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またって

 そんなこんなで、先ほどの嫌味な男が、カミルが何事かを囁くとみるみる顔を真っ青にして、おびえたようにお金の入った袋を渡していた。

 そして、満面の笑みでカミルが勇者エリオットの元へとやってきた。

「いやー、流石に太っ腹だわー」

「……何をやったんですか?」

「ん? ああ、別にこの前の帰りに、あいつが綺麗で派手な人に、宝石の指輪を買っていたからさ。そういえば、今度奥様に持っていく物があるんですよねー、てお話したんだ。そうしたら、何故か焦っちゃってね、あの人。それで何故か、路銀に色を付けてくれたんだ」

「……たくましい」

「推理物だと、死亡フラグ立ちまくりだけれどね。どの道、奥さんもすでに気づいて証拠を集めているから、離婚は時間の問題なんじゃないかな」

 そう黒く笑う僧侶のカミル。

 変な人が仲間になった気がしたが、勇者エリオットは自分の身から出た錆なので、諦めた。

 そんなカミルは、水色の髪に、黄緑色の瞳の可愛い……少年、少女?。

「一つ本当に申し訳ないのだが聞いてもよろしいでしょうか?」

「え? 何? というか敬語は止めて」

「……男性なのか、女性なのか」

「……うん。最近は随分男らしくなったって言った奴らが全員嘘をついていた事が分ったよ。くくく、どうしてくれようか」

「あ、いえ……嫌であれば……」

「……本当にこっちの勇者様は良い子だなー。あ、僕、男だよ」

 カミルがにこにこ笑いながら答えた。

 けれど勇者エリオットからすれば、

「もう一人の勇者に会ったことがあるので……か?」

「うんうん。初対面の相手に敬語は当然だよね。でも面倒だからそれでよろしく。……西の魔王を倒しに行った勇者でしょう? あいつ初対面で、僕の事、こんなのは使えないなって言ったんだ」

「……あいつ、そんな奴だったんだ」

「何? 知り合いなの?」

「幼馴染で親友で、彼女を寝取られました……というか、あいつの差し金で彼女が俺に近づいてきて、それに俺は騙されて……」

「う、うんそうか……興味本位で聞くと可哀想だからもういいよ。でもそっか……それで引きこもったのか」

 なるほどと頷くカミル。

 どうも先ほどから、エリオットの事を知っているらしい発言が多い。

 そのニュアンスが、勇者というだけではないように感じられたのだ。なので、

「そんなに俺は有名なのか?」

「そういう意味でね。でも、エリオットは良い子だからね。手を貸すならこちらの方がいいかなって僕は思うな。それに……自分から行動して仲間を集めようって、頑張ろうってしているからお手伝いしてあげようって思ったんだ」

「……ありがとう。酒場や城に問い合わせをしたら、お前なんかのための仲間募集は、もう打ち切ったと言われたから。そうだよな……こんな状態では、当然だよな」

「元気出せ。僕がいるって。というか、何で何もしない東の魔王をうちに行く事になったの?」

「……私的な理由なんだ」

「……実は家族が皆殺しにされたとか?」

「あの人はそんな人じゃない!」

 つい叫んでしまった勇者エリオットは、不審そうに道行く人に見られて恥ずかしそうに顔を赤くして、

「そんな人……人じゃなくて魔族じゃないんだ」

「……随分と好感を持っているみたいだね。詳しく」

「……言わないと駄目なのか?」

「言ったら、魔法使い兼戦士の仲間を紹介するよ?」

 それは魅力的な申し出のように思えた。

 エリオットの現状では、更に仲間を増やすのは骨が折れる事だろう。

 分っているのだが、言うのが躊躇われる。なにしろ……。

「魔王様に惚れたとか?」

「ごふっ!」

 僧侶カミルの言葉に、勇者エリオットは噴出した。

 それに、僧侶カミルは面白そうに笑う。

「そうか、また東の魔王様は勇者を悩殺したかー」

「……またって、どういう事だ?」

「うん? あの魔王様は代々温厚でね。見た目も良いし、勇者との戦いも結局遊び程度で行われて、最終的には何回も恋人同士になっているんだ」

「……じゃあ俺の祖先にも……」

「うん、一人いるよね、確か……。まあ、もともと魔王はこの世界の神様だったからね。普通は温厚なはずなんだよな……理由は分らないでもないけれどね」

「え?」

「まあまあ、それよりも、そっか。恋ですか……僕、お手伝いさせてもらうよ。うんうん」

 そうカミルがひとしきりに頷き、ついで付け加える。

「どのみち、争いの起きていない魔王にこちらから手を出すのは得策じゃない。ほら、北と南の眠ったままの魔王は、放っておいているでしょう?」

「知ってる。だから多分、殺したり傷つけたりといった事はせずに、力試しの意味合いが強くなるだろう」

「まあ、そっちの方が難しいけれど、魔族は強いから大丈夫だろうね。……でもきちんと分っているなら良いよ」

「それにそうすれば、俺の力だって上がっていくし」

「そうだね。命がけでない分、危険が少ないからね。経験を蓄積できるし」

「ああ。そして強くなって……絶対に魔王ディアを手に入れるんだ」

 そんな決意表明をする勇者エリオットに、僧侶のカミルは手をぱちぱち叩いたのだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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