは」


「くっきー!?レーヴェをくっきーと呼んでるの!?」


「え?はい」


 あれ?口調が普通になった。


「は?え?いいの?ま、まぁ本人が良いって言うなら。でも、本当にいいの?」


 確認するように、くっきーに顔を近づけて、念を押すように聞いている。

 口調、こっちが素なのかな。

 それに、くっきーは一言も話してないのに、話が通じている。不思議だ。


「こほん。えー。それならばいいのじゃ」


「・・・あ、りがとうございます?」


 どうやら、ここにいても良いらしい。くっきーとは知り合いみたいだし、しばらくここで、ほとぼりが冷めるまでお世話になろう。


「あ。しゃべりやすい口調でいいですよ」


「何のことかさっぱりわからん、のじゃ」



「ここにあるものは、好きに使ってもらってよい。お主にしてもらうことは得にないが、それでは暇であろう。そじゃなぁ、クレアがこの世界のことを教えてやろう」


 小さな体躯で、精一杯胸を張って話す少女。微笑ましい。茶色の服が、木と同化して分かりづらいけれど。

 好きに使っていいと、案内されたのは、巨木の内側。幹をくり抜いたわけではなくて、自然に出来たウロを活用しているようだ。

 木々の香りに馴染むような、古い書物の匂い。そして、


「少し散らかっているが気にするな」


 足の踏み場もないほどの宝石とガラクタ。

 本だけは几帳面に棚におさまっているが、書きかけの用紙は散乱している。することがないどころか、すべきことばかりな部屋だ。


「おお。そうじゃ。お主の部屋をどこにしようかの。何分、部屋は多くあるので、好きなところを使ってくれ」


「ありがと、ございます」


 そう言われて、案内された部屋は、毛布で埋まった部屋、薬品を詰め込んだ部屋、動植物を育成している部屋、おそらく巨大な鳥の巣になっていた部屋などなど。とても、生活できる部屋では無かった。


「・・・」


 掃除から始めるか。


 こうして、巨木に住む魔女、終末の魔術師・クレアのお世話になることになった。

 一人暮らしの、研究三昧で生活力がほぼ皆無な彼女の食事からはじまり、掃除洗濯は当たり前で、部屋の片付けから、最終的に髪の手入れまですることになった。

 天然の温泉があるのは嬉しいけれど、絶対に一緒には入りません。




 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ