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仲間を探しに

 魔王ディアはご機嫌だった。

「~♪」

 何せ勇者が来るのである。

 しかも自分を倒しに、自分好みの勇者が。

「もっとも、手を抜いて倒されてやるつもりはまったく無いが」

 そして倒した暁には、勇者エリオットには、ドレスを着てお嫁さんになってもらおうと魔王ディアは妄想しながら楽しんでいた。

 そんな余裕があるのも、確かにあの勇者エリオットは強いがまだまだ自分には遠く及ばないと魔王ディアは気づいていたから。

 その余裕が命取りになるのだが、そんな事は魔王ディアは思いもしなかった。

 だって魔王だし、強いんだもん、という気持ちが強かったから。

 そんな魔王ディアは勇者エリオットを思い出して、

「やっぱり綺麗な勇者だったな……よし、時々、試してやろうとか言って、会いに行こうっと」

 そう、金色の髪に、青い瞳をした、昼間の空のような少年を思い出す。

 思い出すと、少し胸がどきどきした。

 しかも押し倒されたあの時は焦るというか、怖かった気もするのだが……今思い出せば、それだけあの勇者エリオットも魔王ディアが好きだという事なのだ。

 そう思うと、また魔王ディアは胸が高鳴る。

 なにせ、魔王ディアは、五人衆以外の魔族ともあまり交流も無かったし、それにその五人衆だって、

「魔王様のための花を摘みに、魔王様への宝石を採掘に……といったように、最近は皆、私のせいにして逃げているのだからな……。まあ、平和なこの国といえど、問題は山積みだ」

 なのに、彼らは魔王ディアの力を頼らないのだ。

 それ所か、城の中に閉じ込めて、外へ出ないよう箱の中に閉まっておくように大切にしているのである。

「私は箱入り娘ではないというのに……まったく。自分でできる事を探そうとすれば、ありとあらゆる手段で邪魔をするからな」

 結局、魔王ディアが出来るのは、このお城の厨房で御菓子なり何ありを趣味で作る程度である。

 この前など、白く細いレースを編み上げて、五人衆の一人、“緑の人”のレイトに見せたなら、頭にかぶって見てくださいといわれて、かぶったらかぶったで、レイトはふらふらと何処かへ行ってしまう。

「幼馴染に避けられるのは辛いな」

 いつも楽しく遊んでいた幼馴染の五人は、とりわけ最近魔王ディアを避けているようなのだ。

 それが魔王ディアには寂しい。

「……早く来ないかな」

 その寂しさを感じてしまったせいか、この広い部屋が酷く寒々しいものに思えた。

 そして窓の外を見る。

 今はきっと、あの勇者エリオットは仲間を集めている事だろう。

「……どのような仲間が集まったのか、後日、様子見に行くかな……」

 そう、魔王ディアはポツリと呟いたのだった。


 勇者エリオットはまず、仲間を集める事にしたのだが。

「おやー、引きこもりの勇者様ではないですか」

 神殿にやってくると、対応した神殿の関係者が嘲笑う。

 そのげらげらという不快な笑い声を無視して勇者エリオットは、

「……回復系の仲間が欲しいのだが。僧侶を一人お願いしたい」

「それは旅に出るということですか。あの、どうでもいい魔王に」

「……どうでも良い……貴方方にはそうかもしれない」

「ははは、まったく侵攻もしてくるわけの無い魔王に警戒するなど、愚かしい。時間とお金の無駄な気がしますが……そうですね、カミル、お前行って来い」

 そう呼ぶと、一人の僧侶が顔を上げた。

 男性なのか女性なのか分らない、そんな可愛らしい人物だ。

「何で僕なんですか?」

「一番戦力になりそうに無いからだ」

「あー、この前治癒魔法に失敗したのを、僕が治したのを逆恨みですかー」

「……行け、これが命令だ」

「はいはーい、下っ端は辛いですねっと……へー、すっごい美少年だね」

 そう、カミルという少年は勇者エリオットを見て、そこでカッと目を開いた。

「……次のシチュエーションはこれで行こう。うん」

 そうなにやらうんうん一人で頷いているカミルに、勇者エリオットは、

「カミル、よろしく」

「……もう一人の勇者と違って、随分君は礼儀正しいんだね」

「……そうか」

「うん、気に入った。僕は君の方が一緒に旅をしたいな……よし、僕頑張る」

 そう、カミルという僧侶は、一人何かを勝手に決めて、旅の路銀をどの程度多く取れるか、先ほどの嫌味な男と交渉し始めたのだった。

次回更新は未定ですがよろしくお願いします。

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