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戦闘開始

 泣きそうになっている“赤の人”クリムゾンを“黄の人”ロウズが引っ張っていって対面する構図となる。

 次に、“緑の人”レイトがエリオットに再び抱きつこうとしたディアを引き離して、


「早くこの生意気な人間を倒してください」


 そう、レイトが告げると、そこでロウズが、


「そうですね、“赤の人”クリムゾン、がんばってくださいね」

「……お前はやらないのか、“黄の人”ロウズ」

「面倒ですから」


 にこやかに喰えない笑顔で、そう告げるロウズをクリムゾンは見て、


「……いいだろう、俺一人の勝利をディア様に捧げる!」


 叫ぶと同時に、クリムゾンの周りを炎が舞う。

 同時に周りの地面が熱せられて、赤い輝きを帯びる。

 その時点で、その炎が相当な高温だと分るが、そんなクリムゾンが俊敏な動きでエリオットを目指す。

 エリオットがディアを守るためのあの剣を構え、それを見てクリムゾンはにやりと笑う。


「そんな得体の知れない、“光”属性の剣を持ってどうするつもりだ!」


 そうクリムゾンが抜いたのは炎の闇属性の剣。

 剣と魔法が合わさり、吹き出でる炎の剣となり、エリオットを襲う。

 けれどそれをエリオットは軽く受け止めて弾き返した。


「な!」


 しかも瞬時にその炎は消し去られる。

 焦ったクリムゾンが引こうとするとそこをエリオットは攻める。

 一歩下がって重心が僅かに傾く瞬間を狙って剣を打ち出すと、その剣を受けたクリムゾンが傾く。

 けれどその程度の攻撃では倒れるまでには至らなかった。

 それでも次々と繰り出される剣さばきに、クリムゾンは全てを受け止めきれない。

 しかもエリオットはまだ、様子見のようで息一つ乱れていない。


 さらにこまめに人間の癖に魔法を使ってきて、クリムゾンもそれに魔法で応戦して……。

 そこで、エリオットの動きに鋭さが増した。

 エリオットの剣が受けきれず更に、クリムゾンの頬に迫り……そこでクリムゾンの背後から雷が走る。

 それに分が悪いと見たのが、エリオットが下がって間合いを取る。

 そして今手出しした相手を、クリムゾンは振り返らずに、


「手出しするな、“黄の人”ロウズ」

「貴方の見かけのいい顔に傷がつくのも嫌でしたから」

「……訓練でついた傷なら、俺の体のそこかしこにあるだろう」

「ああ、そういえば野生児……ではなく、武闘派(笑)でしたね」

「真剣に学んだんだ。そしてそれは、昔独学でやった悲しい記憶だ」

「まあ、確かに貴方の実力もレベルが高いですからね。でも、貴方の体にある傷を一つづつ数えるのも良いですね。分りました、手出ししません。代わりに彼らの相手をしましましょう」


 新たなプレイを思いついたらしい“黄の人”ロウズの発言に、“赤の人”クリムゾンが顔を蒼白にして考えないようにしていたのは良いとして。

 “黄の人”ロウズは、カミルとソラに目を移して、それからカミルを見て、


「杖も見かけも可愛らしいですね」


 そう言った。

 言って、ぶちっと切れたカミルが殴りこみに行こうとするのをソラが後ろから抱きしめる。


「何で止めるの、ソラ!」

「……カミルは、援護してくれ」

「いっっぱつ直接力をこめて殴らないと、許せない!」

「一応最上級の魔族の一人だ。それに感情だけで動くな、カミル」

「ぶう、でも……」


 ソラはカミルの額に軽くキスをすると、それだけでカミルは頬を染めて大人しくなって、仕方がないなとぼやく。

 そしてソラは、槍を構える。

 それを見た“黄の人”ロウズは、


「槍、か。確かに良い武器だ。でも、それは届かないと意味はない」

「届かせる、それだけだ」

「私は“黄の人”ロウズ。五傑の中に二人いる風を、雷を、気象を操る魔族だ。そして魔法に私は特化しているのだよ」


 そう告げると同時に、“黄の人”ロウズに風が渦巻き始めたのだった。

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